そういうわけで、僕はマホロを猫又にすることを…。

@ramia294

第1話  小さな神社

 その古い都には、様々な神様が、祀られている。

 商売の神様や夫婦円満の神様から、お菓子の神様、猫の神様まで、いらっしゃる。


 僕が、住んでいる古びたマンションは、小さな駅から、走れば、五分以内の、やや便利な立地にある。


 僕の独り暮らしの部屋にその猫が、来たのは、とっくに散った桜の花に代わって、新鮮な緑が、まぶしい陽射しにきらめき始めた季節だった。 

 

 猫の名前は、マホロという。


 僕は、いわゆる犬派なので、猫を飼うことはないと、思っていた。


 猫を飼った人は、分かるだろうが、遅い人でも、部屋に来て三日間で心配になり、一週間で可愛く思えて、二週間目には、かけがえのない家族だと思える。


 ひと月も経つ頃には、お墓の中でも一緒でいたいと考え出し、ペットと一緒に入れるお墓を探し出す。


 僕の場合は、一晩で、かけがえのない存在になった。


 そんな僕が、少しでも長く生きていてもらいたいため、猫の神様に、毎日のように手を合わせるのは、ごく自然な事だった。


 遠い昔、雅な都だったこの街は、今に至っては、その面影を偲ぶ事すら難しい。近隣に大都会を抱えながらも、田舎ですよと、空も道路もカラスも主張する。


 春が、恋しくなる頃、火の粉の乱舞で、全国ニュースに取り上げられる寺や、初詣には、参拝者が、様々な地方から訪れ、長い行列をつくる大きな神社。


 それらとは、比べる事もはばかれるが、地元の住民に大切にされているとても小さな社がある。


 

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