捨てられていた子猫を拾って育てたら彼女になりました

青の空

第1話エピローグ

ザァァァァァァ…


その日は雨が降っていた。

今日の予報では夕方頃から降り始めると言っていたので俺はしっかり傘を準備して会社に向かったため今は暗い夜道を傘をさしながら歩いていた。


「はぁ…今日も仕事終わった〜!」


そんな俺の名前は黒瀬優希くろせゆうき23歳独身。

自慢ではないが年齢=童貞だ!


時期は3月が終わりを迎え春の近づく足音が聞こえそうな今日この頃。

春といえば…ちょうど入学シーズンだよな。

そんな君たちに先輩からアドバイスを送ろう。

高校生になる諸君。まず、今抱いている希望を捨てなさい。

屋上ではご飯は食べれず、隣の席に可愛い子が来ることもなければイケメンが来ることも無い。

更にだ…可愛い転校生?はっ!そんなものはアニメの世界でしか起こらないのだよ!


そして大学生になる諸君。君たちにもアドバイスを送ろう。

まず、だいたい初めの頃は今までと違い自由に過ごすことが出来る。

まぁ、出会いもサークルとか入ればまぁまぁあるしな。

しかしだ…大学生2年生から突如として変わる。理由は単位だ。大体1年くらいちゃんと通っていればある程度はサボれるので大学に行くのが億劫になる。

俺は自慢ではないが雨が降ったから休んだし、さらに言えば…単位ギリギリで本当に泣きそうになった。

…油断は禁物だよ?


そんなつまらないことを1人考えていると雨音とは違う声が聞こえた気がした。


「ん?今のは…猫?」


俺は辺りをキョロキョロとしてみるが…猫の姿は見られない。

その代わり見つけたのが…


「ダンボール?」


そう、雨に野ざらしに放置されているダンボールだった。

まぁ、普通なら気にはならないがそこから声が聞こえた気がしたのだ。


「まさか…な」


俺が恐る恐る近づき中を覗くと…


「マジかよ…」


『にゃ…』


1匹の黒猫が居た。


「捨て猫か…」


猫の全身は濡れており小刻みにプルプル震えている。

多分かなりの時間雨に打たれたのだろう、全身びしょ濡れだった。


俺はどうしようかと迷った。

普通なら保護でもして面倒を見ればいいのだが…


「俺の家ペット禁止だしなぁ…」


そうなのだ。大家さんが大の動物嫌いなのだ。バレたら追い出される。


「…ごめんな。俺に出来るのはこれぐらいだ」


俺はこれ以上子猫が濡れないように自分の傘をダンボールに置いた。


「よし…じゃあな…」


そして俺がその場を離れようとした時…


『にぁ〜…!』


と、子猫が鳴いた。

まるで『見捨てないで』と訴えかけるように。


「分かったよ!分かりました!」


俺は自分が着ていたスーツで子猫を包みダッシュで家に向かった。

だってそうだろう。人間のエゴで救える命を無駄にするなんて俺の道徳心に反するのだ。


「はぁ…はぁ…!頑張れよ!もう少しで家に着くからな!」


俺がそう声をかけるが子猫から返事はなかった。


「…ちっ!外回りで鍛えたこの健脚なめんなよ!」


俺は更に走るスピードを上げ家に突撃した。


「まずは…体を温めないと!」


俺は急いでぬるま湯を用意しぐったりとしている子猫を溺れないように手で支えつつ温めた。


「頑張れ!まだ死ぬなよ!」


俺は必死に声をかけた。

だって子猫の姿が昔飼っていた猫に似ていたから。


そしてその想いが通じたのか…


『…にゃあ』


と、弱々しく鳴いた。


「おぉ!!目が覚めたか!」


俺は嬉しくてついつい昔飼っていた猫の名前を呼んでしまった。

それが気に触ったのか分からないが…


「あいてっ!…うぅ。噛むなよ…」


子猫は小さな口で『カプリ』と噛み付いてきたのだ。


そして噛まれながらも頑張って温め今度は濡れた体をドライヤーで乾かしてあげた。


「ふぅ、こんなもんか。それにしても…見違えたな」


拾った時は泥がついていたり汚かったのだがそれを洗い流してあげればあら不思議。

美しい濡羽色の毛並みをしていた。


『…ふしゃ〜!』


と、子猫は少し元気を取り戻したようで俺の事をめちゃくちゃ威嚇してきた。


「どうどう、落ち着け。俺、敵じゃない。味方。OK?」


まぁ、通じるわけないか。


そんな事を思ったのだが…


『にゃ…?』


と、子猫は首を傾げてきた。

それはまるで『本当に?』と言っているようだった。


「本当だよ。そだ、お腹空いてないか?確か牛乳があったよな」


俺は冷蔵庫から牛乳を取り出し火にかけた。

ここで豆知識。子猫に牛乳を飲ませる時は人肌より少し高め…大体40〜42度に温めてあげるといいのだ。

今回はいきなりだったので授乳用の哺乳瓶は無いので俺は更に牛乳を注ぎ子猫の前に置いた。


「ほら、お食べ。毒は入ってないよ」


俺は軽く指を付けペロリと舐めた。

そしてそれを見届けた子猫はゆっくりと近づきぺちゃぺちゃと音を立てて飲み始めた。


「…ふぅ。食欲もある様だし一安心か」


俺はそう呟き肩の力を抜いた。

そして牛乳を飲んでいる子猫を眺めていて気づく。


「お前…前足怪我してるじゃないか」


そう、子猫の前足に小さな傷があったのだ。


「ちょっと待ってろよ」


俺は消毒液とガーゼ、そして包帯を救急箱から持ってきた。


「ごめんな…ちょっと染みるぞ?」


俺はガーゼに消毒液をかけゆっくりと傷口に当てた。

一瞬猫が痛そうに身を震わしたが不思議なことに今度は噛んで来なかった。


「お前…頭いいな。…よし、これで終わりだ」


そして最後に包帯を巻いて応急処置完了。


「良く耐えたな。いい子いい子…」


そして二、三度頭を撫でたあと俺は自分の飯を用意し、シャワーを浴びベットに横になった。


「ふぅ…明日も仕事か。ま、頑張りますかね…」


そして走った疲れと仕事の疲れが相まって段々と意識が薄れいく中…子猫がこっちを見ているような気がした。

そして一瞬だが、子猫の尻尾は9つある様に見えた気がしたのだが、俺はそのまま眠りについてしまった。


ピピピピピピピ…!


俺は朝の目覚ましで目が覚めた。


「ふぁ…眠い〜」


俺はスイッチを押し鳴り響く音を止めた。


「ん…お腹が重い…」


そしてその重みを感じるお腹を覗くと…


『にゃあ』


と、挨拶?をしてくる子猫が居た。


「おはよう…調子はどうだ?」


と、声をかけるとその場で1周周り…


『にゃあ!』


と、鳴いた。


「ははっ!元気そうだな。…良かった」


俺はそう呟き軽く子猫を撫でまた牛乳を温めて子猫に食べさせ…


「じゃあ、俺は仕事行ってくるから大人しく待ってるんだぞ?」


『にゃあ』


「いい返事だ。じゃあ、行ってきます」


俺はそう言い会社に向け出発した。


そして会社に着くと同僚の伊藤真也いとうしんやが話しかけてきた。


「よっ!なんだ、朝から調子良さそうじゃないか優希」


「なんだ、真也か。俺はいつも通りだぞ?」


そういいデスクに必要な書類を用意していると真也が…


「ふーん。つか、手どしたよ?怪我してんじゃん」


と、言ってきた。


「あぁ。ちょっと猫にな…」


「猫?あれ?確かお前の家って動物禁止じゃなかったか?」


「禁止だよ。けど、死にかけの子猫がダンボールに入ってたら助けるだろ」


「…まぁな。そか、それで飼うのか?」


「まぁ…利口な子だし。地味に愛着湧いたしな」


「へぇ…ま、追い出されないように頑張れよ」


「はいよ」


そうんな会話をし、俺は仕事に取り組んだ。

そして退勤時間の18時になった為俺は猫用の缶詰等を買い帰路に着いた。


そして、玄関の鍵を開け中に入ると…


「ただいま〜って…あれ?」


そこに子猫の姿は無かった。


「おーい、子猫〜。どこだ〜?」


俺は色々な所を探したが…見つからない。


「嘘だろ…?まさか、外に!?」


俺は急いで探しに向かった。


「はぁ…はぁ…!子猫〜!どこだー!?」


しかしどこを探しても姿は見えなかった。


「…マジかよ」


まだ怪我だってしてるのに…どこ行ったんだよ。


そう思うもそれから1週間経っても子猫は見つからなかった。


「はぁ…こんなに探しても居ないとなると…誰かに拾われたのかな」


まぁ、綺麗な猫だったしな。お利口さんで可愛らしい。きっといい飼い主が見つかるさ。


そんなことを思い前に買ってきた猫缶を眺めながら思っていると…


ピンポーン♪


と、チャイムが鳴った。


「はーい!」


俺はそう言い玄関を開けると…


「お兄さん!久しぶり!」


と、子猫と同じ濡羽色の髪を風になびかせ桜の花びらと共に現れた少女がにっこりと微笑みながらそう言ったのだった。



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読んでくださった方々ありがとうございます!

青の空です!


PR文とか書くの苦手でして…少し違っていますが気にしないでください!お願いします!

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