第2話 ボッチの意味しってる?



学校の昼の休憩時間、

イヤホンをつけスマホでゲーム配信のアーカイブを見ている。


俺は空気なボッチなので何をしていようが誰も話しかけてこないのが最高だ。

動画視聴中に話しかけられたりしたら気が散るどころの話じゃない。


端的に言えば【邪魔すんな】の一言につきる。


そんな感じでパンをかじり楽しみながら配信の勉強をしていると

トントンと肩を叩かれた。


振り返ってみると

俺とは一生縁の無さそうなギャルが俺のスマホを覗き込んでいる。


は?だれ??


誰だかわからないギャルは

眉をひそめた俺の迷惑顔をもろにくらっても気にする風でもなく

まだ話しかけようとしてくる。


なんて鈍感な女子なんだ!

俺の迷惑顔を無視できるなんて

頭おかしいんじゃねぇの!?

まぁ伊達眼鏡と前髪で

ちら見えくらいしか表情なんてわからないんだが。


仕方ない、ここは更に話しかけるなオーラを全開にして知らんフリかまそ…


はい、知らんぷりできませんでした。

俺のワイヤレスイヤホンをむしり取り

後ろから俺のスマホを奪い取ろうと覆い被さってくるもんだから

柔らかな大胸筋がポヨンと背中に押し付けられている。


う~ん、まーべらす。


全集中!背中の呼吸!


重さと弾力と柔らかさ。

そこに体温が加わる事によって完成される

究極の【たぶらかし】なのではなかろうか!?


ゴム鞠よりも柔らかいのに

この弾力は一体どういう構造なんだろう…

弾力と書いて【はずむちから】。

つまりは

カシイムチノチ


いや、ちがうか。


はっ!これが爺様の言ってた女体の神秘とか言う奴か!?



ギャル

「あんたさぁ、

人が話しかけてんだから

返事くらいしたらど~なん?」


俺氏

「…いや、ギャル子さんさ、

ボッチの意味、知ってる?

皆に無視されて相手にされてないのはボッチって言わないんだ。

それはただのイジメなんだよ。

俺はほっといて欲しくて

独りにして欲しくて周りとの関係を絶っている真のボッチ。

略してシボチーだ。

理解したらテンプレが発動する前にとっととシボチーホンイヤホンを返して

ギャル子星に帰ってくれないだろうか?

俺みたいな陰キャに話しかけてる暇があるなら

いつものように陽キャ達と

アホみたいに周りを気にせず迷惑をかえりみず

騒いでおけばいいじゃないか。

シボチー星に陽キャは必要無いんだよ?わかったね?」


ギャル子さんはいきなりまくし立てた俺の話があまりにも正しいので

開いた口がふさがらず

何処かの池の人面魚のようにパクパクしている。

きっと閉じようとする力と開いていく力が拮抗しているのだろう。


拮抗ってカタカナで書いたら卑猥な香りがするのはきっと気のせいだよね。


俺の話を理解出来なかったのか

ギャル子さんはイヤホンを返却せずにまだ話かけてくる。


ギャル

「その動画のゲームやってんの?」


俺氏

「ハァ…質問に答えたらイヤホン返してくれる?」


ギャル

「返す返す!で?どうなん?」


俺氏

「やってるよ。さ、かえし…」


ギャル

「え!どれくらいやってんの?」


俺氏

「それなりに。さ、かえし…」


ギャル

「あーしオススメ配信者いるんだよね!

一回見て欲しいなぁ」


俺氏

「これはアレか?

見るって言うまでイヤホンを返してもらえない

無限ループなんでしょうか?

そして言葉を被せてくるな。」


ギャル

「あーしの周りの女の子で

そのゲームやってる子っていないんだよねぇ」


ダメだコイツ。

とうとう会話のキャッチボールまで無視し始めたよ。

なんでギャルってまともに会話しないんだろう?


自分の主張が通るまで対話してどうにかしようとか思わないのだろうか?


ボッチの俺が人とのコミュニケーションを語るなとか自分でも思ってしまうが

それでも最低限の意志疎通は必要だと思うんですよ。


俺氏

「あのぉ…」


ギャル

「ん?なに?」


俺氏

「ハウスッ!」


ギャル

「ハウスってなにそれw

ウケるんですけどww」


いやいや、精一杯の皮肉を込めた最強の終止符だと思ったんだけどなぁ。


俺氏

「いや、全然面白くないんだが…」


ギャル

「だからぁ、

その配信ってのが面白いんだって!」


これは始業のチャイムが鳴るまで終わらんやつだわ。


ハァ…

何なんだよこの子は…


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