第12話 勇者の作り方8
翌日、宰相に連れられて行った先は訓練所だった。
勇者として覚醒はしたものの、慎二は現代日本の高校生だった。剣なんて握ったことなんてない。いや、そもそも殺生をした事なんてない。
アレクとして生きてきた記憶を辿れば、牛飼であった親の手伝いで牛の出産あの手伝いをしたことがあるし、村の肉屋に牛を卸して捌いているのを見たことがある。そんな記憶だ。
命は廻る。
命を食べているという自覚はある。
魚が海を泳いでいて、漁師がとって、捌かれてスーパーに並んで、それを買って来て食べていた。それくらい、わかっている。
けれど、だからといって、自分の手で命を狩って食に繋げたことは無い。
渡された剣は重く、片手で振り回すには無理があった。
「その剣を片手で操れるようにならないと、魔王とは戦えません」
稽古をつけてくれるという騎士がそう告げた。
そんなことを言われても、慎二は魔王なんて倒すつもりはサラサラなかった。けれど、ここは素直に従うのが得策だと理解している。こんな最初で反発をして、洗脳されたり最悪殺されたりなんて冗談ではないからだ。
慎二は、昨夜一人になった時に、自分の体を隅々まで確認した。勇者として覚醒して、黒髪黒目となった自分。しかし、鏡でよく見れば、それは紛れもなく日本人としての新田慎二だった。子どもの頃に怪我をした傷跡がしっかりと右肘に残っていた。ジャングルジムから落ちて切った左足のふくらはぎの傷跡もあった。
それはつまり、この体は紛れもなく新田慎二なのだ。
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