第12話 彼女の未来

 コスモスが消えてから。


 私は何度も、自分の予知能力で彼女の未来を見ようとした。その度に頭に与えられる鋭い痛みも、今じゃもう、慣れっこになってしまった。一人きりの寮の寝室で、誰に向けるでもなく静かにわらう。


「これじゃ私がマゾみたいだよ~……」


 ここで、コスモスがいるはずのこの『コロニーJ』で。彼女の未来を望むのであれば、或はと思ったのだ。でも、彼女の未来を見ようとすると、見えるのは真っ白なビジョンだけだった。時折、足下の方からブクブクと白いあぶくが上がってくる。


 目の前には白。純白の世界……。それはあまりにも綺麗な、何もない世界で。ただその白い泡だけがとても気になった。もしかして。


「水の中に、いるの?」


 私は至った考えを、頭をぶんぶんと振ることで打ち消す。彼女の未来がないなんて有り得ない。スモスの未来を見ようすると、何かそれを封じる力が働いているのもわずかに感じるのだ。


「無事でいて」


 お願いだから……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る