第4話 人生相談
「え!? そんな優良物件あったらすぐに乗っちゃいなさいよ! ためらってると逃げちゃうから後悔しても知らないよ!」
先輩の家から自宅に帰って今でもSNSでやり取りしている大学生時代のサークルの先輩に相談したところ、すぐに受けろと
「今時結婚前提のお付き合いなんて出来たもんじゃないわ! 一体何が不満なの!? 今すぐ結婚して寝るくらいの勢いで行きなさい! チャンスもチャンスも大チャンスよ! 絶対逃がさずにつかみに行きなさい!」
「でも私、幸せな結婚生活を想像することができないの。どうせまたうちの両親みたいに目と目が合えばケンカするような仲になっちゃうんじゃないか? ってどうしても思っちゃうの」
「アンタの両親が特別仲が悪いだけよ! とにかく付き合いなさい! 何だったらその場で結婚しちゃいなさい! 話はそれからよ! いいわね!?」
「でも不安だし……」
「デモもストも無いわよ! 将来の事は結婚した後でも十分考えられる時間はあるけど、結婚のカードを切れるのは今しかないんだからね! とにかく何も考えずに結婚しなさい! 何かを考えるのはその後でもいいから!」
彼女はここまで早口でまくし立てるように、私の反論なんて絶対に許さない!! という勢いでしゃべった。結局私の悩みなんて最後まで聞く耳持たずで会話……と言うよりは一方通行のお説教は終わった。
最後に頼れるのは実の両親しかなかった。私は母親に電話をかけることにした。
「……もしもし、ハルカ。どうしたの?」
「お母さん。ちょっと相談したいことがあるの。聞いてくれる?」
私は先輩の話をして告白を受けるべきかどうかのアドバイスを母親に聞くことにした。
「そうねぇ。私としたらその告白、受けた方が良いと思うわ」
「……先輩がお父さんみたいな人になっても?」
「お父さんは仕事ができる人で会社でも出世したから結婚したようなものよ。ああじゃないと会社の出世競争で勝ち残れないからねぇ。お金の面は安心できたからお母さんはあんな性格なお父さんでも引き受けたのよ」
「……そう。でもお父さんがお母さんに当たり散らすところが今でも頭に焼き付いて離れないの。もし先輩がお父さんみたいになったらどうしようって不安で怖いの」
「ハルカ、あなたは何があっても絶対に怒鳴られたくないのね? その気持ちは分かるわ。話を聞く限りではその先輩さんなら何とかなりそうだとは思うわよ。だから信じてもいいんじゃないかしら?」
「とにかく怒られたくない」という私の心をお母さんは見抜いていた。その通りで1%でも怒る可能性があったら踏ん切りがつかない。
「でもどうしても不安なのよ」
「だったらその先輩に直接聞いたらどう?」
「えっ?」
「ハルカ、あなたの頭の中でいくら考えても結論なんて出るわけないわ。だったらその先輩に直接聞いたらどう? そうしたら不安も消えるかもよ」
「……分かった、やってみるね。聞いてくれてありがとう」
そう言って通話を切った。
……怖いけど試してみよう。確かにあれこれ考えても結論なんて出やしない……だったら直接聞くしかない。やってやろう。
【次回予告】
彼女は「怒鳴らないと誓ってくれる」のなら、彼は「裏切らないと誓ってくれる」のなら付き合おう。お互い似た者同士だ。
第5話 「不倫された先輩」
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