第8話 私の日記

「疲れた……」


 私は、夕飯の後自室の机に座ってため息をついた。

 今日は、疲れたので早く寝たい気分だったが、私は日課の日記をつけないといけない。

 その日あったことやあった人を記入して、忘れないようにするためだ。

 私はペラペラと日記帳をめくる。懐かしい内容も書かれていて、私は口元を緩ませる。


ーーーーーーーーーー


 影蔵 湊。

 私の幼馴染にして彼女持ちの鈍感男子。

 人を助けるために命を投げ出してしまうような馬鹿(現在は彼女のおかげでそこまでの無理はしない模様)

 ヒーロー大好き人間。嘘を嫌い必ず本音で話すことを心掛けているらしい。


 光里 芽衣。

 私の数少ない友達にして、湊の彼女。元女優にして生粋の美少女。美しい黒髪は私も羨ましくて、すごく触りたい。

 湊と出会い、助けられた過去を持つ。


 名取 楓。

 一つ年下の女の子。元不登校児で、湊との交流により学校へくるようになる。

 学校へ通い始めてから、とてもあざとい言動が増えて男子からの人気は上がるが女子から好感度は下がっていく一方だと言う。本人は、対して気にしていない。

 湊が好き。


 花園 萌香

 一つ年上の女性。元生徒会長で、湊とは昔からの知り合い。優しい雰囲気とは裏腹に、言葉には棘と皮肉が混じり少しずつ会話相手の心を削る。削られる本人もいつの間にかダメージを受ける。

 大学生となって、一気に大人っぽい魅力溢れる女性へと変貌していた。

 湊を昔好きだったと思う(憶測)


 桜井 萊斗

 私の同級生。私に気があるらしい。理由は顔。

 特に言う事は思いつかない。以上。


 神城 佳子

 私の新しい友達。派手な金髪に小柄な身体と顔が特徴の女の子。小動物的な可愛さがあり、天然混じり。

 可愛い。


 上杉 風磨

 佳子ちゃんの幼馴染。佳子ちゃんとはとても仲が良く、サッカー部のキャプテンもやっている。

 クールな眼鏡をかけたイケメン(佳子ちゃんの感想)


ーーーーーーーーーー


 私は今日の出来事も日記に書き込んでいく。

 佳子ちゃんの事。絡まれて上杉さんに助けてもらったこと。花園先輩に出会ったこと、カラオケやボーリング。

 楽しかった記憶を思いのまま書き記していく。


 そして、最後に。


 桜井君の事。

 私自身、告白を受けた試しがなかったので、あれで良かったのかと何度か思った。

 ああ見えても、勇気を出したのではないか。色々考えたのでないか。そう思うと、私の態度はあまり気持ちの良いものではなかったかもしれない。

 私の胸が締め付けられる。


 しかし、いくら考えても時間は巻き戻らないし、私の気持ちが変わるわけでもない。

 まだ出会って少ししか経っていないのだ。私は、彼の事をほとんど知らない。だから、あれを受けることは出来ない。


 そして、湊のこともあった。私はすでに気持ちを整理したつもりではいるが、楓ちゃんとの偵察や花園せんぱとの遭遇から、まだ何か私の中に残っている気持ちがあるのではないかと感じてはいた。

 私は、湊と幼馴染。それ以上ではない。


「私の、心はどこにあるんだろ……」


 誰の耳にも届かない弱々しくてみっともない声を私は出してうなだれる。

 でも、考えても仕方ない。きっと答えはここにはないから。何もしないで考えるだけでは何も浮かばないし解決しない。


 私は、日記帳の最後にこう書きなぐる。


『今日の私は、気持ちが行方不明! 保留!』


 日記を閉じて、布団へダイブする。

 ああ、布団って幸せ。明日になったら、また忘れて楽しく生きれるかな。


 私は、そのまま眠りに落ちた。


    ◆


「んっ……あ」


 私は身体を起こす。

 なんか、目の前がグニャグニャして見える。寝ぼけてるのかな私。


 私は、重い身体をゆっくりを上げて立ち上がる。

 しかし、クラクラしてしっかり立っていることが出来なかった。

 私は、床を這いながらリビングへと向かうのだった。


「…………うん。お姉ちゃんは風邪だね。ほら、安静にしてて」


「かなちゃん、私はだいじょぶだからぁ……」


「はいはい、抱きつこうとしないで熱がうつる! まあ、今日は安静にしてなよ」


 私は、這いながらリビングに行くと、妹にドン引きした表情をされた後二階の私のベッドまで運ばれた。

 熱を測ると38.5℃で学校に行ける体温ではなかった。


「あれ。かなちゃん学校はぁ〜?」


「お姉ちゃんがこんな状態で行けるわけないでしょ。今日は日曜日で学校はないんだけど……お姉ちゃんマジで混乱してる……。お母さんは、なるべく早く帰ってくるって」


「かなちゃん……」


「べ、別にお姉ちゃんのためじゃないんだからね……!」


「…………すぅ…………すぅ」


「はっ!? お姉ちゃん寝てる……」


 私は気絶するように眠りに落ちて、妹のツンデレを見ることは出来なかった。


    ◆


「…………っ! あれ、私」


「あ、未華起きた」


 あれ!? いつの間に寝てた!?

 私はバッと飛び起きる。

 鮮明になっていく視界。それに応じて、私の顔の温度は上昇していく。

 私のベッドの横で、私の顔を見つめる姿が一つ。


みなと……」


「豆鉄砲食らったような顔してどうした?」


「うん。私ハトになりたい」


「そうか。………うん?」


 湊は、私の惚けた顔を見て少し笑う。

 その後、手を私のおでこに添えて温度を確認する。


「……どれどれ。まだ熱あるな。寝てろ」


「あ、うん」


 私はまた布団へ横になる。

 そして私は湊を見つめる。

 ………………なんで湊がいるの!?

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