スキル-2
食事を終えると、リーフは元アルテの部屋で寝床の準備を始めた。と言ってもベッドと木刀以外なにもない部屋なので、やることは少ない。
ベッドのシーツを【創造魔法】で新調して、最低限必要な家具でも創ろうかなぁと考えていたそのとき、勢いよくオトが部屋に乱入してきた。
なにやらお気に入りらしい枕を抱えて、じろりと油断のならない目をリーフに向けてくる。
「どうしたの? オト君」
「お前だけアルテの部屋に寝させるわけにいかねえからな! 妙なことしないか、俺が一緒に寝て見張ってやる!」
「妙なことってなに……?」
さっぱり検討がつかなかったが、オトは本気らしく、
「えっと、じゃあベッドはオト君が使いなよ。僕は床でも寝られるから」
「べ、べべべべべベッド!? アルテのベッド!!!? アルテの匂いが染みついたベッドに、お、俺が寝るとか、そんなっ、ムリムリムリだって俺はやっぱそういうのは順序があると思うしアルテも嫌がると思うしアルテはああ見えて恥ずかしがりやなところもあがががっ」
「シーツも布団もさっき新しいのに替えたよ」
壊れた
「そ、そ、そうか。それなら安心だ。じゃあベッドはお前が使え」
「え? 悪いよ」
「いいって、俺がワガママで転がり込んだんだからな」
「うーん……あっ、じゃあさ、こうしよう」
かくして。
「おおぉ……」
数秒後、アルテの部屋にもう一つベッドが増えていた。【創造魔法】で創り出したフカフカのシングルベッドである。イメージしたのは、ティアの部屋にあったあの柔らかいベッドだ。
「すげぇ、しずむ! おい、リーフも乗ってみろよ!」
「いいの? ……うわぁ、すごい、我ながらイメージ通りだよ!」
こうしてアルテの部屋は、今日からリーフとオトの寝室になった。【創造魔法】で創り出したものは、時間が経っても消えることがない。すでにリーフの魔力からこの世の物質へと、その性質を変えているからだ。
「それにしても、お前の魔力量はすげぇな……今度ギルドの水晶で測定してみろよ。常人の100倍はくだらないぜ」
並んでベッドに転がりながら、オトが言った。
「そんな便利なものがあるんだ」
「冒険者は階級が上がることに、冒険できるエリアが広がっていくからな。冒険者の実力を正確に査定しないと、ごまんと死者がでちまう。だから、魔力量だけじゃなくて、レベルとか所持スキルも細かく調べられる仕組みが研究されてきた」
「気になってたんだけど、《スキル》ってなんなの? アルテさんが使ってた、《エクストラスキル》だかなんだか……魔法とは違うの?」
あぁ、そういや説明してなかったなと、オトは前提から話してくれた。
「魔法ってのは、そもそもお前ら魔族の専売特許だろ。人間はその技術体系を研究して、自分たちでも使えるようにアレンジしたんだ。だから、魔族と人間の魔法は同じ名前でもけっこう違う。魔族の使う【光魔法】はすげえ威力の光熱レーザーだけど、人間の【光魔法】は用途に応じて明かりを出したり、鏡を作ったり、幻を見せたり……ざっくり言うと、『雑だけど純粋な威力がやべー』のが魔族の魔法、『威力は劣るけど万能で種類が多い』のが人間の魔法だな」
「わぁ、オト君の説明って分かりやすいね」
オトは照れたように顔を背け、「いいかげんオトでいい」とぶっきらぼうに言った。
「んで、スキルは逆。人間独自の能力だ。5歳くらいになると誰でも一つはスキルが発現する。これを《
聞いていてリーフは、それは本当に神が与えた特別な力なのだろうか、と思った。
魔族にも、生まれたときから得意不得意がある。努力次第で、もとある能力を磨くことも、新しい能力を身につけることもできる。才能と努力が生み出した当人の力――それに適切な名前をつけて、目で見えるようにしたのが人間の開発したスキルシステムなのではないか。
もしそうなら――今まで知らなかっただけで、魔族もスキルを持っているんじゃないか?
「オト君」
「オトでいいって」
「あっ、えっと……オト、所持してるスキルはどうやって確認するの?」
「ん? 簡単だよ、【鑑定魔法】を使えるやつに頼めばいい」
「そっかぁ。そんな人簡単に見つからないよね」
「いや、使えるけど。俺」
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