ヤバい!ヤバい!ヤバい作品
門前払 勝無
第1話
「ヤバい!ヤバい!ヤバい作品」
凄い作品を書いちゃおうー。
俺はパない物語を思いついた。やはり天才だ。
まず母親と言う生き物について語ろう。
母親とはお腹を痛めて産んだ子供が運動会で走ってるだけで感動しちゃうのである。子供が皆の前で合唱するだけで泣いちゃうのである。自分の子供は天才だと思っている。母親とはそういう生き物なのである。
子供がどんな人生を歩んでも、我が子だけは特別扱いをするのである。
自分とかいう、いい加減な生き物とは…一万回の失敗をしても学ばない。それを意地になって失敗を選択するのである。平らな道を歩くときは歩きづらい靴を履く。例えば革靴で登山する。熱いモノを強がって食べて火傷する。いい女を目の前にして緊張してブスな女で妥協する。そして、その女に子供が出来てしまう。尚且つ、その女に捨てられる。養育費を払うためにパチンコ店に通う。
春くらいの頃であった。
別れた女に養育費を渡しに行くと小学生の我が子が玄関に出て来て「今度の日曜日にピアノの発表会があるから来て欲しい」と言ってきた。日曜日は良く行く飲み屋の女とドライブに行く予定だった。
行けたら行くよー。
俺は子供の頭を撫でて後ろに立っている女に茶封筒を渡してそそくさと立ち去ったー。
駅まで歩く間に、あの子はなんの曲を演奏するんだろう。どんな服を着ていけば良いんだろう。場所は何処だろう……もうピアノの発表会に行く気になっていた。
スーツを着た自分を鏡越しに見つめている。ほとんど作業服しか着たこと無いから違和感だらけである。
日曜日ー。
あの子はカノンを弾いていた。俺は隠れて泣いていた。
発表会が終わって子供に手を振って帰ろうとすると「誕生日プレゼントはニンテンドースイッチがいいからね」と言っていた。
そして帰り際にニンテンドースイッチを買っていた……。
誕生日ー。
子供が寝て久しぶりに家族三人で過ごして楽しかったが、帰り際に「実はあの子は貴男の子供じゃないの…当時浮気してた人の子なの…ずっと言えなくてごめんなさい」と女が言った。
俺は…他人の子供のピアノの発表会で号泣していたのか…そして誕生日はバカみたいにはしゃいで居たのか…。
…。
…。
…。
まぁいいか、感動したしな、誕生日も三人で過ごせて楽しかったしな…。
俺は一人でテレビを見ながらコーヒーを飲んだ。
来月から養育費は払わなくて良いのかな…でも、子供に会いたいな…いや、あの子は俺の子供じゃない。
でも…。
これが自分の人生ー。
刹那の幸福がたまに来る。それ以外は嵐の中を歩いている。たまに胸が苦しくなって煙草を咥えながら禁煙しようか悩む「助けて!」って叫んでいる自分を想像して苦笑いしながらコンビニでビール買って今にも消えそうな街灯の下を歩いてボロアパートに帰る。
部屋の電気を消して布団に潜り込むーそして目を瞑る。
そして目を瞑るー。
終だよ~ん。
ヤバい!ヤバい!ヤバい作品 門前払 勝無 @kaburemono
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