「原稿用紙一枚分の物語」#1 友

@itsuki66

ショックだった。


電話を持つ手が震えてとまらない。


ふと、背中に気配を感じた。


振り返ってみると、そこにはケントが立っていた。


五年ぶりの奇跡的な再会に目を疑った。


それでも「元気そうで安心した」と屈託のない笑顔で言う目の前の彼は、


まぎれもなくケントだった。


儀式的なたわいもない世間話をしたあと、ケントは突然真顔になった。





「どうして五年もの間連絡してこなかった」


裏切られたかどうかはオレたちが決めること。


そんなことよりも、本当にうれしかったんだ。


相談すらしてこないリョウが初めて頼ってくれて。


やっと親友なれたと実感できて。それなのに、


それから一切連絡がない。


どれだけ寂しかったか。


そう涙ながらに話した。


リョウは首を横に振りながら彼の言葉を聞いていた。


胸が痛かった。苦しかった。声を上げて泣いていた。


顔を上げると、もう彼の姿はどこにもなかった。


メールの着信があった。


ケントの告別式、葬式の知らせだった。

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