序章:6 早朝の依頼
「出といて」
言うと、お師匠は席の後ろにある窓を開けた。
街を覆う霧は未だに濃いままだ。
「はい。探偵セディ」
主人が受話器を取った。
受付でなく、探偵に直通の電話は、馴染みの刑事からの依頼が常だ。我々にはまだ、そう呼べる存在は1人しかいないが。
「デニさんか」
どうやら、その1人からのようだ。
「師匠?その師匠に出ろと言われたんだよ。出た以上引き受けるのも俺たちだな」
「わん」
「じゃあ、それで。情報は師匠の
そう伝えて、主人は受話器を置いた。
「良かったですよね?」
「ええ。どうやら杞憂だったようね」
「何の事ですか?」
「ただのお節介よ」
3つの目を開き、見つめてくるお師匠。
全てが見え過ぎてしまうという、蒼く澄んだ目に、主人もわたしも未だにたじろいでしまう。
「あ。情報来たわよ・・・あら」
「どうしました?」
「あなたに譲らなきゃ良かったかも」
ぼやくお師匠が示したのは、壁に体をめり込ませた男の壮絶な姿だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます