第5話 異世界転移 2日目 夕方~


 果物の採取が終わり、ゴブリンの死体を埋め終えた氷魔達。少々愚痴っていた氷魔がふと、空を見上げて見ると、雲がオレンジ色に染まり始めていた。


 「そろそろ夕方か。……愚痴ってないで、日が落ちる前に戻らないとな。」


 氷魔は、ディレット達ゴブリンを連れて拠点に戻ろうする。その間も、氷魔はディレットを通じて、テイムしたばかりのゴブリンから情報を聞こうとしていたのだが、ゴブリンの知能が低く、まったくと言っていいほど新しい情報が得られなかった。


 (なるほど。ディレットととの違いがよくわかった。)


 その後、氷魔は情報収集をあきらめて、新しくテイムしたゴブリンのステータスを確認した。基本的には全員が同じ能力値だが、今回のゴブリン達は、物防、魔防、素早さの能力値が1つずつ上がったようだ。そして、そろそろ拠点に着くときに、ディレット達ゴブリンから、話しかけられた。


 《アルジドノ、スコシイイカ?》


 「どうした?そろそろ拠点につくからそのあとでもいいか?」


 《イマヨロシイデショウカ?》


 「うん?わかったよ。どうしたんだ?」


 《イマカラムカウトコロハ、オオキナミズタマリデショウカ?》


 「そうだな、水溜まりというか湖だな、それがどうしたんだ?………あっ、そういえば鑑定で、魔物が近寄らないんだったな。ディレット達がもし無理なら、近くで簡単な拠点を作らないといけないが」


 《イエ、ダイジョブデス。アソコデハ、シズカニシテイレバ、モンダイハナイトオモイマス。アルジドノノスキルノオカゲデ、アタマガヨクナッテイルノデ、ホカノナカマタチハ、スコシハシズカニデキマス。》


 「そうか。それなら良かった。意外に知能向上の方が今のところは、役に立つな。」


 《ソレト、スグニデハナイノデスガ、ソノミズウミノスコシハナレタトコロニ、ワレワレノスムバショヲツクッテモヨロシイデショウカ?》


 「わかった。木を切ったり加工するための刃物は俺が渡すし、何か教えることができたら、教えるからな。」


 《アリガトウゴザイマス。》


 「じゃあ行くぞ。」


 そして、氷魔達は拠点のすぐ近くまで戻ってきた。まず先に右手で木に触れ、錬成を発動する。すると、ステータスのようにパネルが現れ、次のように表示された。


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 この木は空気中の魔素により特殊な成長をしており、根っこから土に含まれる魔素を得ているので、スキルが阻害されています。

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 「岩の時は、簡単に使えたからいけると思ったんだけどな~」


 とりあえず氷魔は、アイテムボックスから斧をとり出し、ゴブリンの中でも物攻が高いディレットに斧を渡した。


 氷魔は続いて新たに斧をもう1本作り、ディレットと一緒に木の伐採を始める。

 ただ、木の伐採の仕方など知ってるわけもなく、テレビで見たようにまずは、湖側に倒れるように、湖側の方に < このような切り込みを斧でつくる。その後、切り込みをいれた反対側の森に面している方から < この切り込みの左側の尖っているところに向かって平行に斧を叩き込み、もう片方が湖側に倒れるように少し力を加える。それをディレットと交互に休憩しつつ行う。


 その間に他のゴブリン達には、斧を振るっている木の少し離れたところで枯れ木を集めたり、氷魔が渡した短剣で長めの草を刈ってもらった。


 そうしていると30分ほどでやっと1本の木が切り倒せた。さっそく錬成を使って、木を加工しやすい大きさにする。すると、いままでの錬成では感じたことのないほどに、体から力が抜けていくのを感じ、いままでより魔力が減ったのを理解した。


 「戦闘で魔力が必要になる可能性があるから、時間をかけて木を切り倒しつつ、錬成していかないとな。……まだすることがあるし、後でステータスを確認するか。」


 氷魔はゴブリンに渡した短剣を回収し、ディレットに先ほどの木の伐採の仕方を教え、ディレット達ゴブリンに、木をもう1本切り倒すことを指示して、ゴブリン達が集めた枯れ木や草、それに加工しやすいように錬成した木をアイテムボックスに入れ、ホーンラビットの解体に向かった。


 1時間ほどで解体を終らせた氷魔は、拠点で乾かしているシャツを取りに行き、湖でからだの汚れを落とした。その後、シャツをもう一度拠点のハンガーにかけ、少し離れたところでアイテムボックスに入れていた草と、加工しやすいように錬成した木を取り出しておき、ディレット達の元に向かう。


 ディレット達は、木を切り倒して休憩していたが、氷魔はディレット達が切り倒した木をそのままにして斧をアイテムボックスに入れ、ディレット達とともに拠点の近くに向かう。その後、氷魔が拠点としている岩と焚き火の場所から少し離れたところでディレット達ゴブリンに火打ち石を新しく錬成して渡し、火のつけかたと焚き火の仕方をとりあえず教え、枯れ木と石の串とホーンラビットの肉を渡した。


 「じゃあディレット。それで飯を食っておけよ。」


 《ワカリマシタ。アルジ。》


 「それと、お前達は武器を持っていなかったが、どうしてだ?」


 《イツモハ、キヲモッテイルノデスガ、ボス……ハイゴブリンニカイシュウサレマシタ。タシカ、ナニカトタタカウトカ。》


 「?……そうか。(何と戦うために、武器を回収したんだ?)……とりあえずはいいか。ディレット、武器を使うならなにが良いか考えておいてくれ。それと、他のゴブリンにもなにが良いか聞いておいてくれ。」


 《リョウカイデスアルジドノ!》


 氷魔は自身の焚き火の場所に向かい、火をおこす。その後、ホーンラビットの肉と果物で夕食をとり、拠点のなかに、加工しやすいように錬成した木を数枚敷いていく。


 「外の錬成した木の板が乾いたら、今敷いている木の板と交換して、あとは草から水分が抜けて干し草になったら、今の寝床よりはましになるな。……そうだ、今のうちにステータスをチェックしておくか。」


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  涼川 氷魔

 人族 17歳 男

ジョブ

1.錬金術士(異) Lv.4 2.テイマー Lv.3

3.条件を満たしていません。

能力値

体力 220/220←170

魔力 270/380←340

物攻 22←14

物防 22←14

魔攻 20←13

魔防 20←13

素早さ 27←19

スキル

・錬金術 Lv.1・錬成補助(簡易武器) Lv.1

・錬成補助(簡易防具) Lv.1

・テイム Lv.1 ・テイム確率上昇 Ⅰ Lv.1

・テイム時強化 Ⅰ Lv.2

・念話(テイムした生き物限定) Lv.1

  保有スキルポイント:9

称号

・神の遊戯者

・神の少しの加護 


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 「おっ!ここでジョブのレベルがわかれるか。やっぱり、ジョブに関連する何かをしても経験値がたまる可能性が高いな。……後でディレットのステータスも一応確認しないとな。」


 ジョブレベルが上がったため、氷魔はスキルについて考え始めた。

 今回の保有スキルポイントは9。新しいスキルは、何かの条件が満たされないと獲得できないため、今持っているスキルを強化するしかない。


 (ディレット達と初めて一緒に戦闘したが、やっぱりひとりで多数と戦うよりも、こっちも多数になって戦うと余裕がでるよな。戦闘スタイル的には、ある程度仲間がいた方がいいから、テイマー関連のスキルを先にあげておくか。)


 氷魔は、テイマーのスキルツリーを開く。

そして、テイム時強化 Ⅰ をLv.10、テイム確率上昇 Ⅰ をLv.2にあげた。

 すると、テイム時強化 Ⅰ とテイム確率上昇 Ⅰ のスキルレベル効果の説明が新しくなった。


 *テイム時強化 Ⅰ :Lv.10になり、ステータスの能力値がランダムで30あがる。


 *テイム確率上昇 Ⅰ :Lv.2になり、テイム確率が約2%あがる。


 「あれ?これって新しくテイムした魔物、めっちゃ強くなるじゃん! 1つの能力値が一気に30ごえって。……ふぅ~、まぁ仲間が強くなる分には問題ないか。………決して、俺より強くなるから嫉妬している訳じゃない。」


 その後、拠点の寝床から出てきた氷魔は、ディレット達の元に向かう。


 「ディレット、俺はそろそろ寝るがお前はどうする?」


 《ワタシモネマスガ………ゴランノトオリ、ホカノモノハモウネテシマイマシタスイマセン。》


 「まぁいい、気にするな。ここに魔物は来ないみたいだしな。それと、どんな武器がいいか決まったか?……そういえば、武器に関して教えてなかったな。一応こんな武器があるが、他の物でも大丈夫だからな。」


 氷魔はアイテムボックスから、前に錬成していた剣、槍、短剣、斧、を取り出しながら、武器の名前を教え、他にどういった武器があるのか軽く説明する。


 《ハイ。ワタシハ、コノヤリトイワレルモノヲ。デスガホカノモノタチハ、ナグレルナラナンデモイイソウデス。》


 「そうか。ならこの槍をやる。他のやつらには、後で武器を渡すと言っておいてくれ。」


 《アリガトウゴザイマス、アルジドノ!ホカノモノタチニモチャントイッテオキマス。》


 氷魔は寝るために寝床に向かうが、途中でディレットのステータスを鑑定していないことに気づき、少し遠いがディレットを視界に入れ、鑑定を発動する。


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  ディレット (ゴブリン)

 Lv.4  男

能力値

体力 70/70←60

魔力 0/0

物攻 15←7

物防 9←7

魔攻 0

魔防 4←3

素早さ 9←7

スキル

・悪食 ・棍棒術 Lv.1


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


 (こうやってみると、意外に俺は強いんだな。ゴブリンと比べてだけど。……今日も疲れたから、疲れがとれやすくなるリンゴを食べて寝るか。)


 氷魔はリンゴを食べながら、木の板を敷いた寝床に向かい、そのまま寝床で眠った。


 このあと、なにがおこるのかも知らずに。



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