料理ができないので学校一の美少女に養われることになりました
恋雪ちゃん
第一章
01 彼女の心配
「大丈夫ですか」
そう色の無い、尚且つ少し冷めたような心配の声を掛けてくれる彼女。
その彼女の名前は
俺と学校が一緒だが、話したことはない。
容姿端麗で成績優秀の学校随一の才女らしい。
特に接点もなく、ただ近くに住んでいて、帰り道が一緒なだけ。下校のタイミングもばらばらだ。
そんな彼女が俺に心配の声を掛けている。
「あ…ああ…はい。大丈夫です…」
声を出そうにも、元気が出なくて細い声しか出せなかった。
「そうですか」
少し不満がありそうだが、淡々とした返事が返ってきた。
「それでは失礼します」
「は…はい」
俺と彼女の家は近い。
俺はアパートに住んでいるのだが、その近くにマンションがあって、そこに彼女が暮らしている。らしい。
元気が出ない体を引きずって、なんとか家に帰った。
中に入って鍵を閉め、靴を脱いでソファーにダイブ。
時間は午後四時。
学校が今日は六時限目までしかないので、さっさと帰ってきた。
もし母がいたなら、着替えろとか何とか言っていたかもしれないが、一人暮らしなので何も言われない。
俺は電池が切れたように眠った。
☆
カチカチと時計が秒針を刻んでいる音が聞こえてきた。
二時間くらい寝ていたらしい。
そして異様に腹が減っている。
「でもなんも食べれないんだよなあ…」
近くに人がいても気づかれないような小さな声。
そう今俺は絶賛、断食という節約術を行使している。
理由は単純に金がない。
一カ月に一回、仕送りがあるのだが、果物や野菜と一緒に一万円が送られてくる。
俺はその一万円で日々暮らしているのだ。
だが計画的に使えば、一万円なら多少苦しいが生活できる。
なぜ今金が無いのかと言えば二日前、帰る途中に病気の子に対する募金活動があり、なけなしの二百円を入れてしまったからだ。
病気の苦しさは知っている。だからこそ支援はしたい。
二百円なら最寄りの閉店間際のスーパーならおにぎり四つは買える。
だが後悔はしていない。
少しでも命が助かるなら、それでいいのだ。
「だけど空腹はどうしようもないよなあ…」
幸福では腹は満たされない。
だから水をたっぷり胃に入れて、もう一度睡眠をとろうとする。
だけどどうしようもなく腹が空いて、ぐるぐる思考がループする。
どうにか腹を満たす方法……あっ!
「公園にたんぽぽ生えてたよな…?」
季節は春。
最近入学したばかりだが、桜は三月の後半にだいぶ散ってしまったらしく、入学の際には綺麗な桜は見れなかった。
だが公園のたんぽぽだけはきれい咲いていた。その記憶は鮮明に覚えている。
たんぽぽの葉は食べられる。
「よし…取りに行くか!」
少しでも胃に物を納められると思うと、めちゃくちゃ元気が出てきた。
☆
「たしかここら辺に…おっあったあった。」
あまり大きくはない公園だが、木の下にはたくさんのたんぽぽが自生していた。
あまりに茹でて塩をかけて食べるのが楽しみすぎて、公園中のたんぽぽを取っていた。
十分くらいだろうか。
前屈みになりたんぽぽを取っていた。その時。
「何してるんですか」
またもや鈴のような彼女の声が掛かった。
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