第5話 魔術訓練

私が異世界に来て、二度目の季節が巡っていく。

厳しい冬から、生命が活動的になる春になり、私も1歳半になった。

平和な日々が続いていた。


大体平均して一月に1回、商人がやって来ては、食料・日用品とおばぁ印の特製薬を交換していく。

それ以外に特に予定された客人はおらず、また、いつかの警護団のような招かれざる客人も無かった。


春になって家周辺の雪が溶けて、寒さが緩むと、私も外に出て、再び地面でお絵描きをするようになった。

地面に小枝で絵を描くのは、なんというか、プリミティブな喜びを感じることができて非常に心地よかった。

自分が世界に引っ掻き傷を与えられる喜び、とでも言うのだろうか。

『世界になんらかの影響を与えることが出来た』と言う実感は、おそらく人間の根源的な喜びなのだろうと思う。

――そういえば、元の世界でも小さい頃はコンクリートに色付きチョークで下手クソな絵を描いていたっけなぁ……。


そして、やはり、紙にペンで絵を描こうとした時とは全く異なり、呼吸が浅くなったり、心臓が早くなったり、小枝を取り落としたり、ということは起きなかった。

どうやら私のトラウマは紙とペンにのみ反応するようだった。

――不思議なことだなぁ……。あれ、でも文字は書けたのか……。


また、徐々に歩ける距離が伸びたことから、魔女と一緒に森の中へと出かけることもあった。

目的は薬草採集だったり、食料確保だったりと色々だったが、魔女は専門分野である薬草や植物苔、キノコ、カビなどについて解説をしてくれることもあって、とても勉強になった。

特に、食べられるものと食べられないものの区別はとても難しく、「これは食べられる、これは似てるけど食べられない、これは本来は食べられるけど近くにこの植物があるから変質して食べられない、これはとてもそっくりな魔物で引っこ抜こうとすると絞められる」などなど、すぐには判別出来ないようなものが多かった。


また森の中で、大きいネズミのような動物や、炎を吐く猪のような魔獣に出会うこともあり、そういう時、魔女は嬉々として魔法を使って捕まえてくれた。

炎を出して相手を弱らせたり、土塁を急に生やして空中に飛ばしたり、植物の蔦を成長させて捕まえたりと、魔女の魔法はとても鮮やかで、見ている私もとても楽しかった。

もっとも「おばぁ! 私もまほーをやってみたい!」と私は言ってみたものの「ふん、まったく。興味を持つのは良いが、今はまだ早いねぇ」と言われてしまったのだが。


そして、森の中で動物や魔獣を捕まえた時は、ご馳走として晩ご飯にその肉が出てくるのである。

森の中で捕まえた動物や魔獣の肉は、商人から買った肉よりも野性味が強く、癖のある味ではあったが、元の世界のジビエと同じと思うと、幾分有り難みが増すような気がした。

……まぁ味に変化はないんだけどさ。



森の中の散策はとても楽しかった。

それだけに、夢中になって散策をしていると、帰り道に疲れ果ててしまうこともあった。

そんなときは魔女に「あーもう、まったく、どんだけ阿呆なんじゃ、トーカは! 帰るための体力を残しておけといつも言っているだろうに!」と悪態をつかれつつ背負われることになるので、注意が必要であった。


 ***


そうして爽やかな夏がやってきた。

この頃になると、私もかなり流暢に喋れるようになってきた。

流暢に喋れるようになると、どうやら色んな人と喋る欲が湧いてくるものである。

しかし、そうなると魔女以外の選択肢はこの家では1つしか無い。

そう、例の行商人である。


「こんにちは、おにーさん。お名前はなんて言うの?」

私は大きな木箱や麻袋をおばぁハウスに運び入れている商人に聞いてみた。

「お、トーカちゃん。こんにちは。俺はダミアン・シュルツって言うんだ」

「……シュルツ……? あれ、おばぁと同じじゃないんだ」

「そうだねぇ。俺はおばぁの姪の息子だから、苗字が違うんだ。まっ、遠い親戚ってことかな」

「まったく! あんたは口ばかり動かしてないで、さっさとドンドン運び入れなさいよ!」

おばぁの叱責が飛んできた。

――なるほど……、そう言う関係か。ってかおばぁの孫世代になるのか……。一体おばぁは何歳になるんだ……。


「おばぁの子供、って訳じゃないんだね!」

「そうだね。このおばぁには子供はいないのさ。そもそも夫もいたことがない行き遅れババァだからな!」

ダミアンは快活に「はっはっはっ」と笑いながら言った。

――いやいや……、そんな笑うところでは無いような……。


「おい、あんた! あーもう、まったく、なんて余計なことを言ってくれるんじゃ!」

おばぁの叱責が再度飛んできた。

「おばぁの子供、いないの? 私は? あれ……、おばぁの子供じゃないの……?」

私はちょうど良い機会と思って、話を振り向ける。

もちろん私は生まれてからの記憶を持っているので、おばぁに拾われたこと自体は知っている。

それとは別に前から聞きたいことがあったのだ。


「……、ま、まぁ隠すようなことじゃないんだが……」

と言って、おばぁは旅先で私を拾ったことを説明してくれた。

巨大な木の根本で拾ったこと、それから山羊乳を与えつつ、3週間くらいかけてここまで戻ってきたこと、それからずっと親代わりに育てていること。

概ね私の認識通りだった。

おばぁもダミアンもどこか気まずいのか、神妙な顔をしていたが『大丈夫だよ、全て知っていることだから!』と言ってあげる訳にもいかず、一応のフォローを試みる。

「……、ってことはおばぁが私のママってことだね! おばぁ大好きだよ!」

私は精一杯子供らしく、安直な結論と素直な感想を述べておいた。

おばぁは「ふんっ!」と鼻を鳴らしていたが、口角が上がっているのを見逃さなかった。


私は聞きたいことを聞くために、そのまま話を続ける。

「あれ、それじゃ、どうして私は捨てられたの? 肌も髪も白いから?」

「……、多分そうじゃ。この辺りで大多数を占めるティア教では、天神てんじんのワヒシュタが真っ白い姿をしていると伝えられておる。だから、肌も髪も白い子が生まれると、ワヒシュタ様の生まれ変わりとか、神の使徒とか神子みことか言われて、特別扱いされることが多いんじゃ」

「ふむふむ……」

「私が見つけたのは、御神木って呼ばれる超巨大な魔木の下だったから、まぁおおかた神の使徒とか言われて、神へお返しします、みたいな感じで捨てられたんじゃろうな……」


――なるほど。確かに村で聞いた話と一致するな……。で、ここからが本題なんだけど……。

「ええっと……、私って……もしかして……神の使徒なの……かな……?」

「んなわけあるか! まったく、そんなん信じる方がアホじゃ」


――ええ……、違うのか……。そうか……。

私は眉をしかめて落胆した。

それを読み取ったおばぁが、珍しく素直にフォローに回った。

「……わたしは色んな地方を旅して来たけどのう、どの国でも、どんな地域でも、どんな村でも、一定の低い確率で白い子は生まれるんじゃ。その地域の肌の色とか髪の色とは関係無く、もちろん信じておる神様とも関係無く、じゃ。基本的には普通の子となーんも変わらん。ちょっと病弱なことはあるかもしれんが、それだけじゃ。神の子でもなんでもないわ。もし神の子なら、世界中に大量に神の子が生まれていることになるわい」


私は肩を落として残念そうに下を向いた。

――ええ……。要するにこれ、ただのアルビノってことじゃん……。……、まぁ薄っすらとそうかなって思っていたけどさ……。でも折角の異世界転生なんだから、少しくらい特殊能力というかチートスキルというか、そんなんを期待したって良くない……?

と不平を心の中で述べてみるも、それを聞き届けてくれる神はいないらしかった。


「そうなのですね……」

「そうさ。この近くのアイリス市でもティア教が大多数じゃが、あそこは交易都市じゃからな、白い子だからといって神の子として追放されることは無いから安心せい。色んな国から色んな肌と色んな髪の人が来とるからのう、そんな変な目で見られることも無いじゃろ」

――私が心配しているのはそういうことでは無いんだけれど……。

「なるほど……、わかりました」

私は残念そうな感情を隠さずに言ってしまった。


「ま、俺からしちゃー、トーカちゃん、まだ2歳になってないんでしょ? うちの4歳の子と比べても話もしっかりしてるし、文字も書けるし、絵も上手いし、十分『神の子』みたいに思うけどなー」

ダミアンまで落胆しまくっている私のフォローに回ってくれた。

「しかも、おばぁが書いた本まで読んでるんでしょ? 俺だって良くわかんないのに、本当にすごいよねー」

「確かにのう……、トーカは本当に頭が良いからのう……」

「そうだよ。おばぁ、トーカちゃんを弟子にすれば?」

「はぁ……?」

おばぁは突然のダミアンの提案に驚いたようだった。

「魔法を教えてくれるんですか!?」

私は以前『まだ早い』と言われたことを思い出したが、折角なので、もう一度頼んでみることにした。


「あーもう! ……だからのう、魔術師に神童無し、って言うのが魔術師の常識でのう……、あ……、でもそうか、トーカは既に魔力を受けてるし……、私がいれば問題は起きない……のう……?」

おばぁは後半からブツブツと独り言を言い始めた。

「たぶん魔力耐性もついたし……、排出も……、材料はあるし……、まぁ、やってみるかのう……」


私はどこかに自我が飛んでいってしまったおばぁを呼び寄せた。

「おばぁ……?」

「あぁ……、すまんのう。よしわかった。明日からトーカに魔法を教えよう。その代わり、ビシビシ厳しくするから、覚悟しなさいよ」

「良いんですか! ありがとうございます!!」

「良かったねぇ、トーカちゃん……」

ダミアンも心なしか喜んでいるようだった。


翌日から、おばぁによる魔法の修行が始まった。


 ***


魔法は原則、5種類の魔法の素=マナの組み合わせで作られている。

すなわち、火、水、土、草、風のマナである。

ほとんど全ての魔法は、この5種類のマナの組み合わせによって作られる。


そして、魔法を使うには大きく分けて2つのプロセスがある。

第一段階がインプット、つまりマナの分離・貯蔵で、第二段階がアウトプット、つまりマナの混合・放出である。


まず第一段階は、空気中にある5種類のマナをそれぞれ分離して、自分の体内に貯蔵する。

このマナの貯蔵作業は、魔術師なら無意識的に行っており、訓練を積んで慣れれば簡単なのだそうだが、この分離という作業が意外とクセモノで、この正確性によって、第二段階のスピードや正確性、魔法の規模の大きさが左右されるとのことだった。

「ま、そーじゃのう、自分の部屋がぐちゃっとしていると、そこから目的のものを取り出すのは大変じゃろう。常に整理整頓されていれば、素早く正確に無駄なく目的のものを取り出せるのも道理であろう」

というのがおばぁの比喩である。


そして第二段階で、その体内に貯蔵したマナを必要量だけ取り出して混合させた上で、適宜性質を変成させて放出すれば、それが魔法となる。

例えば火の玉を放つ場合は、火のマナをそのまま魔法として放出すれば良いし、霧を発生させたい場合は、水と火と風を6対3対1くらいで混合して、性質をうまい具合に変成させた上で放出すれば良い。

また、例えば、おばぁの得意な治癒魔術は、水と草を2対8くらいで組み合わせた上で、病気や怪我の部位によって適宜性質を変化させて使用しているとのことである。

ちなみに治癒魔術と言っても、原則的には自然治癒力を高めるに過ぎないらしいが。


従って、火の玉を放とうと思って火のマナを取り出す際に、分離・貯蔵が上手くいっておらず、一緒に水のマナまでくっついてきてしまうと、魔法の結果が変わってしまうし、火の玉くらいなら問題ないが、もっと繊細な魔法の場合は下手をしたら魔法が発動しないまま失敗してしまうことにもなりかねない。


そこでまず私は、魔術師新入りとして、マナを1種類ずつ体内に取り込み、それを1種類ずつ放つ練習をすることになった。

具体的には、おばぁの手を右手で掴み、おばぁから直接各種類のマナを流し込んでもらって、左手で握った杖を通してそのマナを魔法として放つ、という練習である。


ちなみにこの杖はおばぁに貰ったものだ。

簡素な木の枝のような見た目……、というか木の枝だった。

本当に、おばぁがその辺で拾ってきた、手頃なサイズ感のただの木の枝である。

おばぁ曰く、マナが通りやすい魔木の枝、とのことだったが、まぁ要するにただの木の枝である。

杖は別に無くても良いし、慣れれば杖無しで魔法を自由自在に放てるが、正確に魔法を放つにはガイドとしてマナが通る道があった方がやりやすいから、魔術師は杖を持っていることが多い、というのがおばぁの言であった。

また、魔石が嵌め込まれた高級品になると、魔法を放つ時のマナ効率が良くなったりもするそうだ。

要するに杖とは、魔法を放つ時の『照準』兼『サポーター』の役割を果たすものらしい。


といった説明を受けた上で、まずは手始めに玄関先におばぁと一緒に2人で並んで立って、左手の杖を森の方向へと向けた。

最初のレッスンは火のマナだった。

「これが火のマナじゃ」

そう言うと、おばぁは私の右手に向かって少しだけ力を込めた。


すると突然、激しい車酔いのような症状が現れた。

胃液が逆流するような感覚と平衡感覚が薄れる感覚。

そして身体中を何か変な液体が流れている感覚。

――これ、どこかで……。

と思ったが、すぐに思い出した。

以前警護団がおばぁの家に来たときに、私がおばぁの魔法を込めた手を誤って触った時の感覚だった。


――まぁ、当時よりは全然ラクではあるけど……。

私はそう思ったが、思わずしゃがみ込んでしまった。

「まったく、根性ないねぇ……。とりあえず、左手を出して、今流れてきたものを放ってみな」

そう言われるままに、私はしゃがみ込んだまま、左手の杖を森の方に向けて、身体中を巡る『何か』を左手に集中させた。

すると、マッチくらいの火が左手の杖からぽんと飛び出て、そのまま地面に落ちた。

「ふん、まぁ最初はそんなもんだろう」

左手から火が出たことで少しだけ気持ち悪さが無くなったが、それでも胃のむかつきは治まらなかった。

私はもう一発と思って杖を森の方に向けて、身体中を巡るマナに集中をしたが、二度目は出なかった。


「まったく……、無理しなさんな。小さい子はマナを溜め込みやすくて貯蔵可能量が小さいし、マナの放出も難しいから、どうしてもマナ酔いしやすいんじゃ。ほれ、マナ排出薬だ、飲みなさい」

そういうと、おばぁは小瓶を渡してきた。

案の定と言うか、予想通りというか、めちゃめちゃ苦かった。

警護団のときに飲まされたものと同じものだと思う。


しかし飲むと身体中がスッキリした気分になった。

唐突にトイレに行きたくなった。

その旨を告げて、森の中のいつもの厠に行くと、緑色のゼリーみたいなブヨブヨしたものが便として排出された。

いつもの便の匂いではなく、下水道のような腐った匂いがした。

――なるほど、これが排出薬で排出されたマナなのか……。

警護団がきたときに私の下半身にまとわりついていた緑色の臭い物体の正体が、1年越しで判明した瞬間だった。


こうしておばぁとのマナの貯蔵と放出の訓練が進んでいった。

最初の頃は、おばぁにマナを注いでもらうだけで、非常に気持ち悪くなってしまっていた。

しかし何度も何度も毎日のようにおばぁからマナを注いでもらううちに、徐々に気持ち悪さに慣れていった。

気持ち悪いには気持ち悪いのであるが、我慢出来るようになった。

おばぁ曰く、毎日のようにマナを送り込まれていたため、体内にマナを貯めておける量が増えたんだろう、とのことだった。

一方、魔法として放出できる量も徐々に増えていった。

火のマナを使ったものだと、最初のマッチサイズからライターサイズになり、野球ボールくらいの大きさの火球を生み出せるようになっていった。


気持ち悪さは薄れていっても、また、魔法としての放出量が増えていっても、おばぁからは練習の度に必ずマナ排出薬を手渡されていた。

私としては、毎日のように気味の悪い緑色のブヨブヨした物体を尻から排出するのは、何だか人間を辞めてしまったような気がしたため、あまり飲みたいものでは無かった。

しかし、一度だけ意図的に飲まなかった時、おばぁから「あーもう! まったく! あんたはどんだけ阿呆なんじゃ!」と本気モードでキレられたため、それからは手渡される度に必ず飲むようにしている。


魔法の練習は私が飽きないように、2週間ごとにマナの種類を変えることになった。

マナの貯蔵と放出については、どのマナも同じ原理で可能であるため、バランス良く練習を積み重ねていく方が良い、というのがおばぁの持論なのだそうだ。


 ***


秋がやってきて、私も2歳になった。

魔術師見習いとしての訓練も順調に進んでおり、この頃にようやく火、水、土、草、風の5種類のマナ全てについて、2週間ずつの訓練を終えることが出来た。

さらに三度目の冬を迎えた。

魔術師見習いの訓練も各マナ2週目の訓練に突入し、毎日のように雪に向かって火の玉を放ち、水球を放ち、低い土壁を作り出し、雪の下の雑草を成長させ、冷たい風を吹かせていた。

そうして、雪が段々と溶けていく頃にはそれぞれのマナについて、2週間ずつの訓練が終わることになった。

こうして順繰りに各種類のマナをおばぁから直接注がれ続けるうちに、それぞれのマナについて微妙な差異を感じ取ることが出来るようになっていった。

皮膚の表面で感じるわずかな手触りの違い、体内を循環するときに僅かに知覚できる感覚的な色彩感や滑らかさ・ざらつきを具体的に感じ取ることができるようになり、徐々に徐々にマナを自分のモノにすることが出来たと思う。


私は5種類のマナの中でも、土のマナが一番扱いやすかったと感じた。

一発で杖の先の地面に小さな土塁を形成することができ、おばぁにも感心されたほどである。

またマナ排出薬を飲んでも、あまり緑色のブヨブヨは排出されず、ほとんどが魔法として放出されたのだと推測された。

――それもこれも、小枝で土を引っ掻いて、毎日のように絵を描いているからか……?

と私は思った。


そうして3週目の訓練に入り、春を実感するようになった頃、例の行商人であるダミアンがやってきた。

「おーい! おばぁー、いるー?」

いつもの呼びかけで、おばぁが玄関ドアを開ける。

すると、いつものように大荷物を玄関先に置いているダミアンの他に、客人がいた。

20代半ばくらいで、セミロングの赤毛、目尻の吊り上がった瞳に象徴される気の強そうな顔立ちの女性と、その女性に抱きかかえられた4〜5歳くらいの小さな男の子だった。

その男の子は見るからに体調が悪そうで、顔色は青白く、手足の指先が内出血しているような黒緑色に変色していた。


おばぁは、ダミアンの他に謎の親子がいるのを視認し、その男の子の体調が悪そうなのを確認すると、唐突に叫んだ。

「帰れー!!」

『ダスン』と音を響かせておばぁは玄関ドアを閉めた。

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