第2話 出会い

やばいすっごいイケメンじゃん。

子役の子かな?

綺麗な金髪に整った顔立ち、そしてスラッとした感じ。

やばいね!

うん、待てよ?ここにこの子が居るって事は……

「死神さん!!この子も死んじゃったの!?」


「いやいや、違うよ。まだ死んでないよ。肉体は生きてるけど魂だけ来ちゃったんだろうね」


「魂だけ来る?死神っち、ちなみにここはどこ?」

さっきから、自分のいる場所は真っ暗で何もない空間。

真っ暗なのに死神さんや少年は見える。


「死神っちって、いちを僕は死神!神なんだけどね・・・まぁいっか♪」

死神っちって呼び方気に入ったのかな?嬉しそうにしっぽをブンブンさせてる。

・・・あれ?死神っちにしっぽ?さっきまであったっけ?


「この場所は、あの世へ行く前に魂が集まる場所。君の世界の例だと、留置場みたいな場所だよ」


「留置場って!!言い方が嫌なんだけど」


「例えだよ。ここで魂を仮止めして、無罪の死んでない人は生き返る、有罪死んだ人は死神に連れられて刑務所あのよへ行く流れだよ」


「例えに悪意を感じるような~嫌がらせですか?」


「でも分かりやすかったでしょ?」


「まぁね!!」


「ふふ~ん♪」

死神っちニコニコしてて楽しそう。しっぽも楽しそう!!


「あの~いいですか?」


「おっと美少年、話の続きをどうぞ」


「僕はブラック帝国のピアノです。いちを皇帝です」


「ブラック帝国?」


そんな帝国あったっけ?


「彼は異世界人だよ」


「異世界・・だと!?またファンタジーな!!でもなんで異世界人が?」


「異世界の魂も君の世界の魂も、とりあえずここに集められるよ。今この場所にいる魂は約1000億位かな」


「1000億!この場所すごっ!?」


「あの・・・お兄ちゃん、お姉ちゃん、話を続けていい?」


少年は今にも泣き出しそうだ。


「ごめんごめん!いいよ」


「今死神のお姉ちゃんから、僕はまだ死んでないけど誤って来たって言われたんだ。でも僕・・生きる自信がない・・・」


「生きる自信がないって・・・えっ!?子供だよね?」


「ケンジ!ちょっと」


死神っちは、俺にひそひそ話を始めた。


「真面目に話すけど死神さん。誤って来たなら早く生き返らせてあげてよ。死ぬには早すぎるよ!!」


「そうなんだけど・・話を聞いて」

死神さん、なんでそんな苦しそうな顔を?


「何か事情がありそうだね」


「話を聞いてくれる?」

上目遣いをしてきた。嫌な予感がするんだけど・・


「説明したいんだろ?良いよ」


「ありがとう。ピアノは元々末っ子の王子だから、帝位に就く予定はなかったの。本来は兄か姉が帝位を継ぐはずだったんだけど、父親の急死によって帝位を巡る争いが起きてしまったの。その結果、ピアノ以外の家族は亡くなり急遽帝位に就くことになったけれどこの帝位は、9歳のビアノには余りにも過酷な帝位だったの・・・」


「過酷?」


「帝位を継いだと同時に、彼の祖父の行った領土拡大のツケと両親の豪遊のツケを背負う事になるの。まず帝位に就いた翌日、祖父が滅ぼしたブルー王国の王女サイザーが、亡き両親の仇を討つため、そして奪われた国を取り戻す為立ち上がったの。そこで彼が兄のように慕っていたライヤー将軍が、サイザー討伐に向かうんだけど・・・・失敗。ライヤーを含め多くの兵士を失うわ。唯一信頼していたライヤー将軍の死を知ったピアノは、失意のあまり倒れ今ここに」


「9歳児なのに人生ハードモード過ぎない?」


「・・・そう、まさにハードモード。私が戻したくない理由が9歳が背負うにはあまりにも辛い現実だからよ。この後ピアノは失意の中、幼いながらも国をなんとかしようとするんだけど・・・両親の豪遊のせいで財政はガタガタ、祖父の領土拡大のせいで周辺国は敵だらけ。兄と姉の帝位を巡る内戦のせいで、ボロボロ。それでもピアノは必死に頑張ったの・・・なんとかしたかったの・・・でも叶わなかった。外敵と各地の反乱・・・もうどうする事もできなかった。最後は、フラット河口で艦隊決戦を挑み帝国艦隊はサイザー達の前に壊滅。ピアノは入水し帝国は滅びたわ」


「・・・・」


あれおかしいな、目から水が。


「・・・ピアノはサイザー達に残虐皇帝と呼ばれたわ。拷問し苦しむ人の姿を見て楽しみ、贅沢の限りを尽くしたと・・私が断言するわ。ピアノは本当に優しい子。拷問なんてしない。ただただ国と国民を救いたかった。なんとかしたかった」


「・・・さっきピアノの言っていた俺が代わりに生きる?転生ってこと?」


「そういう事!お願い聞いてくれる?」


「いきなり言われてもなぁ・・」


少年を見ると、不安そうで今にも泣き出しそうだった。

うわぁ断れねぇ~。


「死神っち!まさかと思うけど・・謀った?」


「さぁなんの事か分からないなぁ~(棒)」

うわぁ~確信犯だよこれ。


「でもさ、俺以外にもっと適任者がいるだろ?そいつらの方が・・・」


「多分!!一番の適任者はケンジだよ。」


「えぇ~まじで・・・」


「あ・あの、お兄ちゃん!!・・・・死神のお姉ちゃんが、お兄ちゃんはヒーローだって教えてくれたよ。僕の代わりに国を救ってくれるって!!みんなを助けてくれるって!!」


おいおい9歳だろ?こんな小さい子供が、なんて悲しい目をしているんだ・・・こんな子にお願いされたら断れるわけないだろ。


「死神っち。この子は死んでないんだよな」


「そうだよ。死んでないよ」


「はぁ~・・・分かったよ。この子の代わりをやるよ」


「お兄ちゃんッ本当!!」

ぱぁ~と明るい表情になったピアノ・・・ああもう、やってやんよ。チクショウかわいいなぁ~。


「ただし!!国が安定したらピアノは戻って俺はあの世へ行く。俺は死人なんだからあの世へ行くべきだ。家族に会いたし。それでいいならいいよ」


「もちろんいいよ。それじゃあさっそく転生しようか!!いくよ~」


「ちょ待てよ!!まだ心の準備が出来てないよ。それに異世界転生だろ?チート能力の付与とかないの?」


「もうすでに持っている知識がチートだから大丈夫だよ。ピアノのいる世界はケンジのいた世界より文明は遅れているから活躍間違いなし。Vやねん」


「Vやねんって、やかましいわ!!」


「あ!!でも魔法はあるよ」


「魔法!!魔法ってそれすごく大事!!まだ他に言ってないこと―――――――――うわ~体が!!」


言葉の途中で俺は意識を失った・・・・


————お兄ちゃん。みんなをお願い・・・助けて。


・・・任せろ!!お前が幸せに暮らせるように俺がなんとかしてやんよ!!





——————




「陛下。報告いたします。ライヤー将軍が反乱軍討伐に失敗しました」

これはピアノの記憶か?


「なっ!ライヤーは無事か?」


「・・・・陛下大変申し上げにくいのですが、ライヤー准将は戦死されました」


「ば・・・ラ・ライヤー兄ちゃんが死んだ!!そんな・・嘘だ・・・うそ・だ・・はぁ・・はぁ・・息が出来ないーーーー苦しい」


バタッ


「誰か!陛下が!!急いで医者を」

深い悲しみが広がっていく。これはピアノの記憶?

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