第3話 医師の見解
「う〜ん、この感じですと一部だけ記憶がある記憶喪失、といったところでしょうかね?」
リュドヴィックさんに連れて来られたのは、白レンガ造りの綺麗だけど小さな病院だった。
『前世の私』の世界とは全く違う受付方法で理解が出来ず、結局リュドヴィックさんに手続きやらやってもらって、その上で様々な検査を受けた私に下された診断が『記憶喪失』だった。
本当は『転生』なんだけど信じてもらえるとは思えなくて、答えられる範囲での自分のことを話しただけなんだけど。
どうやら、私はこの世界の事を知らなすぎたみたい。
だって!
事前にゲームの情報なんて入れてたら、初見プレイが楽しめないじゃない!?
心の中で言い訳しつつ、悪いと思いながらもお医者さんの話を適当に聞く私。結局付き添い人になってしまったリュドヴィックさんは、対照的に真剣な表情で話を聞いていた。
真剣な顔もイケてるなぁ~男前すぎない?
呑気な私を差し置いて、お医者さんとリュドヴィックさんは話を続けていく。ちょっと待って……あんまり大事にしないで!?
「自分の名前と職業はわかるのに、それ以外の知識がないと言うのは相当なことかと思います」
「そうか……」
「リュドヴィック殿、でしたね? 彼の身体にとくに異常ありませんので……これは一度、神官様に観て頂いた方がよろしいかと」
え? 神官様? あれだよね? 神職だっけ? そういう職業の事だよね?
戸惑う私を置いてきぼりにして二人はどんどん話を進めていくものだから、私は慌てて間に入った。
「ちょ、ちょっと待って下さい! 神官様って? そんな大事じゃないですから!」
私の言葉に、話していたリュドヴィックさんとお医者さんが止まる。数秒後、呆れた顔をしたリュドヴィックさんが口を開いた。
「お前、本気で言っているのか? 大事じゃないわけないだろう」
「リュドヴィック殿。早く神官様の元へ連れて行かれた方がよろしいかと。残念ながら、医者として出来ることはもうありません」
匙を投げられた私を、リュドヴィックさんは可哀想なものを見る目で見つめてくる。
やめて、そんな目でみないで! 事前情報仕入れてなかっただけなんです……。
そんな弁明など出来るはずもなく、私は『可哀想な記憶喪失者』として、神官様のいる教会へと連れて行かれることになった。
やだよ~! 病院も嫌だけど、偉い人に会うのと同じでしょ? やだやだ!
またしても心の中でダダをこねながら、足取り重くも大人しくリュドヴィックさんの後を歩くのだった。
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