3 桃太郎、順番が前後してパニックになる
桃太郎は、たった一人で鬼ヶ島へ行こうとしているわけではありません。桃太郎が立てた鬼退治の計画には、犬・サル・キジをお供にすることが含まれていました。
幸いなことに、おばあさんが作ってくれたきび団子もあります。これを使って動物を呼ぼうと考えていると、早速向こうの方から一匹やってきました。
「♪桃太郎さん 桃太郎さん
お腰につけた きび団子
ひとつ私に くださいな♪」
桃太郎も向こうの呼びかけに応えます。
「♪やりましょう やりましょう……ってサル!? 犬じゃなくて!?」
しかし、桃太郎の目の前にいたのはサルです。鬼退治計画では犬・サル・キジの順番で仲間にする予定だったのですが、これでは順番があべこべになってしまうため、桃太郎はこの上なく戸惑っています。
「何を言っているんですか桃太郎さん。僕が最初に仲間になっても、後で犬とキジが来れば同じじゃないですか。」
「いやいやよくない良くない、ちゃんと犬・サル・キジの順番で仲間になってくれないと俺にとってはよくないんだよぉ~!」
困惑する桃太郎をサルがなだめようとしますが、桃太郎が落ち着く様子は一向に見られません。
そうして桃太郎とサルが何の進展もないままやり取りをしていると、
「♪桃太郎さん 桃太郎さん……って、ずいぶんと穏やかじゃないように見えますけれど、何かありましたかね?」
と、桃太郎とサルの様子を見たキジが、山の方から飛んでやってきました。
「いやあ、自分もお供を申し出たんですけど、桃太郎さんが犬・サル・キジの順番で仲間にならないと~って言っているので困っているんですよ。」
キジの問いかけに、サルが答えます。一方、桃太郎はまだ気持ちを取り乱したままです。
「それだったら、僕らで犬を探しに行って仲間に加えるのはどうでしょう?」
「それはいい案だ。」
そうして、話しているうちに意気投合したサルとキジは、お供になってくれる犬を探すため桃太郎のもとを離れていきました。
しばらくして、桃太郎の気持ちが落ち着いたころには、人どころか動物の姿もなくなっていました。
しかし、一人取り残されて不安になるのも束の間、桃太郎のもとにようやく犬がやってきます。
「♪桃太郎さん 桃太郎さん
お腰につけた きび団子
ひとつ私に くださいな♪」
桃太郎も向こうの呼びかけに応えます。
「♪やりましょう やりましょう……じゃなくてっ! 犬が仲間になるところなんだからサルとキジは引っ込んでて! 俺は同時に2匹も3匹も相手にできないから!」
ところが、今度は犬・サル・キジが一斉にやってきたため、一匹ずつ仲間にしていくつもりだった桃太郎は再び取り乱してしまいます。
「ええっ、僕らが立ち会っちゃ駄目なんですか……?」
「そこまでこだわらなくてもいいのに……。」
近くの木の陰に隠れながら、サルとキジがつぶやきます。一方の犬は、
(ああ、桃太郎さんは発達に凸凹があるのか……。)
と、主君に対して心の中で一定の理解を示していました。
このように、お供たちは仲間になるときから桃太郎の強いこだわりに振り回されてしまうのでした。
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