25 彼女とお金の使い道

今日は二十五日という事で、アルバイトのお給料が払われる日だ。


俺は週に三回、三時間働いているが、全然苦じゃない。


店長さんは、まかないで料理を出してくれることもあるし、ケーキを無料で出してくれたりするのだ。


俺が学生であることを考えて、お店が閉まる少し前に帰してくれるし、本当に良い所だと思う。


店長さんから料理を出してもらっても、立花の料理を食べ残すことはない。


立花の料理が食べられない昼などはおにぎりで我慢するか、断食で耐えているため、変に太ることはない。はず…。


そんなこんなで一カ月が経ったわけだが、あまり働いた覚えがない。


夕方ぐらいは比較的多くお客さんが来るのだが、少し遅くなるとあまり来なくなるため、仕事量としては大したことが無い。


俺以外に何人かの先輩にお給料を払っているわけだが、こんなに待遇を良くしてやっていけるのか不安になり聞いてみたところ「趣味でやっているから、儲けなんて気にしていないんだよ」と言われてしまった。


バイトの募集をした理由も、先輩方が諸事情で二人同時にやめてしまったからだという。


本当に運がよかった。立花と出会えたことも、この喫茶店で働くことができるのも。


あ、スーパーのお手伝いも継続中。


そんなこんなで店長さんから手渡しでお給料を渡してもらい、うきうき気分で早歩きで家まで帰っている。


事前に今日は家で料理を作って待っているという事なので、早く立花に給料の事を報告したい。


お礼は何をあげようかな。





「ただいま」


玄関のドアを開けて、帰宅したことを報告する。


すると、トタトタと足音が聞こえてきた。


「おかえりなさい、結城さん」


何時も通りの制服に、エプロンを来て出迎えに来てくれる絶世の美少女こと、立花日向である。


「今日は少しだけ何時もより早かったですね」


週に三回を一カ月続けると、帰宅の時間も覚えたのか、そんな事を言ってくる。


「まあ今日は早歩きで帰ったし」


俺がそういうと、立花は少し笑って首を傾げる。


「何かいい事でも?」


「アルバイトのお給料を貰ったんだよ。それが嬉しくてさ」


俺がそう言うと、立花は納得したように「ああ」と頷く。


「結城さんが頑張って働いて手に入れたお金ですからね」


まあ心を込めて接客しているしな。頑張ったって言っていいか。


「そうだな。立ち話をして悪い、ご飯を食べよう」


俺はそう言って、ダイニングまで移動し立花と夕食を食べた。


相変わらずとても美味しくて、心が温まりましたとさ。


立花に何時も通り夕食の感想として「とても美味しかった」と言い、なぜか頬を少し赤く染めた立花と洗い物をして、ソファーに座った。


そして封筒を取り出し、立花に見せた。


「まあ、これがお給料だな」


立花は封筒を見ると、「そうですね」と言って頷いた。


そして俺が封筒をびりびりとゆっくりと破いて、中からお金を取り出す。


中には三万四千円と少しが入っていた。


俺は中に入っているお金を見ると、初めて自分で稼いだ、という事に少し嬉しくなり、顔を綻ばせてしまう。


「これは、前々から言っていたけど、立花のお礼にも使おうと思う」


生活費にも使うのだが、余ったお金は立花のお礼に使う。


俺の言葉を聞いた立花は、やや不満そうな表情をする。


「ですが…やはりすべて結城さんが使うべきだと思います…」


「何を言っているんだ。自分でお金を稼ごうと思ったのも、その支えになってくれたのも立花だ。俺は立花に本当に感謝してるんだ。俺だってお礼をさせてほしい」


俺がそう言うと、立花は顔を赤く染めて「…はい」と言って俯いてしまった。


「それでなんだが…立花。何かしたい事や、欲しい物ってあるか?ぜひ教えて欲しい」


俺がそういうと、立花少し顔を上げ、上目遣いで見つめてきた。


そしてゆっくりと口が開いて…。


「い、嫌じゃなければ、一緒にお買い物に行きませんか」


立花は少しぷるぷるとしながら、確かにそう言ったのだった。

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