いじめられた僕といじめる側に立った僕
@uguisu-FS
前編
僕はオタクである。さらに言えばアニメオタクだ。人一倍アニメを見るのが好きで、フィギュアやグッズを集めたりもしている。そんな僕が今日クラスメイトから「アニメとかゲームの話しかできないとか人生つまんなそう。」と笑われた。この時僕は反論できなかった。正直言って僕は明るい性格ではない。協調性もないしコミュ力もない。それを自覚しているから反論することができなかったのだ。「反論しようとした所で僕の味方になろうなんて人はきっといないだろう。ただ冷たい視線を浴びせられるだけなんだろう。」そうやって僕は無理であると決めつけその現実から逃げた。黙って笑われていればきっといつか終わるだろうと思いながら気にしていないふりをひたすら続けていた。その日の帰り道、頭の中に浮かんできたのは反論の内容だった。「こう言えば良かったんじゃないか。」「こう言えば全員何も言えないんじゃないか。」そんなことをひたすら頭に思い浮かべ、その度に結局それを言えない自分を恥ずかしいと感じた。家に帰れば自分の好きなことを好きなだけできる。学校であった嫌なこともアニメを見て忘れることができる。だから家にいる時間はとても楽しかった。でも、夜になって布団の中に入ると嫌でも考えてしまう。「明日学校に行けばまた今日みたいに皆から笑われるんじゃないか。またあの地獄の時間を過ごさなければいけないんじゃないか。」そんなことばかり浮かんでくる。親に迷惑をかけたくないと思いながらも今すぐに学校を辞めてしまいたいと考える自分がいた。そうして1日の幕が閉じた。
僕は普通な男子高校生である。友達も数人いて、勉強もスポーツも中の下ぐらいの成績だ。僕が自分を普通だと思えるのは同じクラスにいじめられているちょっと変わったオタクの人がいるからだ。友達がいなくて、誰かと話をしてもアニメのことばかり。そんな彼を僕は『変な人』としか認識していなかった。ある日のこと。クラスの中心的存在の人が彼に対して「人生つまんなそう。」と言った。取り巻きやそれに逆らうことのできないクラスメイト達は次々に「確かに~」や「ほんとだよね~」と言い出した。僕の友達も少し一緒になって笑っていた。僕はすぐにこれはいじめなんだと気づいた。でも僕は臆病だった。真っ先に頭に浮かんだ言葉が「周りに合わせなかったら自分がいじめられる側になってしまう。」だった。そこからの行動はシンプルだった。周りに合わせて笑いながら目立たないようにしていた。後々考えれば僕のしたことは主犯と同じぐらいのことだった。でも僕には勇気が無かった。ヒーローになって辛い生活を送るくらいならモブでいいから平和に過ごしたいと願っていた。オタクの彼は皆から罵詈雑言を浴びせられているのに平気そうな顔をしていた。それを見たとき少し罪悪感が薄れた。「傷ついていないなら大丈夫か。」そう考えてしまったのだ。帰り道、友達と別れた後にオタクの彼を見かけた。その時に僕が見たのは平気そうな顔なんかじゃなく、悔しくて涙を流しそうになっているような顔をしていた。僕は罪悪感で押し潰されそうになった。他人の人生より自分の人生の平和を選び、相手を苦しめたことを今になってようやく真に理解したのだ。夜、布団に入っても罪悪感で眠ることができなかった。そうして1日の幕が閉じた。
いじめられた僕といじめる側に立った僕 @uguisu-FS
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