第十九話(玲視点)

 しばらく待たせてしまいすみません🙇‍♂️。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 私は友達を作るということはしなかった。

 それは、友達という者の良さがわからないからだ。

 なんで、友達を作る?

 作ると何があるの?

 全くわからなかった……。

 それは、今に始まったことではない。

 ずっーとずっーとだ。


○ 


 女子部屋に戻ると夜空ちゃんは虚な目をし涙を流しながらいた。

 その姿はまるで全てを失ってしまった者の様だった。

 私は急いで夜空ちゃんの元へ駆け寄った。


「大丈夫……大丈夫!?」と何度も声をかける私。


 しかし、夜空ちゃんはただ涙を流すだけで何も反応をしなかった。


 どうしたんだろ?

 翔悟がいきなり告白をしたからかな?


「夜空ちゃん? ……」


 次の瞬間、夜空ちゃんは「ハハハハッ」と奇妙に笑い出した。


 なんなんだろう……。

 どうしちゃったの? 夜空ちゃん……。

 せっかく、仲良くなった。

 私の友達が……どうしちゃったの?


「夜空ちゃん……夜空ちゃん……」と私は何度も彼女に声をかけた。


 しかし、彼女はただ笑いながらどこか苦しそうにしていた。


「ねぇねぇ、夜空ちゃん……」


 そう私は必死に声をかけた。


 それは、大切な優斗の友達だから自分も大切にしたい……別に友達でもなんでもない。

 ただ、優斗の為に友達としているだけの関係。

 そんなことを思ってしまう私はどこかおかしい。

 そんなことは分かっている。

 でも、別に彼女のことを好きにはなれなかった。

 それはきっと、彼女のことを嫉妬している自分がどこかにいるからだ。


「夜空ちゃ──」

「私……私……」


 ポロポロと彼女の目からは大粒の涙が大量に地面に垂れだした。


 よかった……話を聞けそうだ。


「夜空ちゃん?」

「私……何もできなかった……あの時、無理矢理キスをされたのに……別に不快感もなかった。ただ、とても気持ちが良かった……」と変なことを言い出す夜空ちゃん。


 一体どう言うこと?

 無理矢理キス?

 もしかして、翔悟が──?


 夜空ちゃんの言うことが理解できなかった。


「私ね……」


 私のことを察したのか、話しだす夜空ちゃん。


「うん……」と私は優しく返事をした。

「さっき、翔悟さんに……告白された……」


 やはり、そういうことかな。

 翔悟のいきなりの告白で少し驚いてるんだ……。


「その時に翔悟さんは私に──」


 次の瞬間、夜空ちゃんは地面に向かって嘔吐をした。


「夜空ちゃん!!」


 私は急いで、夜空ちゃんの背中を揺すった。


 そして、その時確信した。

 翔悟の告白は私が思っていたほど甘いモノではなかったと。


「うぇうぇ」と吐き続ける夜空ちゃん。


 しかし、私は優斗に助けを求めなかった。

 それは、夜空ちゃん自身がこんな姿を見られたら恥ずかしいに決まってる。

 少しでも別に友達でも何でもなくても夜空ちゃんの役に立ちたかった。


 一向に止まない夜空ちゃんの嘔吐。

 一向に止まない夜空ちゃんの涙。



 そして、夜空ちゃんが落ち着くと私は夜空ちゃんを落ち着かせる為にソファーに座らせた。


「それで……翔悟がどんなことをしたの──?」


 その言葉を聞いた瞬間に口を抑えて嘔吐しそうになる夜空ちゃん。


 私は夜空ちゃんの背中を揺すろうとしたが、それを夜空ちゃんは止めた。


「大丈夫……です……」


 よかった……。

 顔色はとても悪く、虚な目をしたままだけど吐き気は治ったみたいだ……。


 そして、夜空ちゃんは語り出した。


「私……翔悟さんに無理矢理キスをされた……でも、でも……」


 翔悟……最低だ……。


 そうは思った。

 でも、別に元々セフレだったからかそこまで強く思わなかった。


 涙を堪える夜空ちゃん。


「私、うれしかった。気持ちが良かったの……」

「え?」

「あの時は自分が成長した……あんなことされてもしっかり対抗できる様になった。そんなことを思っていたの。でも……それは違った……ほんとは、ただキスをされてうれしかっただけだった。それに気づいたら……私……私……」


 ポロポロと夜空ちゃんの目からは大粒の涙が流れた。


 その様子に私は夜空ちゃんを優しく包んだ。


「いいよ……私何とも思わないから」

「私は弱虫だ……あんな雰囲気でされたら、それは……嬉しくなっちゃうよ……そして、私は変態だ……結局誰でも良かったんだ。きっと、ただ私を満たしてくれる人がいるならそれで──」


 そんなことない!


「そんなことない」

「あるよ……」


 そんなことない!!


「ない」

「あるよ……だって、私……」


 そんなことない!!!


 次の瞬間、私は夜空ちゃんをビンタしていた。


「そんなことない。だって、夜空ちゃんはそんな気が弱い人じゃないもん……」


 別に夜空ちゃんのことを知っているわけでもない。

 でも、スラスラと言葉が出た。


「夜空ちゃんは、自分の苦手なものを克服しようとしていた。今日だって、ほんとは嫌だってことぐらいわかってた」


 あ……きっと、夜空ちゃんのことをずっと優斗を見るついでに見てたからかな……。

 

 気づけば、優斗をいつも見ていたけど夜空ちゃんを見る様になっていた日々。

 『男嫌い』そんなのは見て読み取れた。

 なのに頑張って克服しようとする彼女の姿……。


「だから、夜空ちゃんは強いんだよ……」


 そう言うと私の目からは涙が流れ出した。


「あれ?」


 どんなに手で擦っても流れ続ける涙。


「なんで、私が泣いてるんだろ……」

「玲さん……私……」

「玲でいいよ。私も夜空って呼ぶからさ……」

「玲……私……」

「ええ、翔悟に一発!! 入れましょ……」


 なんか、気づけた気がする。

 そうか……これが友達なんだ……。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る