第74話 先輩とママン

二日目は湖でバス釣りを楽しんでから帰路についた。


夕方頃に帰宅。

なんか久々のマイホームな気がするなぁ。

ん?スマホのチャットアプリに連絡が大量にきてるな。

虚無さんと鈴木さんと東雲と樹里と…紅明先輩からもきてる。


なんだこれ?

ギャルゲーの主人公かよ。

そういや最近その手のゲームしなくなったなぁ。


虚無さんは…

『ブライドから連絡があったんだけど。社長が知り合いとかイミフですが?で、なんで私がVTuberになる事前提で話がすすんでるの?私の意志は?』


知り合いというかデビュー前のタレント兼グループの大株主未来のオーナーなんだがそんな事はわざわざ言わない。


『やる気があるなら面接してくればいいし興味ないなら断っても大丈夫ですよ。』


あとは本人次第なので放置。


鈴木さんは虚無さんの事とあーとの事。

あとひと月ちょっとでデビューだからな。そろそろ打ち合わせとかで詰めていかなきゃいけないこともあるらしい。


東雲は…

『やっほー、暇暇だから遊ぼー』


子供か?

あーやーとーくーん、あーそーぼー

みたいな?


樹里は…

『釣り勝負の賞品はいつくれるのかしら?そして私に黙って1人旅とかもどうかと思うのよ。外出するときはちゃんと行き先と帰宅時間を報告する義務を忘れないで欲しいわ。』


あ、釣り勝負のこと忘れてた。

そしてなんの義務が発生してるんだろう…


紅明先輩は…

『最近ゲームしてないの~?僕が教えてあげるからゲームしようよ~』


そういや忙しくてオンライン系は全然やってないな。


とりあえず明日はグライドの事務所に行っておこう。

自分で始めたやりたい事の準備が着々と進んでいるのが楽しい。

小さい頃、大人たちに内緒で秘密基地を作っていたときのような感覚かな。

完成したらそこで何をやろう?とかね。


・・・・・・・・・・・・・


翌日のグライド事務所

鈴木さんと中野さんとで会議だ。

外面的な事、配信の日や時間はどうするのかなどのスケジュール的な事、サインやらグッズやらの事など。

内面的な事、まあシステムの動作確認やらBGMのチョイス、オリジナル曲の事等々。


思ったよりやることが多くてびっくりしたがタレントがしなきゃいけないのは配信以外は実務ではないのでそこまで面倒なことはなかった。


会議を終えて帰ろうと歩いていると紅明先輩が来社したとこに遭遇。

「後輩よ、僕に会いにきたのかい?」

「グライドの打ち合わせですよ。」

「そこはお世辞でも先輩に会いたかったと言うべきシーンだと僕は思っちゃうんだけど?」

「あ、ごめんなさい。嘘つけないたちなんで。」

「それだとホントに会いたくなかったみたいに聞こえるから!」

「そんなわけないじゃないですか」

「え!ほんと!?」

「こんな可愛らしい幼女が嫌いな人はいませんよ」

「幼女って言うな!僕は大学生だぞ!先輩なんだぞ!」

「そんなことより、今日は配信無いんですか?」

「配信は夜からだよ。今日は冬お披露目の新衣装の打ち合わせだよ。」

「ほほう、新衣装か」

「紅葉ママもくるから楽しみなんだぁ♪」


む?知らない人がくるのか…

帰ろう。一刻も早く。

ただでさえここは女性しかいないから居心地が悪いからな。


「へぇ、そーなんですね。じゃ、俺は帰ってから用事があるのでここで失礼しますね。」

「え~、帰っちゃうのぉ?」


ダメだ、ここで話を続けると知らない人相手に挨拶したり談話しなきゃならなくなる可能性が出てきてしまう。

そんな可能性は早めに潰さねば!


「また今度ゲームしましょうね、ではでは」

「また今度っていうのはいつ??」

「そ、そんな子供みたいな事言わないでもらえませんかね?ちょっとマジで帰りたいんですけど」

「今度っていう約束は果たされない確率の方が高いんだよ?」

「わかりました!帰宅して用事が済んで夜飯くって寝て起きたら連絡いれるかもしれない感じに考えておきますから!」

「えぇ、それ絶対連絡してこないヤツだよね!?」

「します!します!たぶん!だからズボンをつかまんといてモロテ」

「えぇ、ダメだよ、ちゃんと約束してくれなきゃ離さないもん!」

「またそんな子供みたいな事を!?お、大人はそんな聞き分けの悪い事言ったりしないんじゃないですかね!?」

「えぇ、だって」

「その「えぇ」っていうのやめてもらっていいですか!?話が終わらないんで!」

「いいの?僕にそんな事言って。泣くよ?それはもう癇癪おこした子供のように。」

「おい幼女!絶対やめろよ!」

「あぁ!また幼女って言った!もう泣く…ふぐぅ…」

紅葉「紅明ちゃん?何してんの?」

紅明「あ、紅葉ママ」


ぐあああああああ!!

やられたああああああ!!!

間に合わなかったあああああ!!!


紅葉「てかなんで男おるん!?え!変質者!?捕まえたん!?」


ほらぁ!嫌な予感してたらこれだよぉ!


絢斗「紅明先輩離してぇ!もうおうち帰るぅ!!」

紅明「え?あ!ごごごごめん!」

紅葉「え?え?なにこれ?」


俺が自分自身の不運さに泣けてきたのを見て紅明先輩がパッと手を離したが今度は紅葉さんが…


紅葉「ちょっ!ちょっと待ちぃや!誰かぁ!変質者です!誰かきてぇ!!」

と叫びながら俺の服を掴んで引っ張るもんだからTシャツがベロベロにのびてしまった。


はぁ…もういいや…

「はいはい、変質者ですよぉ。合法ロリな紅明ちゃんを食べにきましたよぉ。それはもうお人形遊びするかのごとく美味しくいただきにきましたよぉ。ぐへへのへぇ…はぁあ。」


棒読みでセリフをつぶやいているとセキュリティの人とか鈴木さんとか浜崎社長とかきて大変な騒ぎになっていた。


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