四月一日(わたぬき) 真実(まさみ)は嘘つきである

 私の幼馴染、四月一日わたぬき 真実まさみは嘘つきだ。

 そのせいで、高校でも友達が少ない。


 ほら、今日も。

 突拍子もない事を言って、先生に怒られている。


「四月一日! 授業中に寝るんじゃない!」

「ん~……。だって先生~。俺昨日、命がけでドラゴン倒してきたんですよ~?」


 誰が信じるというんだ。

 大方、ゲームのやりすぎで徹夜でもしたんだろう、と思われたって仕方がない。


「バカモン! 夢と現実をごっちゃにするんじゃない!」


 先生が怒鳴ると、教室がざわつきだす。


『本当、いい加減にしてほしいよね~』

『やる気ねぇんだったら、学校来るなって!』


 やる気が感じられない真実の言い訳に、クラスメイトが陰口を叩く。

 まぁ、そうなるよね。当たり前だよ。

 私だってそうだもん。いつもくだらない言い訳ばっかりで。

 遊ぶ約束だって、何度ドタキャンされたか分かんない。


――だけど、このクラスで私だけが知っている。

 真実が、本当のことを言っているって。


 あれは一週間前。それこそ四月の一日、エイプリルフール。

 深夜零時頃、シャープペンの芯を切らしてしまって、コンビニへ行った時だった。


「うぅ~、寒っ」


 春といっても、まだ寒い。適当な上着を羽織っているとはいえ、ほぼ部屋着のままで出たのはまずかったかな、って思っていたら――。


 ぼたっ、ぼたぼたっ……。


 上から生暖かいものが降ってきた。

 雨――? でも、星が出てる……。


 ふ、と見上げると――今にも私を飲み込もうとしている大きな口。


「――え?」


 何なの? 何が起こっているの?

 夢なの? それとも――。


 頭が混乱して、その場を動くことさえできなかった。

 あ、食べられちゃう?

 そう理解した時には、遅かったんだ。


 その時!


「ヴォオォオォ!」


 丸のみにしようとしたが、くさい息を吐きながら口を上げた。

 よくわからないけど、逃げられる! そう思っても、腰が抜けて足が動かない……。


「何してんだよ! 早く逃げろ!」


 聞き覚えのある声が、逃げるように促すけど――。


「無理! 腰が抜けて……」


 言葉に反応して、声の主は私を抱えだしてくれた。

 顔を見ると、真実! でも、なんか感じが違う――。

 それに、私を食べようとした奴を横目で見ると……。


「何、あれ? 大きい、トカゲ?」

「ドラゴンだ」


 よく見たら、喉元から血が出てる。

 真実の右手には、血の付いた剣。


「待ってろ、すぐ片づける」


 そう言って、真実はあっという間にドラゴン? をやっつけたのだった。


「大丈夫か? びっくりしたろ?」

 そう言って色々説明してくれたけど、他の次元とつながってしまったとか何とからしい。

 よくわからないけど、いずれ理解できるんだろうなって思った。


「まったく、勇者ごっこもいい加減にしておけよ!」

 先生が呆れたように言う。

「いや俺、勇者なんかじゃないっす。ただの一般人」

 真実はそう言って否定するけど――嘘つき。


 あの日から。四月一日 真実は勇者だって知ったんだ。

 少なくとも、私の中では――。


【終?】

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