　図書館で予約していた本の順番がやっと回ってきた。

　意外な犯人と評判のミステリだ。

　ワクワクしながら本を開くと、人物紹介のページにあの言葉を見つけてしまった。

『犯人はコイツ』

　ペン書きで、ご丁寧（ていねい）に矢印まで付けている。

　公共物に落書きするなんて！鬼！悪魔！恥知らず！地獄に落ちろ！

　ひとしきり心の中で罵倒（ばとう）したあと、せっかく借りたのだからと気を取り直して読み始めた。

　面白かった！

　意外なことに『犯人はコイツ』ではなかった。あの落書きはなんだったんだろう。

　まぁいいや、面白かったんだからと本を閉じた。

　次の日、通勤中に読み直そうと本を手にした。

　開くと人物紹介のページの『犯人はコイツ』の矢印が移動していた。

　昨日読んだときの犯人を指している。

　この本の中で、なにやらよくわからない戦いが繰り広げられているようだ。

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