第2章
2-1
城の裏手の人工森は、
術具がなくなり、
団服は、
台車を引いていたレイラは、
「それでは、いい子でここで待っていてくれますか?」
アールを
「ピィ!」
片手を上げて応える姿に
「……さて」
そしてレイラは、再度台車を引いて歩き出した。
荷台に積まれているのは、大量の
結界の張られた
「おはようございます。朝ご飯です」
線の内側へ、レイラは足を
ドラゴン達の反応は、睨んでくるもの、
(まあそれでも、一方的に
術具で
そうして今では、レイラは食事を
その
他のドラゴンに比べて半分とまではいかないが、ひとまわり以上体の小さいドラゴンは、
「キュ」
「おはようございます、カルム」
カルムと名付けた土竜は、
ボロボロだった鱗は、心なしか色が
(
「顔を見せていただけますか?」
「キュウ」
(目ヤニなどもなし。歯も問題なし。よし)
「ありがとうございます」
レイラは台車から生肉と葉野菜、
ぱくぱくと食べ始めるカルムを
ほとりで
「クレード、ヴェーレ、おはようございます。食事、こちらに置きますね」
今まで水竜のいたところに生肉と魚を置いて、
空を飛んでいる風竜二頭にも同じように声をかけ、地面に生肉を置く。
逆にいえばレイラがいなくなれば食べてくれるし、満腹になると気が
「……さて」
手こずるのはここからだ。
振り返ったレイラの視線の先にいるのは、木陰で丸まっている火竜だった。クラウスが乗っていたあの子には、フレイルと名前を付けた。といっても、カルムのように呼んで反応を返してくれたことなどないが。
レイラは台車を離れたところに置くと、焼いた肉を手に取った。フレイルは生より、火を通したものを好むのだ。
一歩一歩、フレイルへ
フレイルが、レイラを
が──ある一定のところまで近寄ると、フレイルの
(ここ!)
首をもたげたフレイルが、レイラに向かって勢いよく
「ピィッ!」
結界の外で、アールが悲鳴を上げる。
「
炎はレイラの身を
右手を前に
「そろそろ攻撃するのはやめてくれませんか?」
フレイルの足元まで来ると、結界を解いて肉を地面に置く。同時に爪の長さを目視で
「私は
話しかけるレイラに向かって、フレイルが前足を振り上げた。
再度結界を展開しつつ、レイラは背後へ
「きゃッ……!」
結界のおかげで
「痛……」
足を擦りむいたようだが、
急いで立ち上がり、走り出す。直後、今までレイラのいたところに炎の
「今日も元気なようで安心しました。お肉、
フレイルに笑いかけながら、一定の距離まで離れる。
フレイルはしばらくの間そんなレイラを
炎の届く
もちろん、だからといって平静かというとそうでもない。
結界から出たレイラは、大きく息を吐き出した。心臓はバクバクと脈打っている。
(そろそろフレイルに虫歯がないかとか見たいんですが……やはりまだ難しいですね)
「ピィ、ピィ! ピィィィィ!」
胸を押さえて深呼吸を繰り返すレイラのところに、アールが
「ピィ……ピ!?」
「お待たせしました。一週間前に比べれば怪我も減りましたので、前進です」
カルムや様子を見るだけの
──それでも。
(あんな人形のような状態よりは、今の方が絶対にいいです)
「ですのでアール、お気になさら……、ッ」
そこで軽く
「ピ?」
「……いえ、なんでもありませんよ」
心配ないと、レイラは優しく言う。
(ここは城からも
人工森の、城から一番遠いところにドラゴン用の敷地は用意された。万が一を考えてのことなので、特に文句があるわけではない。
だがドラゴンの相手は肉体労働だ。
(毎日往復にかかる時間も
レイラの
(もう一週間も経つのに、様子を見に来るどころか訓練を行う気配もない)
最初は、術具を外したばかりで気まずいのか、なんて思ったりもしたが……。
産まれたばかりのアールはともかく、竜騎士団としてドラゴン達と
「ピ?」
ムスッとするレイラに気づいたアールが
こんな顔を見せてはいけないと、慌ててレイラは
「いい子で待っていてくれましたし、食事の前にこの辺りを散歩しましょうか」
「ピィ!」
台車を回収したレイラは、アールと共にご
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