開拓村のダイスゲーム ~欠けた開拓地のそこそこ平和な日常~

海原くらら

夕食後の食堂にて。

 6は出ませんように、6は出ませんように……。

 それっ!


 よし、5だ!

 これで21ですね。自分はここで止めます!


 ああっ、こんばんは。

 気づきませんでしたよ。いつからそこにいたんですか?

 今さっき? 声が聞こえてきた? あー、うるさくしてたらすみません。


 見ての通り、ダイスゲームをやってるところでした。

 自分たち兵士の間で流行はやってましてね。

 そうそう。あなたの作った六面ダイスを使わせてもらっていますよ。

 改めて、作ってもらってありがとうございます。


 今やっているゲームは「21」ですね。

 知ってます?


 あら、知らない。

 それじゃ、せっかくですしお教えしましょう。

 あー。確かにゲーム中ですが、自分の手番はしばらく回ってこないので大丈夫ですよ。

 今回は最初に21になりましたからね。えへへ。


 このゲーム、基本はダイスを何回か転がして、出た目の合計を「21」に近づけていくというものです。

 21が一番強くて、次に強いのが20、その次が19、と続いていきます。

 ただし、22以上なら無条件で負けですね。


 参加人数はとくに決まってません。何人でもいけると思いますよ。

 多すぎるとワンゲームにかかる時間が長くなりますが。


 最初にまずゲームの親を決め、その人が最初にダイスを振ります。

 そして、ダイスの出た目の数だけチップを出します。

 自分らは木製のチップコインを使ってますね。木の枝を輪切りにして作ったやつです。

 親がチップを出したら、親の隣の人がダイスを振り、出た目の数のチップを出して、その隣の人がダイスを、と繰り返していきます。

 そうやって参加者が全員がダイスを振るんです。三周するまで。


 四周目以降も続けるのですが、自分の番が回ってきたときに出目の合計が十分だと思うならダイスを振るのを止めることもできます。

 ただし、一度止めたらそのゲームの決着がつくまでダイスを振れません。

 合計19になったからダイスを振るのを止めたけど、他の人が20になったから21を狙ってもう一回振る、みたいなのはできないってことですね。

 また、出目の合計が22以上になっても、それ以上ダイスを振ることはできません。


 全員がダイスを振るのを止めたら、出した目の合計数で勝負です。

 で、勝った人が決まったら、その人が場にあるチップをすべて得られます。


 ダイスの出目の合計が同点なら?

 これはいくつかルールがあります。事前に決めておくといいでしょう。


 よくあるのは、ダイスを振った回数が多いほうの勝ち。

 たとえば、ダイスを四回振って5・5・5・5の合計20と、六回振って4・4・3・3・3・3の合計20なら、六回振ったほうの勝ちです。

 ダイスを振った回数も同じなら? 別の決め方になりますね。


 同点勝利として複数の勝利者が場にあるチップを均等に分け合う。端数が出たら、その分のチップは別に分けておいて、次のゲームの勝利者が取る。

 あるいは引き分けとして、場にあるチップをいったん集めて残しておく。この場合、残したチップは次のゲームの勝利者がすべていただく。

 他には、同点の人でダイスを振りあうサドンデスってのもあります。これは数字の大きい目を出した人が勝ちです。お互い同じ目を出したら、決着がつくまで何回でも振り直し。


 ちなみにこの場では、最後にダイスを振った人が勝ちとしています。

 これだと振った回数が多いほうが勝ちのルールに近いですし、速く次のゲームに行けるし、途中で終わっても後から清算する必要がないですから。


 そうやって勝者が決まり、チップが移動するまでがワンゲーム。

 次のゲームは、最初にダイスを振る親が隣の人に移ります

 これを参加者が一周するまで繰り返して、チップを一番多く持っているのが最終的な勝利者、ですね。


 これが基本ルールです。

 他にも「ハンド」とか「やく」と呼ばれるものがありますが、それは慣れてからで。


 え? 教えてほしい?

 興味しんしんですね。こういうの、お好きです?


 このゲームでの「役」とは、合計21になる特別な出目の組み合わせです。

 役ありの21は、役なしの21よりも強い扱いになります。


 役のひとつは「ダブル」。ダイスを六回振ったとき、二種類の出目が三回ずつ出て合計21になるものです。


 1・1・1・6・6・6で合計21。1-6のダブルとも言います。

 2・2・2・5・5・5の合計21。これは2-5のダブル。

 3・3・3・4・4・4でも合計21で3-4のダブルですね。


 ちなみに、目を出した順番は関係ありません。

 6・6・6・1・1・1でも、6・1・1・6・6・1でも、最終的に二種類の数字が三回ずつ出れば「ダブル」扱いです。


 そして、1から6までひとつずつの合計21だと「ストレート」という役になります。

 これも目を出した順番は関係ありませんね。

 1・2・3・4・5・6でも、5・4・1・3・6・2でも「ストレート」です。


 複数の人が「役」を出した場合、「ストレート」が最も強い扱いです。「ダブル」同士では、役の中にある数字が大きいほうが強いですね。

 1-6と、3-4の「ダブル」同士では、一番数字の大きい6が含まれている1-6のほうが強いです。


 さて、説明はここまで。

 どうです? 「21」、あなたもやってみます?


 えっ。

 もしダイスを振って、1回目から21回目まで全部1が出たら? なにかの「役」に?


 いやいやいや。

 21回連続で同じ目とか、出るわけないじゃないですか。やだなぁもう。

 10回連続だって見たことないですよ?

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