スケアクロウに憧れて

ごぼうのobjet

第1話 Ladybird girl

 なるようにしかならない。

そんな風に生きてきた。

だがしかし、こんなことになるとは思っていなかったな。

どうしてこうなった、私…



 時は3月の終わり。

今日は大学の卒業式。

その後、ホテルで謝恩会。

さらにその後、サークルの追い出しコンパで大衆居酒屋。

卒業という言葉から感じる物悲しさとは無縁な賑やかな時を過ごしている。


「光!今日で最後だよ!楽しむぞ!」


岸田沙織が私に話しかけてくる。

彼女はこれ以上ないくらいに楽しんでいた。

コミュ力おばけの沙織の周りには、同級生や後輩が群がり大騒ぎだ。


「これでも楽しんでるよ〜、私。」


私は、そんな喧騒を眺めて楽しんでいた。

川野辺光かわのべひかりとは、こういう人間なのだ。

自ら前に出てはしゃぐタイプではない。

皆が楽しむ様を眺めてるのが好きだ。

今日で最後ということもあってか、後輩のテンションがやけに高い。

そんな日は、見てる方にも特に楽しい夜だ。


 時が経つに連れて、後輩たちのテンションはますますおかしくなっていった。


「卒業しないでくださいよ〜!」

「寂しいですよ〜!」


泣きながら叫ぶ子まで現れだした。

やれやれと思いつつも、愛しい後輩だとも感じる。

そんなことを考えてた私の側に、1人の後輩がやって来た。


「どうして卒業するんですかー⁉︎」


あはは。

また言ってるよ。


そして、彼女はこう言った。


「私、先輩のこと好きなんですよ!」

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