第20話 奮闘! 比嘉専属ティーチャー
2年、3年のマラソン大会の間は、走り終えた1年生は自習だ。帰っちゃダメなのか。みんな適当な席に座ってだべってるだけなんだけど。
「比嘉! 前のテスト、お前どの教科が1番成績悪かったの?」
「ほとんど欠点だったけど、特に悪かったのは英語と現国と古文と数学と化学と世界史と」
「もう、ひと言全部でいいわ、それ」
まさかの全部かよ! これヤバいぞ。初恋相手が留年して後輩になる。どんなラブコメだ、成り立たねーよ。ヤバい! こんな成績取り続けてたらコイツ2年生になれねえ! かと言って、俺もそんなフル教科カバーさせられるほど頭良くねえ! 俺、現国はまだ得意だけど古文無理だし!
試験範囲の表を見る。俺には絶対無理そうなのは……古文と世界史と数学と化学だな。
「曽羽!」
充里としゃべってる所に割って入る。
「曽羽、古文得意だよな。どの辺出そうとか分かんねえ?」
曽羽に俺の古文の教科書を渡す。
「なんかねえ、あ、これ。この活用表に出てくる動詞は絶対出るって言ってたよ。この表丸暗記しろって」
「あー、なんか言ってたなー」
「未然、連用とかってやつだろ」
充里もこの学校ではそこそこ頭いい方だ。俺と同じく中学の時はめっちゃ成績悪かったけど。
「叶に教えてくれるの?」
「うん。俺絶対、比嘉を2年生にしてみせる!」
「大変だけど、頑張ってねー」
え、大変なの? 曽羽が癒しの笑顔で手を振る。あー、かわいい。癒されたし、ビシバシティーチャーすっか!
「比嘉、この表覚えて! 動詞の活用表」
「動詞って何?」
……そこからかよ? これ、マジ大変だ!
教科書読んでみたり、表を写して自分で書かせてみたり、講義動画を探して見せたりしたけど、1番比嘉の食い付きが良かったのはアプリでゲーム感覚で覚えさせることだった。
それを発見するまでに、俺この表完璧に覚えちゃったよ。古文の成績上がりそう。
でも、ゲームで覚える系が相性がいいと分かれば話が早い! 他の科目も得意な奴に出そうな所聞いて、良さげなアプリを探せばいい。
「
「あー、
「マジで?! ありがとう恵里奈! 津田ー!」
大声で津田の席へと走る。え、何? と津田がギョッとしてる。
「次のテストで出そうなとこ教えろ!」
津田の顔の前に俺の教科書を突き付ける。
「比嘉のために頑張れー、統基!」
充里が大声で言って、みんなから笑いが起きた。
「おう! 俺頑張る! 絶対比嘉を2年生にしてみせるぜ!」
「絶対だな! 言ったぞ入谷! 頼むぞ!」
津田が教科書に蛍光イエローでガンガンマークして行く。
「比嘉さん! 勉強頑張ってね!」
と、比嘉の隣の席の那波が応援してくれてる。お、比嘉が曽羽以外の女子に話し掛けられるなんて珍しい。
「え? う……うん」
「年号覚えるのにいいアプリ知ってるよ! 私も入れてるんだけど、これこれ」
お、何人か比嘉にオススメのアプリを教えてくれる。勉強系のアプリってこんなにあるんだな。
みんなの前で宣言しちゃったし、こりゃやんなきゃな! 絶対、比嘉を2年生にしてみせる!
とりあえずの目標は欠点クリアだ。40点取れればいいんだから、楽勝じゃねーか!
「あー、もう疲れた」
全然楽勝じゃなかった。比嘉、とにかく集中力がない。
「早えーよ! んなことじゃお前だけ来年も1年生だぞ! 俺のこと入谷先輩って呼べよ!」
「絶対呼ばないわよ。高校って何年でも通えるのかしら?」
諦めるなよ! 諦めるのも早えーよ!
「お前、テレビの背景から6年もかけて聖天坂を突き止めたんだろ? お前のその根性と情熱があれば、このくらい覚えられるよ。ほら、オリエント文明は対象だ。お前はメソポタミアのくさび形文字だよ。そして俺はシュメール人」
「え? 対象が、オリエント?」
「オリエント文明」
と言いながら、ノートにも書いてみせる。
「で、私が?」
「メソポタミアの、くさび形文字。最古の文字とか、粘土板とか象形文字とか出てきたらお前の名前を書け。お前はくさび形文字なんだよ」
めちゃくちゃだけど、対象を絡めるとまだ話を聞いてくれる。とりあえず、関連ワードをまとめてこのぶっ壊れた頭に叩き込むとするか。
ちゃんと覚えたらどうすればいいかは、俺知ってる。
「おー! すげーじゃん! こんなにややこしいカタカナいっぱい書けるなんて! よく頑張ったよ!」
「この私に覚えられないことなんて、ない!」
比嘉が嬉しそうに顔にピースをくっつけて笑っている。
あー、頭はぶっ壊れてるけど、やっぱり超超かわいい! この笑顔がご褒美に見られるんなら、超疲れるけど俺いくらでも勉強教える! これだけ繰り返してたら自分の勉強時間作る必要ないくらい覚えられるし!
学校が終わってからも、充里の家で比嘉と曽羽と勉強会だ。比嘉は本当に覚えが悪いけど、1度覚えたら忘れにくいみたいだ。一通り覚えさせることに成功したら、比嘉を2年生にできるかもしれない!
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