まだ見ぬ未来へ駆け抜けて!【改稿版】
小林汐希
プロローグ 青空の思い出話
あれは……、私がいくつの頃だったのだろう……。
小学生になる前の時代のような気もするし、もっと大きくなってからのことだったのかもしれない。
前後のことやきっかけも覚えていない。もしかしたら悲しいことがあったのかもしれないし、違う理由があったのかすら覚えていない。
でも、そのときにした質問だけは覚えている。
「どうして、空はあんなに青いのかな……」
そんな、大人だって簡単に答えられない質問をした相手が誰だったのか、それすら思い出せないなんてね……。
「
その答えから辿っていくと、良いことがあった時ではなさそうだということくらいは何となく想像がつく。
「じゃあ、花菜は泣き虫だから、これからあの色はどんどん濃くなっていくのかな……」
そんな自虐的な言葉が続いてしまったのに、横に座っていた人は真剣に答えてくれたのを覚えている。
「そんなことにならないように、これまで泣いた数だけ笑っていけるように、これから変わっていこうよ」
そんな会話を交わしたのは、ぽかぽかと暖かい春。4月3日の私の誕生花でもあるタンポポがいっぱい咲いた川辺の芝生の上だった。
いつ、何があって、相手が誰だったとか、肝心なところが抜け落ちているはずなのに、今でも場所ははっきり覚えているの……。
あれから10年以上は経ったと思う。
私は今もその場所にひとり腰を下ろして、当時と変わらず同じ空を見上げていた。
『涙の色が空の色』かぁ……。
もしそうだとしても、昔も今も私の一番好きな色なのだから……。同時に、その言葉は私の中で一番のお気に入りの
あの言葉をかけてくれたのは誰だったのだろう……。
もし思い出すことができて、再び会うことも叶ったなら、あのときの言葉をかけてくれたお礼を言いたい。
相手の人もそれを覚えてくれていたらだけど。いや、その人からすれば「まだまだ」かもしれない。
それでも言ってもらえたように、「少しずつ笑えるように頑張っているよ……」って。
だからね……。
いつかきっと、ちゃんと笑顔で報告できるようになりたいな……って思っていた。
あの日の言葉をもらうことができたから、私は泣くことを少しずつ減らしていくように、自分を少しずつ変えてこられたんだもの。
それがなかったら、私はきっと誰から見ても何の価値を見出だせない人間になっていたのだと思う。
小さな頃から色々ありすぎたこれまでの半生を振り返って、そうならなかったのは、そう、この一言だけでも頑張ろうって思っていたから。
『泣かずに、笑おう』
たったそれだけ? と言われるかもしれないよ。
でもね……。
いつか私が言えなくなっちゃう前に……、「ありがとう」って言葉だけでも、伝えたいんだ……。
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