第2話

橘 信司は本気だった。


この世界の猫たちは、街に住み着いていて飼い猫という概念がなかった。

そこで、親猫一匹と、子猫4匹の親子を猫カフェで飼うことにした。


幸い、この世界には病気の猫は見当たらなかったので、信司はホッとして胸をなで下ろした。

信司はこの世界に来て、猫使いの能力に目覚めたらしい。

五匹の猫たちをお湯で洗い、綺麗に乾かした。

五匹の猫たちはお湯を嫌がる気配もなく、気持ちよさそうにお風呂に入ってくれた。


「ああ、猫ってすばらしい!!」

信司は一匹ずつ猫の腹に顔を埋めて匂いを嗅いだ。

良い匂いだった。


信司は猫たちに名前をつけることにした。

「にゃー。にゃーきち。にゃんた。にゃんじろう。にゃんにゃん」

信司が呼びかけると、それぞれがきちんと返事をした。


「それでは、猫カフェの黄金ルールを看板に書こう!」

そう言って、信司は木の看板に<猫カフェ・猫様が主役>と書いた。

飲み屋の女将はそれをみて呆然としていた。

「猫がそんなに偉いのかい?」


女将の言葉に信司は首が飛ぶのではないかと言うほどの勢いで頷いた。

「猫ですよ! 尊いです! 老若男女なんて比べようもありません!!」

信司はそう言うと胸を張ってにっこりと笑った。


すると鎧をまとった若い女性達が、信司の店<猫様が主役>に興味をもったらしく歩み寄ってきた。

「こんにちは、このお店もうやってるんですか?」

「いいえ、まだです」

信司が答えた。


「どんなお店なんですか?」

「猫様がくつろいでいるお店です。 お茶やホットケーキもありますが、主役は猫様です」

信司がそう言うと、女性達は「面白そうね」と言いながら、去って行った。


信司は市場でホットケーキの材料とお茶を買うと、店の戸棚にしまった。

そして、猫のために栄養価の整ったキャットフードを作り冷蔵庫に入れた。

店の中では5匹の猫が気ままにあるいたり眠ったりしていた。


「さて、明日は猫様達のカフェを開くとしよう」

信司は女将さんに断ってから、猫たちが自由に出入りできるよう、扉に小さな猫用の扉をつけた。

猫の遊び道具を作っていると日が暮れた。


猫たちは信司の店にきちんと帰ってきた。

「おかえり、にゃー。にゃーきち。にゃんた。にゃんじろう。にゃんにゃん」

猫たちは一匹ずつ返事をした。

信司は順番にブラッシングすると、店の隅に置いた寝袋で眠りについた。

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