第103話 それではどうぞぉ

虚無

「タメになったねぇ」


絢斗

「タメになったよぉ」


東雲

「うん、プロの言葉って感じ?」


紅明

「そうだろうそうだろう。

もっとこの偉大なる先輩を

うやまうがよい。そしてたてまつるがよい。」


樹里

「では、そろそろ絢斗先生のボイトレ講座かしら」


東雲

「いやいやいや、なに言っちゃってんの?

次はサトミンが歌う番だって」


虚無

「そうね、檸檬先生がその綺麗な声で何を歌うのか…

私!気になります!!」


紅明

「コロちゃんなかなかモノマネ上手いよね。

で、檸檬先生は何歌うん?」


樹里

「わ、私は絵描きであって

アイドルではないし歌い手でもないわ。

だから歌う必要は無いのよ」


絢斗

「樹里は声が綺麗だから楽しみだよ」


樹里

「歌わないわよ!?」


東雲

「で?何歌う?」


虚無

「普段の発声とか聴いてたら音痴とかも無さそうだし

何も考えずに歌ってみればどうかな?」


樹里

「・・・・・・のよ…」


東雲

「ん?聞こえないんだけど?」


樹里

「人前で歌った事が無いから

恥ずかしいのよ、、、」


絢斗

「じゃあ、今日がデビューだな♪

俺も一緒に歌うから大丈夫だよ」


東雲

「あぁ!ずっるぅ~い!

あーしも絢斗くんと歌いたいし!」


樹里はうつむいて黙ってしまった。

この空気は良くないな。


紅明先輩を膝からおろして樹里の隣に座る。


絢斗

「大丈夫、俺と一緒に歌お?

良く口ずさんでる曲とかある?」


カラオケのタブレットを持って樹里からも見えるようにする。

肩や太ももが触れ合う距離感になって体温が伝わってくると同時に緊張まで伝わってくる。

いつもの余裕が全く感じられない樹里の腰に手を回し少しだけ引き寄せると「あっ…」と声を零す樹里。


そして少し悩んだ後小さな声で耳打ちしてきた。


東雲

「何イチャついてんのよ!」


虚無

「弟子よ、私にもそれくらい優しくしてもバチは当たらないよ?」


紅明

「後で僕にもそれおなしゃっす!」


絢斗

「うるさいのはほっとこうw

うん、おっけー、いい選曲だね♪」


選曲したのは某異世界グルメアニメの二期オープニング。


前奏が終わり樹里が歌い始める


樹里

「♪そっと扉を●なげて~」


周りから「おぉ~!」と歓声があがる。


樹里

「♪せ~●で

パクッパクッパクッ美味しいね」


皆もこのアニメを見ていて知っていたのか

パクッパクッのところを

一緒に歌ってたw


曲が可愛いもんなぁ。


樹里が歌い終わり「ふぅ~」と深い深呼吸をしている。


東雲

「あんたむっちゃ上手いじゃん!」


虚無

「デフォの声が綺麗だから

この曲ぴったりね」


紅明

「先生いいもん持ってんねぇ」


絢斗

「うん、すごく綺麗な声だった」


樹里

「当たり前よ。この檸檬先生にダメなとこなんてあるわけないじゃない。」


東雲

「さっきまでウサギみたいにプルプル震えてたくせにw」


樹里

「む、武者震いよ!」


虚無

「その声質ならΔのカナメいけそうよね。私は美雲いけるからデュエットしようよ」


樹里

「まだ無理…もう少し慣れてからなら…」


紅明

「先生赤くなってか~わ~い~い」


顔真っ赤で俯く樹里だが

この感じなら行けそうだな。


絢斗

「皆上手だし気が向いたら歌枠のゲストに来てもらおっかな」


紅明

「僕はいつでもいけるよ~」


東雲

「絢斗くんの歌枠とかハードル高すぎるんですけど!?」


虚無

「それは当然こちらの枠でもコラボしてくれるってことだよね?」


絢斗

「もちろん、ブライドの許可が出るなら問題無いしこちらからお願いしたいくらいだよ」


さて、

いい感じに緊張もほぐれてきたし

ボイトレ開始だな。


1人ずつしたい

歌えるようになりたいというのをリスニングして

俺なりにアドバイスをしておいた。


ぶっちゃけみんな上手だから贅沢な悩みで

ボイトレなんかしなくてもいいんだけど

上手くなりたいって気持ちが伝わってきたから納得出来るように付き合うことにした。


・・・・・・・・・・・・・・


東雲

「絢斗くん!ありがと~」


虚無

「すごくわかりやすかったよ」


紅明

「レベルアップした気がする!」


樹里

「なぜ私まで…ブツブツ」


絢斗

「喉を潰さないように気をつけてトレーニングするようにね」


さてと、

後は自分の事に集中しなきゃだな。


もう初配信は目の前だし

サムネ作って

用意してもらったBGM選んで

機材の最終チェックして…


デフォルトの声は立ち画にあわせて

中性的な少年?少女?っぽい感じにした。


モノマネや歌、ゲーム配信がメインになるから

声は要所で変えていって

どれが素なのかわからないようにして…


あとは本番でリスナーさん達の反応次第で臨機応変かな。


緊張のドキドキとワクワクが混ざり合って…


楽しみだなぁ。


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