第30話 レイと新しい仲間

 「森に入る前に1つ聞いておいていいか?」

ギランが森に向かう途中で聞いてきた。

 「聞くって何をだ?」

 「お前のユニークスキルのことだ。どんな効果があるのか教えてくれないか?」

 「いいぞ。」

 そうして俺はスキルの説明欄を読み上げた。

 「今回はお預けか。」

 「すまん。」

 「それはいいんだ。だがそのスキル成長が楽しみだな。」

 「俺自身かなり使えるスキルになるんじゃないかと期待してるんだ。」


 そうして俺たちは森に入った。しばらくは野生の鹿や兎がいるだけで魔物には出会わなかった。ギラン曰くこの辺りはいつもこんなものらしい。しばらく進むと野生動物が減って何もいない。普段ならこの辺りにはホーンラビットと言う角の生えた兎がいるらしい。そしてとても美味いらしい。


 「これってそんなに変なのか?俺たちが入った時もこんな感じだったが。」

 「俺もこんなに何もいないのは見たことないからな。だが普段と何か違うことくらいはわかる。お前ら!気引き締めて行くぞ。」


 それから4匹のゴブリンに出会い、実力を見せておく為に俺一人でそいつらを狩った。そしてそれからはポツポツ出てくるゴブリンを倒しながら進んだ。


 「ちょっとそこで止まれ。」

 「どうしたんだ?」


 ギランが急に止まった。


 「そこに洞窟が見えるか?」

 「見えるがそれがどうかしたのか?」

 「あれはゴブリンの巣だ。」

 「危険なのか?」

 「もちろんだ。行くか?」

 「行ってみましょう。」

 「ハイド、中ちょっと見てきてくれないか?」

 「あぁー、いいですよ。」


 5分くらいしてハイドが帰ってきた。


 「何の変哲もないただのゴブリンの巣ですね。これなら攻略はできるんじゃないですか。」

 「それじゃあ行くか。先頭にハイド、その次に俺とレイ、真ん中にガル、ソラ、サラ、後ろにグランとリン。こんな感じで行くぞ。レイ期待してるぞ!」

 「任せろ。」



 ギランのパーティーは本当に優秀だ。ハイドの索敵能力もあるが、各々の対応力が高い。ガルは何があっても後衛2人に攻撃は通さず、その隙に後ろに控えている2人が襲ってきたゴブリンを蹴散らす。そしてソラさんとサラさんの2人は敵から飛んできた魔法を障壁的なもので受け流して近くにいる敵に跳ね返すという、俺から見たら神業見ないなことをやってのける。後から聞いた話だがこのパーティーは町一番だそうだ。俺はと言うと前から来たゴブリンをコツコツと片付けていくだけであまり役に立っている感じがしない。それからしばらく進んで、横穴を見つけたので俺たちは少し休憩することにした。


 「穴塞いどいたよ。」


 ソラさんが俺たちが入ってきた穴を塞いでくれた。洞窟の中ではあんまりするべきではないらしいが今回は違うらしい。


 「さっきちょっと見てきたんですけど、この先かなりのゴブリンがいます。こちらの人数的にもかなり大変な仕事になると思いますがどうしますか?」

 「レイ、お前はどうしたい。」

 「俺は行くべきだと思います。明日の為にも少しでも敵は減らしておきたいですし。」

 「よっしゃ!じゃあしばらく休憩したら出るぞ。そしたら勝つまで休憩はないからな。」


 俺達はそれから30分くらい休憩して、横穴を出た。


 「さっきと同じ順番で行くぞ。」

 「少し進んだ先に曲がり角があります。そこを曲がったらゴブリンの巣窟です。」


 パーティーの空気が一気に変わった。ゴブリンの声がだんだん近づいてきた。曲がり角にたどり着きその先を覗いて見ると50匹くらいが何か檻のようなものを取り囲んでいた。そして入口を塞ぐようにガタイのいいゴブリンが2匹、そしてその後ろに杖のようなものや弓を持ったゴブリンが10匹づつくらいいた。


 「おいギラン、これどうにかなると思うか?」

 「どうにかするしかないだろ。」

 「ハイド、檻の中に何がいるかわかるか?」

 「人ではないと思いますが、それ以上は…。」

 「とりあえずあの2匹とその後ろの奴ら片付けないと始まらないな。」

 「俺とレイとグランで前の2匹をどうにかする。その間にサラとソラはその後ろのやつをやってくれ。ガルとリンは2人の護衛だ。」

 「了解。」

 俺たちはガタイのいい2匹に突撃した。

「「「でかっ」」」

 近づいて見ると体の大きさは人間の2倍ぐらいあった。

 「俺は右、グランは左だ。レイはサポートしてくれ。」

 「わかった。」

 ギランとグランは体がでかい割に素早く動き回っていた。その間俺はゴブリンの死角に回って切りつけたり、飛んできた矢や魔法から2人を守っていた。 それに対して相手の巨大ゴブリンは攻撃の威力はとても高いが動きが遅く2人の攻撃に翻弄されていた。そしてついに2匹が足の怪我と疲労で倒れた。だいたい15分くらい戦っていただろうか。

 「レイ!トドメをさせ!」

 「はい!」

 そうしてまず2匹の巨大ゴブリンの討伐が終わった。その頃サラさんとソラさんは順調に後ろに控えていたゴブリンアーチャーなどを狩り終えていた。2人は傷1つ無い完勝だった。


 「お疲れ様。」

 「サラさん達こそお疲れ様です。あれだけの魔法を連発できるのには驚きました。」

 「レイ君も凄かったよ。あの二人のペースに付いて行ってしかもトドメまで刺しちゃうんだから。」

 「いやトドメは2人が譲ってくれたからで…」

 「違うよ。今2人あそこでへばってるもん。トドメ刺す体力が無かったから君に頼んだんだよ。」

 「ありがとうございます。」

 「あの皆さん…。奥の檻にいたゴブリンが来てるんですが。」

 「ギランとグランは奥に逃げて!残りは私達が何とかする。」

 「すまない。任せた。」

 「リンさん、いきますよ。」

 「今回は私も戦いますよ。」

 「それじゃあハイドは檻の中の確認を頼む。サラさんとソラさんは俺たちの援護を」

 「任された!」


 俺たちは第2戦に入った。さっきの戦いと違って敵1匹1匹は弱いが、数が多すぎる。何とか土魔法で作った岩でバリケードを作り防いでいるが、これがいつ崩されてもおかしくない。


 「ギラン!そっちに2匹抜けたぞ。」

 「それくらい大丈夫だ。こっちのことは気にせず戦え!」

 「頼む。」

 「やっと帰ってこれました。ちゃんと見てきましたよ、檻の中身。」

 「それで中は何だったの?」

 「それがどこにでもいるような普通のスライムでした。」

 「ゴブリンがなぜスライムなんかを…。ハイド何か知らない?」

 「ソラさん、私は超能力者ではないんですよ。」

 「私からしたらあの中を無傷で行って帰って来れる方が不思議なんだけど。」

 「それはスキルのおかげです。」

 「2人とも喋ってないでこっち手伝ってよ。私とレイ君だけだと大変なの。」

 「わかりました。」

 「ソラさん、一旦この道を塞いでくれませんか?」

 「いいけどどうするの?」

 「ちょっと考えがあるんだ。」

 「わかった。」


 俺たちは1度作戦会議をすることにした。

 「それでレイ君、作戦って何?」

 「その作戦の話をする前に1つ聞きたいことがあるんだがいいか?」

 「何?」

 「この中で身体強化的な効果の魔法使える人っています?」

 「私とサラが使えるけどどうしたの?」

 「それなら良かったです。俺の作戦は、2人が俺にできるだけ身体強化の魔法をかけて、俺があの中に突っ込むって作戦だ。リンさんは念の為にここに残っておいて欲しい。」

 「それはダメだ。」

 「ギランどうしてだ?」

 「当たり前だ。お前が危険すぎる。お前が死んだら明日の討伐はどうするつもりだ。」

 「大丈夫だ。そうならないうちに帰ってくる。それに危険になったら助けに来てくれるんだろ?」

 「当たり前だ。死ぬなよ。」

 「ああ!それじゃあ頼む。」

 「OK。移動速度上昇、筋力増強!」

 「それじゃあ私も。防御力強化!あとこれも貸してあげる。」

 「これなんですか?」

 「1回だけ致命傷を防いでくれるアイテムなの。」

 「そんな高級なもの受け取れません。」

 「じゃあしばらく預かってて貰える?」

 「本当に預かるだけですよ。」

 俺は絶対これを使わないと心に決め壁の前に立った。

 「それじゃあ行ってくる。」

 俺は壁に穴を開けてもらい、ゴブリンの中に飛び込んだ。さっきまでは2人で戦っていても押され気味だったが今は逆に俺の方が押している。2人のバフの凄さがよくわかる。俺はそこからひたすらに剣を振り続けた。怪我をした時はハイドがこっそり回復薬を届けてくれて、転んだりして危なくなった時にはサラさんかソラさんのどちらかは分からないが、後ろから援護をしてくれた。そうして何分たっただろうか。ついに最後の1匹の首を切り落とした。


 「終わったぞ。」

 「よく無事だった。お前がいてくれて助かった。」

 「援護やバフありがとうございました。」

 「どういたしまして。明日はこんな無茶しないでよ。」

 「明日はレインがいる何とかなるだろ。」

 「レインがいると何か変わるのか?」

 「あいつの防御はめちゃくちゃ硬いからな。俺のスキルが上手く使える。」

 「明日が楽しみだ。」

 「それで、檻の中見に行っていいか?さっきからずっと気になってるんだが。」

 「別に構わないが気をつけろよ。」

 「あぁ。」


 俺は檻に近づいた。

 (ん?なんだこれは?)

 檻の中には緑色のゼリーみたいなのがいた。襲ってくる気配もないので檻から出してギラン達のところに持って帰ることにした。


 「レイ何がいたんだ?」

 「なんかこんなゼリーみたいなのがいたんだが…。何かわかるか?」

 「色は変だがスライムじゃないか?この辺じゃあんまりいないが、他の街の近くには結構たくさんいるらしいぞ。別に害は無いから飼うやつもいるぐらいだ。」

 「それじゃぁこいつ貰っていいか?」

 「もちろんいいぞ。あのゴブリンの山を片付けたのはお前だしな。」

 「じゃあありがたく貰うよ。それとこのアイテムありがとうございました。」

 「いいよいいよ。それよりその子にご飯あげないの?かなりお腹すいてるみたいだけど。」

 「そうなんですね。それでは。」

 俺は持っていた干し肉5枚をスライムにあげてみた。そうするとスライムは触手のようなものをゆっくりと伸ばして1枚持っていった。そしてそれを体の中に入れてシュワシュワと泡を出しながら消化した。

 「まだまだあるぞ。」

 そういうとスライムはそこにあった干し肉を瞬く間に食べきった。

 (この子連れて帰れないかな?)

 「なあ、このスライム街に連れて帰ってもいいか?」

 「使役できるならいいと思うぞ。スキルは持ってるか?」

 「そんなスキルがあるのか。取ってみるよ。」

 そうして俺はステータスを開いた。


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 名前:レイ

 年齢:15歳

 性別:男

 種族:人族

 レベル:41

 魔力:1250/1250

 体力:6500/6500

 スキルポイント:3050

 スキル:魔法適正Lv1(最大値)、剣術Lv4、魔力制御Lv3、鑑定眼Lv1、獲得経験値増加Lv1(MAX)、限界突破Lv1(MAX)、疾走Lv2、度胸Lv3

 ユニークスキル:入れ替わりLv1


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 レベルが凄く上がっていた。それにスキルもいくつか増えていた。これも獲得経験値増加のおかげだろう。そうして俺は魔物使役術と魔物意思疎通のスキルをゲットた。使ったスキルポイントはそれぞれ300づつだ。まだレベルが低いので使役は相手の意思が必要になる。

 (こんな感じか。残りは宿に帰ったあとの方が良さそうだな。)

 「なぁ、お前一緒に来る気は無いか?」

 「キュー」

 「スライムが鳴いた!?」

 「ギランどうしたんだ?スライムは鳴かないのか?」

 「これまで泣くやつなんか見たことないぞ。」

 「そうなのか。お前凄いんだな。」

 「それでスライムからの返事は?」

 「良いみたいだぞ。俺の事気に入ってくれたみたいだ。」

 「それじゃぁ早く仲間にしてやれ。」

 「そうするよ。」

 俺はスキルを使いスライムを仲間にした。

 「名前をどうするか…。よし!ライムだ。」

 「お前まさかだがスライムだからライムか?さすがにそれは安直すぎるぞ。」

 「別にそれだけじゃない。こいつの色緑色で丸いだろ。見た時に果物のライムみたいだって思ったんだ。」

 「果物のライム?それはなんなんだ?」

 「知らないのか!それなら果物のライムのことは忘れてくれ。」

 「そうかわかった。」

 その後、俺達は狩ったゴブリンの素材を回収した。初め戦った2匹には魔石というものがあったそうだ。

 「なぁギラン、魔石ってなんだ?」

 「魔石って言うのは本来は魔力の密度の濃い場所で生成される魔力の結晶のことだ。今回みたいに体に埋まっているタイプは見たことは無いが俺は人為的なものだと思っている。」

 「人為的か…。ということは誰かがこの森で何かしてるのか。何が目的なんだ。」

 「多分明日の討伐対象のゴブリンロードも誰かの仕業だろうな。」

 「……。」

 「明日は本当に気をつけろよ。俺はこのことをギルドに報告する。」

 「頼んだ。」


 そうして俺達は洞窟を後にした。そして帰りは何事も無く街まで帰ることができた。


 「今日はお疲れさん。お前は今日は先に帰っとけ。もちろん報酬は明日渡す。」

 「絶対ちょろまかすなよ。俺結構働いたんだからな。」

 「もちろんだ。お前には特別ボーナスをやるよ。」

 「それはありがたい。」

 「それじゃあまた明日だな。まじで体調整えとけよ。今日暴れ回ったんだから。」

 「もちろんだ。」


 俺はその後宿に帰った。そして今日あったことを3人に話し、スライムについても認めて貰った。この話をした時フィーネはとても喜んでおり、ライムをずっとムニムニしていた。そしてこの名前についてギランと同じようなことを言われてしまった。

 みんながそれぞれ明日の準備をしだしたので俺は今日ゲットしたスキルポイントとと、ライムについて調べてみることにした。


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 「あのスライムが強奪されただと!強化型ゴブリンもいたのだろ?あれは生半可なやつじゃ倒せんはずだ。誰がやった。」

 「報告によるとあの2匹を殺ったのはナイトをやったやつと同じだそうです。」

 「またか。我の邪魔をしよって。それでロードはどうしているんだ。」

 「ロードはスライムを奪ったやつに復讐がしたいと言っています。」

 「お前今すぐロードのところに行き、この魔石を埋めてこい。このサイズがあればそう易々と負けることはないだろう。」

 「承知しました。」

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