[!感謝 100PV!]蒼の魔術師と紅の剣士(仮版)

霊黎

第1話 呼ばれた者

 最終下校時間を知らせるチャイムが鳴って目覚めると、夕焼け色の空が綺麗で、直接は見えないがグラウンドでは練習内容の振り返りでも行っているのか、元気な返事が聞こえて来た。

 部活にも入らずにグダグダと教室で暇を潰しているのは下で元気よく返事をしているであろう神守朱音というスポーツ少女を待っているからだ。

 彼女はお世辞をちょっと加えれば立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花なんて言う言葉が通る美人さんなのだが、頭のネジが抜けずにどこか違うところに引っかかっているような娘で、先ほどの容姿を褒める言葉に”口を開けばあら残念”とでもつければちょうどいいという感じだ。

 一応寝ている間に連絡が来ていないかを確認して、自分の荷物と朱音の教材バックを持って下足室に向かった。

 それなりに荷物が重いのでのんびり階段を下っていると、下の階から彼女が駆け上がってきた。


「ごめん蒼!思ったより遅くなっちゃった」

「全然いいよ。寝てたし」

「いや、起きとこうよ」


若干息が上がっている彼女のお守をしている私は神崎蒼という。遅ればせながら彼女との関係を紹介すると、彼女と俺はいわゆる幼馴染であり家が近い&互いの母親が同級生といういかにもラブコメに発展しそうなカップリングの2人なのだが、残念ながらそうならないんですよねー。

 ちなみに彼女の部活終わりをグダグダと待っているのは、「6時も過ぎて女の子を一人で帰らせるわけにはいきません!」という我が母のありがたーいお言葉に朱音母が同調した結果である。

 まあ、モヤシ少年とスポーツ少女のどっちが強いかと言われれば……うん。俺が悲しくなるだけだからやめておこうか……。


 「じゃあ帰ろ」

「そうしよう。夕日が厳しいからな」

「言ってること引きこもりのそれだけど大丈夫?」


適当な小ボケを拾ってくれたことに心の内で感謝しながらさらに階段を下り、靴を履いて校門を出た。

 そう”校門を出た”のだ。

 通っている学校は都会の学校とは言い難いかもしれないが、周囲にはちゃんと舗装された道が通っていたはずだ。

 しかし目の前には石造りの壁と床、さらに目深にフードを被った黒いロングマント姿の人が数人。

 一瞬、思考や呼吸などすべての活動が止まり、ハッとして「こちらに来てはいけない」という旨の言葉を後ろにいるはずの朱音に叫ぼうとした。

 しかし遅かった。

 朱音は俺のすぐ後ろで固まり、さらに後ろには正面にも見えていた石壁があった。

 頭が上手く回らず、考えがあちこちに行ってまとまらなかったが無意識のうちに右手で朱音を自分の後ろに押したところでマント姿の人型が片膝を突いてこう言った。


「ようこそ勇者様方。お待ちしておりました」


と。

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