背番号?
勝利だギューちゃん
第1話
僕は野球部に入っている。
背番号はない。
強いて言うなら、「?」が背番号。
平たく言えば、補欠。
ていうか、ベンチ入りすら出来ない。
なので、仕事は球拾い。
転がってきたボールを、せっせと拾う。
そして、バケツに詰める。
溜まると、部室前まで運ぶ。
でも、あきらめたわけではない。
地道な努力は、誰かが見ていてくれる。
まあ、たいてい見落としされるが・・・
神様も、お忙しいらしい。
とても、全部は見ていられないのだろう。
でも、グランドで練習や試合をしているチームメイト・・・
とは思われていないと思う。
普段は無視するくせいに、厄介ごとだけは、押し付けてくる。
困ったもんだ。
「ねえ、相手してくれない?」
ユニホーム姿の女子から声をかけられる。
うちの高校は、男子だけでなく、女子にも硬式野球部があるんだ。
そういえば、女子の硬式野球部も決勝戦だけ、甲子園で開催するという話は、どうなったのか・・・
「私は、久保かすみ。君は、佐々木秀介くんだよね?」
「どうして、それを?」
「ユニホームに書いてある」
忘れてた・・・
「何の相手」
「うちの球拾い」
「断る」
「冗談よ。キャッチボール」
「部員とやれば」
「みんな、試合中。私は、リリーフなの」
さいでっか・・・
で、仕方なく相手をする。
何回かやって、彼女が声をかけてきた。
「面白い投げ方するね。うちでやらない?」
「何を?」
「バッティングピッチャー」
監督や他の部員をみると、あっちいけのしぐさをしてた。
厄介払いですか・・・
こういう仕打ちをする人間に、スポーツマンシップを語ってほしくない。
で、女子の硬式野球部で、バッティングピッチャーをすることになる。
仕事が増えただけで、変わらない。
しかし、その女子野球部は、全国制覇を成し遂げた。
マウンドで、彼女たちが抱き合っている。
それをスタンドから見ている。
そして、表彰式の後、久保さんたちから、声をねぎらいの言葉をかけられる。
「君のおかげだよ。ありがとう」
「どういたしまして。じゃあ、そういう事で・・・」
僕は、帰ろうとする。
どこにかわからんが・・・
「いろいろ考えたけど、君には生涯私と、キャッチボールしてもらいます」
お断りします・・・って、言ったら、殺されるな。
まあいい。
すぐに飽きるだろう。
それまでは、付き合うか・・・
「というのが、おじいちゃんとおばあちゅんの馴れ初め」
「・・・そうなの・・・ありがとう・・・」
結局孫が出来るまで、来てしまった。
飽きなかったみたいだ。
「すぐに飽きるような人間性では、何をやっても、長続き居ないよ」
となりで、パートナーのおばあさんが言う。
僕の背番号は、?ではなく、!になった。
背番号? 勝利だギューちゃん @tetsumusuhaarisu
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