第2話 腹黒なヒロイン

 ライラは吐き気を抑えながら盗聴を続けていた。


「フンッ、好きにしろ。なんだったらイリナも付けてやるぞ?」


「えっ? よろしいのですか?」


「あぁ、最初は良かったんだがな。もう抱き飽きた。やっぱりすぐ腰を振る女は退屈で敵わん」

 

 (あらら、使い捨てだったのね。悪党らしいわ)


「しかしそうなりますと殿下のお相手が...」


「案ずるな、これを見ろ」


「こ、これは隣国のブレンダ王女からの手紙ですか!」


「あぁ、そうだ。傾国の美女として名高いあのブレンダ王女からだ」


「ど、どうしてブレンダ王女が?」


「なあに、以前、我が国に使節として訪問された際にな、懇意にさせて貰ってな。それからずっと文通していたんだ」


 (ずっと執事が代筆してるんだけどね。コイツの字は読めたもんじゃないから。ミミズがのたくってるみたいだもん)  


「さすがはルドルフ様です! お見逸れしました!」


「フフンッ、それでな、既に婚約破棄したことを伝えたら、是非会いたいと向こうから言ってきたんだ」


「それは...ブレンダ王女もルドルフ様のことを...おめでとうございます!」


「フハハハッ、高貴な俺様にピッタリの相手だろう?」


 (自分で高貴って言っちゃったよ...痛いヤツ...)


「まさしく美男美女でございますなぁ~♪」


「ウハハハッ! もっともっと誉め称えよ!」


 これ以上聞いてられないので、ライラは魔道具をOFFにした。


「はぁ~...疲れた...まぁでもこれであの悪党どもの魂胆は分かった。あとは...」


 ライラは疲れた足を引き摺るようにして、学園を後にした。このまま家に帰りたいところだが、ライラには行かなくはならない所があった。それは...



◇◇◇



「こんにちわ、初めましてかな?」


「えっ? な、なんであんたが家に?」


 ライラはイリナが住む男爵家を訪れていた。いきなりの訪問にイリナは警戒する。しかも相手は自分がこれからハメようとしている公爵令嬢だ。自分の悪事が明るみになったのかと気が気ではない。


「先触れもなしにゴメンなさいね。あなたに聞いて貰いたいモノがあって」


「......」


「そんなに警戒しないで。あなたにとっても悪い話じゃないから。ね?」


 イリナは渋々といった感じで頷いた。


「じゃあ回すわね」


 そう言ってライラは、先程の盗聴を録音しておいた魔道具を再生した。



~ 30分後 ~



「あんのクソ野郎っ!」


 イリナの罵声が響き渡る。


「まぁ、あなたも被害者ってことよ。私と同じね。だから」


 そこでライラはいったん言葉を切って、


「ねぇ、私達手を組まない?」

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