第51話 イケメンと元淡白少女

 恋愛で人はこうも変わるんだと、最近になってやっと実感した気がする。


 一週間程度テスト前の期間でまともに遊べず、久しぶりにみんなで遊ぶために集まった日。波留君のすっぴん姿も久ぶりに見るわけで。


「……眩い」


「まぶいよね、分かる」


 後光に耐えられなくて、あたしと光瑠ちゃんで波留君を拝んでいました。この顔だと特に春乃夜さんの面影が感じ取れるからなおさらやばいのね。


 やばいどころの話じゃなくて、やばいのよ。なんかこう、やばい。


「語彙力がぁぁぁぁぁ……」


「……どうした、涼香」


「いんや、あの、波留君のイケメンがやばいので悶えてます」


「…………なんというか……、直接言われるとはずい」


 はい好き。


 少し照れながら視線逸らした時の顔よ。なにこれ素晴らしいなんだが。伏せられた目と長いまつ毛がかっこよすぎて心臓がばっくんばっくんなんだが。


「……ゲーム、やる?」


「やらせていただきます」


 美波ちゃんがベッドへとフェードアウトしていったので、あたしは波留君の隣へと座らせてもらう。波留君に手渡されたゲーム機が手になじむ感覚を確かめながら、波留君のすぐ横へと座った。


 前までだったらいつの間にか距離を取られていたけど、今はそんなこともない。前よりもあたしたちのことを許容してくれるようになって、少し恥ずかしそうにはするものの、逃げないでいてくれる。


 隣を見れば、すぐそこに波留君がいる。幸せ以外の何物でもない。後ろで纏められた髪の下から覗く首筋を見ているとなんかドキドキする。


「……涼香、ゲーム始まる」


「あ、ごめん」


 今やっているのは、いつもと同じゲームだ。前に明人君があたしたちを鍛えると宣言したゲームで、その宣言通りにみんなで遊ぶときはたいていこのゲームをしている。


 あのときからまだ二か月程度しかたっていないにもかかわらず、体感的にはもう一年ぐらいは立っている気がしていた。告白という一つの大きな行事を乗り越えたからだろうか。


 子供のころに遊園地に行ったと、あの時の幸せで楽しみで仕方がないような感情───それに似た思いが、ここ最近はいつもある。


「……前より涼香の笑顔が輝いてる気がする」


「本当に?」


「ああ。前はもっと淡白な感じだった」


「………毎日が楽しいからかな。今までみんなと出会うまではあたしの楽しみは全部春乃夜さんだけだったし」


 どちらにせよ、今でも昔でも波留君に元気をもらっていたのは変わりないんだけれど。それをわざわざ口に出すのはまだ少し恥ずかしい。あたしの明るい感情のほとんどは、波留さんのものだから。


「……かわいいよ」


「はえぇ?」


 変な声出た。

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