大好きな愛されヒロインを口説き落としたい天才なオレ様〜スパイスに魔法と異世界を添えて〜

優夢

第1話 今日も今日とて始まるオレとあの子のラブストーリー


「フーハッハッハッハッハッハ!!! 残念だったなあ雛森ひなもり 姫日葵ひまりよっ!! 探し物はこのノートだろうっ!! 」


あくる日の午前中、とある学園の教室の一つで高らかな笑い声が響く。授業中にも関わらず、机に足を掛けて高々とノートを掲げてみせるメガネの男子生徒はどこぞの安っぽい悪役のようだ。


「あっ、それ私のノート! 才賀さいがくん、拾ってくれてたんだ?どうもありがとう」


だが、悪逆非道を貫かんとする男子生徒にそのノートの持ち主である女の子はキラキラとした笑顔でそう言った。


「な!? ち、違うぞ! こ、このノートはオレ、いやオレ様が雛森ひなもりの机から略奪した品・・・、そ、そう! 言わば戦利品というヤツだっ!!」


「なあにそれ? 素直じゃないんだね才賀さいがくん? 拾ってくれたならそう言ってくれればいいのに」


「そ、そんなわけないだろう!? なぜこのオレ様が落ちてるノートを拾ってやらなきゃならないんだ!?」


「なんでって・・・、才賀さいがくんが優しいからでしょ?」


そう言って首を傾げる彼女は明るい橙色の髪が日に照らされて輝き、そのふんわりとした笑顔を何倍も魅力的にしていた。


「ち、ち、ちちちちちちち・・・・・・」


目を上下左右にぐるぐる回しながら壊れた機械の様に同じ音を高速再生する彼は既に顔がゆでダコの様に真っ赤だ。


「ち・・・?大丈夫?才賀さいがくん顔が真っ赤だよ?」


席が隣の彼女はすっと立ち上がるとその白く柔らかそうな手を彼の額に当てた。その瞬間、光輝の肩が活きのいい魚よろしく、ビクンと跳ねる。


少し垂れ目の優しげで愛らしい顔。白く、触るとモチモチしていそうな肌。思わず抱きしめたくなるような女性らしい肉感のある身体付きは豊満だが決して嫌らしさを感じさせない。そんな魅力的な彼女が光輝の顔をじっと見つめている。


(あ・・・ヤバい、ホント好き・・・)


と、完全に彼女の魅力に落ちてしまいそうな意識を全力で引き戻す為、光輝は叫んだ。


「ちっがあぁぁぁぁぁぁううぅっっっ!!!!!オレは・・・、オレ様は・・・、はっ!?」


そうして思い切り叫んだあとに光輝は自分のやらかした事に気付いて身を固めた。視線を向けたのは教壇。そこには怒髪天を衝く、という言葉を具現化したように身を震わす女教師の姿があった。


「おい、才賀さいが・・・。アタシはある程度生徒の自主性に任せて学校生活をするように言っている。だから大抵の事では多めに見るようにしているんだ。それはお前も分かっているよな・・・?」


「は、はい・・・」


クラスメイト達の間にクスクスと笑い声だのはぁ、と盛大なため息が聞こえてくる。皆、この後の流れが分かっているからだ。


「どうやらお前には私の思いが伝わりきっていなかったようだ・・・」


「あ、いや、そんな事は・・・」


「黙れえっ! 問答無用! 校庭にてランニング100周!! ・・・終わるまでこの教室のドアを叩く事が出来ると思うな??」


「ひ、ひぃっ!? サー、イエッサー!!! お、覚えておけ雛森ひなもり 姫日葵ひまりーっ!!!」


才賀がそんな負けゼリフと共に教室を勢いよく飛び出していき、教室はどっと笑いに包まれた。一人、きょとんと首を傾げる姫日葵以外は。


「・・・そんな事言わなくてもノート拾ってくれた事はちゃんと感謝してるのに、才賀さいがくんて不思議さん?」



――――これがブライト魔法学園に通う 才賀さいが 光輝こうきの日常。これは彼が人生初めての想い人、雛森ひなもり 姫日葵ひまりをファンタジー溢れる異世界の学園で口説き落とす物語である・・・。











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る