第二十三話 俺が復讐する理由
玲が突然倒れた……そう知らされて俺は土砂降りの中、傘も刺さずに玲がいる病院へ来た。
ハァハァ……。
大丈夫だ……きっと、命に別状はないはずだ。
玲の部屋はここか……。
しかし、玲の部屋から出てきた両親を見てそんな思いは打ち切られた。
「あの……玲は……」
俺の言葉なんて届かずに両親は暗い顔を並べながら去っていった。
「え……」
その様子に怖くなる俺。
ただの貧血とかそういうのじゃないのか……。
違うのか? なぁ!!
きっと、大丈夫だ……。
俺は拳を握り、勇気を振り絞って勢いよく扉を開けた。
「玲──ッ!!」
しかし、そこにはただ昏睡している玲と……。
「やっと来たか……優斗……」
そこには翔悟がいた。
このタイミングで一番会いたくない人だった。
「翔悟……玲は……」
「ん? 玲か?」と俺を馬鹿にするように言う翔悟。
なんなんだ、こいつ……今は喧嘩の続きなんてしている場合じゃない……。
「喧嘩してる場合じゃないんだよ!! 玲は……」
「記憶喪失だとよ……」
「え?」
記憶喪失……なんで……。
「なんか、とても大きなトラウマによって記憶が飛んだらしいぜ? さっきまで起きてたんだけどよ……また寝ちまったよ。それにしても、こいつの両親の泣き顔ときたら笑っちまうよな!!」と笑いながら言う翔悟。
記憶喪失……嘘だろ……。
俺はその場で両膝をつけた。
なんでだよ……なぁ、玲……。
自然と涙が垂れてきた。
でも、頑張って涙を堪えた。
さっきの両親といい嘘ではなさそうだ。
「一緒にキャンプ行くって約束したじゃん……旅行にも行こって……なぁ!!」
俺は何度も床を叩いた。
そして、俺は虚な目をして天井を見た。
なんでだよ……。
「そもそも、こいつがあんなことで壊れちまうとかよ……」
「……」
「無視かよ……まぁ、この動画見ればちょっとは話す気になるだろ?」
翔悟はそう言うと俺にスマホの画面を見せた。
「はぁ──ッ!!」
俺は目を大きく開かせた。
そこには……。
玲がキャンプの時の服装で誰かに泣きながら土下座をしている動画だった。
『お願いします……私は翔悟としたいんです……ヤらしてください……』と玲は声を震わせながら言っていた。
その姿はとても嫌がっていた。
なんで、玲……?
「ハァハァ……」
俺のどんどんと荒くなる一方だ。
心臓が焼けるように痛かった。
翔悟って……。
『ふふはは、それでいいんだよ? そんなにしたいかよ、このビッチがよ?』
『はい、私はビッチです……』と泣きながら言う玲。
そして、次の瞬間……画面に映ったのは……俺の親友の……。
「翔悟──ッ!!」
「ああ、そうだよ? やっと、しゃべったかよ。他にも色々とあるんだぜ?」と次に翔悟が俺に見せてきたのは玲と……。
その瞬間俺は嘔吐した。
「きも……」とドン引きの翔悟。
その動画は玲と翔悟がしている動画だった。
「なんでだよ……なんで、なんでだよ!!」
俺の言葉が部屋中に響き渡った。
「嘘だろ、なぁ!!」
「これを見ても嘘とでも言うのか? やっぱり、お前は馬鹿やろうだな!! いいか? 俺とこいつはな? セフレなんだよ……」
「嘘だろ……」
「ずっーと昔からな。お前がした時には既にこいつは処女じゃなかったんだよ?」
「ハハ……」
次の瞬間、堪えていた涙が一気に流れ落ちた。
やっぱりそうか……初めてだと思わなかったし……。
なんで、俺がこんな目に遭わなければならないんだよ……。
玲……玲。
俺の大事な人が親友のセフレだったなんて……。
そう思うともう、人生なんてどうでもいい。
俺との思い出がなくなった玲といても意味がないし、生きる気力がなくなった。
「なんで、なんで、なんでだよ、なんで玲にこんな酷いことするんだよ!!」
でも……俺は絶対に死なない。
いや、死ねない。
翔悟は笑いながら玲に近づいた。
「そんなん、一つしかねぇだろ? てめェから大切なものを全てなくす為に決まってんだろ? お前は俺から全てを奪っていったんだぞ? そのくらい自覚しろや」
そして、翔悟は昏睡状態の玲に熱くキスをした。
ぁあああああああああ!!
次の瞬間、言葉にできないほどの凄まじい気持ちが放たれた。
俺は立ち上がり翔悟の胸ぐらを掴み「てめぇ!」と怒鳴った。
病院は無音だった為、とても声が響き渡った。
こいつを今ここで殺す……。
そのまま、俺は拳を握り翔悟に殴りかかったが……。
「おいおい、殴っていいのか? ここで俺を殴っていいのか?」と小馬鹿にするように翔悟は言った。
そうだ……ここで殺してしまったら、ここで俺が翔悟に殴ったら明らかに俺が悪くなる。
「くそ……くそ、くそ、くそ……」と俺は翔悟の胸ぐらを離して悔しそうに言った。
そして、俺は翔悟を睨んだ。
殺してやる、殺してやる。
それは玲の為ではない。
俺の為に。
大切なものを奪われて俺の為に。
翔悟は俺の肩をポンと叩き。
「お前が俺に勝てるはずがない」
そう言って病室から出て行った。
その場で俺は両膝を再度つけた。
復讐……復讐してやる……。
絶対にあいつに復讐してやる。
そうだ、さっきの言葉にできないほどの気持ちは『復讐』……これだったのか……。
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ここで冒頭のシーンとリンクしました。
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