高度100万km通過にゃんこ

ケーエス

尊いもの

尊いもの それはにゃんこ


甲高い声を出してくれる甘々ボーカリストにゃんこ


でも甲高い声を出してくれるのはほとんどない


遊んでほしいとき メシを要求するとき


そのときしか甘々ボーカリストにゃんこにはなってくれない



尊いもの それはにゃんこ


目の前の獲物を逃さないスナイパーにゃんこ


でも おもちゃに反応してくれないときもある


今まで熱狂的追っかけファンにゃんこだったのに 


急に全てを悟った賢者にゃんこになる


バス停到着まで1時間のバス待ちくたびれにゃんこをなんとかするには


新しいおもちゃを買うか新しい遊び方を発明しなければならない



尊いもの それはにゃんこ


食べて遊んだ後はスやっとスヤスヤ石像にゃんこになる


彼らは寝返りをうつといろんな姿に変化する怪盗〇ッドにゃんこになる


あるときはオオサンショウウオにゃんこ


あるときはランチプレートにゃんこ


あるときはうらめしやキバ出しにゃんこ


あるときはニュースお伝えにゃんこ


あるときは新お父さんにゃんこ


あるときはダイイングメッセージ残しにゃんこになる




でもよく分からないときがある


怒られるのがわかっているのに乗ってはいけない場所に必ず乗ったり


用意されているカップに入っている水じゃなくてキッチンのじょうろに入っている水を飲んだり


とにかく部屋から出ようとドアノブにとびかかったり


片方が図体が小さいのに怖いものなしかと思えば もう片方は図体が大きいのに怖がりだったり


片方が必死に遊びに誘ってきておもちゃを出したらもう片方に譲りだしたり


分からないときがある


それでもにゃんこは尊い


尊いもの それは にゃんこ 尊いもの それは にゃんこ……
























「おい、今の詩の字数なんぼや?」

『660文字です』

「だとしたら緊急事態や。KACに参加できる作品の字数は1200字や。これじゃ足らん。作者、まさか8回目にして慣れすぎてこんな基礎的なミスを犯したんとちゃうんか?」

『まあ、いろんなジャンルやっているうちに忘れはったんちゃいますか? 知らんけど』

「とにかくこの詩の問題はそれだけじゃないねん。この詩はな、猫の尊さを語ってる詩やろ。なんで尊いのか書かれてへんねん」

『いやいや散々書かれてたじゃないですか。鳴き声とか寝てる姿とか』

「いやそれは事象やん。事象と尊いを結び付けているものが書かれてるかってワシは聞いとんねん」

『どういうことですか?』

「あのな、もしゲジゲジが甲高い声出したらどうや?」

『気持ち悪いです』

「もしゲジゲジが目の前の獲物を逃さないんやったらどうや?」

『恐ろしいなって』

「もしゲジゲジがスやっとスヤスヤ石像ゲジゲジになったらどうや?」

『いそいで駆除します』

「なんでや?」

『気持ち悪いから?』

「なんで気持ち悪いんや?」

『姿……?』

「そうや、猫がさっきの詩みたいなことやって許されるのは可愛い姿からや。可愛い姿やから尊いというところまで思えるんや。猫は姿が可愛いんや。だから何やっても最後には許される。可愛い姿があるからこそ身振りそぶりが可愛く思える。この詩はそこを言うてへん。尊いって適当に言ってるけど事象からそこに行きつくまでの過程が飛ばされてるんや。これは一大事や」

『すんません。今倫理の授業中でしたっけ』

「気になったからいうただけやん。そんな頭抱えんでもええやんけ」

『いや……なんか……字数稼ぎのために頑張ってる先輩があほらしく思えてきて……』

「はあ?」

『そういえば先輩、かわいいアイドルやったら何してもチヤホヤされるのに、ワシやったら睨まれるって嘆いてましたもんね』

「はあ?」

『この世は不公平だ。とか言ってましたもんね。まあ先輩負け犬ですもんね』

「はあ? お前この……」

『ふふふ……』

「……くそう、可愛い顔しやがって……殴れねえ」

『あはは、結局先輩は可愛いものが好きなんでしょー? 素直に言えばいいのに。こんな詩を引っ張ってきてまで遠回しにいうなんてかわいいですね』

「はあ? そういうわけじゃねーし、てかこの場合のかわいいってどういう意味……?」





結局 可愛いものには抗えないのだ 


可愛いものの前にはみな無力



可愛いものは尊い

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高度100万km通過にゃんこ ケーエス @ks_bazz

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