第三十五話
「翔悟、翔悟、翔悟……」
俺は雨に打たれながら、翔悟を抱えた。
雨と混ざる涙。
きっと、これが正しいんだ……。
「ごめんよ、俺じゃなくて……」
ごめんよ、翔悟……俺が弱くて。
そのせいで、俺はお前を殺せなかった……。
ほんとは親友に殺されたかったなんてわかってる……。
サヨナラ……翔悟……。
「フフフ、ハハハ、優斗くん私、今最高に生きているって実感できてる♪」
そう彼女は笑顔で言った。
そっか、お前も良かったな。
そんなにお前のことを思っている人に殺されて……。
○
翔悟が死んでから一日が過ぎていった。
「やっと事情聴取終わったー」と俺は腕を伸ばした。
一応、結果的には一週間の謹慎という形で収まった。
「良かったね」
そう夜空さんは笑顔で言った。
葵さんが翔悟の腹部を刺した後、翔悟は倒れ救急車で運ばれている途中に命を経ったらしい。
それによって、その場にいた俺と葵さんは警察に連れて行かれ。
警察の話だと葵さんは捕まってしまったらしい。
結局、俺は何がしたかったんだ……。
俺はほんとに復讐できたのかな……。
そんな心残りがあるのだが……もう過去なんだ……。
「どうしたの? 優斗くん?」と俺の様子に気づいたか気にしてくれる夜空さん。
なんか、夜空さん……雰囲気が変わった気がする……。
「いや、夜空さんにとってさ、俺は翔悟に復讐できたのかなって……」
俺がそう言うとプっと夜空さんは笑い、その後。
「そんなのできたに決まってるじゃん。ありがとね、優斗くん」
そっか、よかった。
彼女の目に嘘はないように感じた。
それどころかとても嬉しそうだった。
やっぱり、夜空さんは強いな……。
自分は被害者のはずなのになんで、そんなに笑顔でいられるんだろうか。
「ねぇ、優斗くん?」
「ん?」
「前、一回ダメだったけど改めて言いたいことがあるの……」
そっか、告白か……。
「私と付き合ってください……」
次の瞬間、彼女はそう言いながら頭を下げた。
しかし、俺は即答で。
「俺こそ好きだ」
そう言った。
迷いはなかった。
実際のところ前々から夜空さんを考えるとムズムズしていた。
きっと、この感情は【好き】だからだ。
そして、玲はもう記憶が戻らないと聞いている。
玲の為の復讐が終わってしまった以上、もう彼女とは今日を最後にお別れした方が良さそうだ。
「やった♪」と夜空さんは天使のような笑顔で俺を見つめた。
そうだ、次に俺が守るべき人は夜空だ。
「最後にさちょっと、俺さ玲のところへ行ってくる……」
そう言うと俺は一人で玲のいる病院へ行き病室を開けた。
「玲……」
すると、寝ている玲と既に玲の両親がいた。
両親は俺に気づいたかこちらを向いて俺に抱きついて来た。
「え?」
「ありがとう、ありがとう……」
よほど、悔しかったのかそう玲の母親は泣きながら言った。
しかし、何故玲の両親は何故、犯人が翔悟ということを知っているんだ?
DNA検査か?
いや、そんなの出来るはずがない。
なら、何故?
でも、俺はその質問を聞くのをやめておいた。
それはこの全てが終わった空間でまた、厄介なことになったら困るからだ。
「ありがとう、優斗くん」と玲の父親は俺の肩をポンと叩いた。
「いえ……」
久しぶりに玲の父親と喋ったぁ。
やっぱり、イケメンだな……。
「突然だがやはり、娘のことは学校で広がってるか?」
「はい……そうですけど……」
周りでは玲のことを『ヤりマン』と呼ばれている。
「やはりか……」
玲の父親は残念そうな顔をした後に。
「一つ、優斗くんに伝えておきたいことがある……」
「はい……」
俺は覚悟した。
大体予想できているからだ。
「私たちは引っ越すことにしたんだ……」
やはりだ……。
周りからそう呼ばれているのに娘を学校に行かせることなんて出来るはずがない。
既に、玲には生きづらい教室と化している。
「やっぱり、そうですか……最後に玲と二人にしてもらえませんか……」
○
玲の両親が病室から去っていった後、俺は玲に近づいて手を握った。
その突如、俺の目からは大粒の涙が何度も何度もシーツに垂れる。
「玲……お、俺さ。玲のために復讐頑張ったよ……玲……ありがとう……だからさ、俺たち別れるか……」
きっと、これで正解なんだ。
もう、俺には夜空がいる。
玲……ほんとに今までありがとう……。
俺は玲をブロックして、病院を出た。
ありがとう、ありがとう、ありがとう……。
結局、俺は玲に何をしてあげたんだ……。
俺はしっかり玲にお別れできたかな……。
「ねぇ、夜空……」
「どうしたの?」と心配そうに言う夜空。
「俺ってさ玲に……」
俺がそう言いかけた途端、夜空は俺を強く抱きしめた。
「とりあえず、うちで話そ」
○
「俺は何もできなかった……あの時も結局……自分にはアレでよかったって言い聞かせて来た……けどよ……そんなので玲は喜ぶのかよ……」
俺がそう言うと夜空は次の瞬間……俺にキスをした。
「夜空……」
次は俺から舌を入れてキスをした。
「忘れられないなら、私だけを見ればいいんだよ。ほら、だからしよ」
俺はそのまま夜空を押してソファーに倒れた。
玲……ごめん……。
まだまだ、気になることがある。
あの日、誰がグループに動画を流していたのかだ。
俺が確認した時には既に、俺は夜空からグループ退会されていた。
それは、かなりグループが翔悟の件で荒れて親友として見ない方が良いとのことだ。
誰が、流していたんだ……。
○
「ゆ、優斗……行かないで……」
───────────────────────
私事ですが400000PV突破しました。
ありがとうございます。
そろそろ、終わりも近いですが最後まで読んでくれたら幸いです。
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