400字物語
工房ナカムラ
お譲りしますよ ♤
昨夜から熱が下がらず、金曜の朝病院に行った。診察時間前だというのに、もう10人ほど待合室に座っている。受付していると最初のひとりが呼ばれ、続いてふたりめが呼ばれた。このペースなら仕事に遅れずにすむと思っていると、老婆が近づいてきた。
「私次の次なんだけど、お譲りしますよ」
一度は断ったものの「私は暇だもの。あなたスーツだしお仕事あるんでしょう?」
と言われ先にさせてもらった。
診察を受けると思いのほか病状が悪いようで、その日のうちに入院することになった。
「病院の入院セット頼んだから、寝巻きはそれ使ってね」
タオル類を片付けながら妻が言った。
「明日から詳しく検査するそうよ」
妻が帰ると手持ちぶさたで売店に向かった。店員が顔見知りらしい客と話している。
「この病院、13日の金曜日に診察室に4番目に呼ばれた人は、1ヶ月以内に亡くなるジンクスがあるんだって」
次の次。まさか。いやまさか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます