水の卵         ♢

 初めて父さんが水の卵獲りに連れてってくれた。

「今日あたり海面に出てくるはずだ」

 叔父さんとふたりで網の準備をしながら父さんが言った。

 最初はなにも見えなかったけど、日が高くなるにつれて海面にボコボコと泡がたってきた。よく見るとそれが水の卵だった。

 父さんが網を打った。


 初めて見る水の卵は思ったより大きくココナツくらいあった。

 近くで見るとそれほど綺麗でもない。

「これがそんなに高く売れるなんて」

「どうして獲ってもらいたい連中がいるからな」

「集めて水にするのかな」

 父さんは首を振った。

「水にしないためさ」


 そろそろ危険だと港に引き返す途中で、背中に衝撃を感じて振り向いた。卵がかえって細かい水の粒が吹き上がり、巨大な水柱がたった。空に落ちる滝のよう。音が耳を刺す。

「あれでも俺たちが獲るようになって、だいぶ小さくなったんだぜ」

 叔父さんが笑った。


 空に昇ったあの水たちは、どこか遠い国で激しい雨になるそうだ。

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