KAC20XX21
ヒトデマン
21回目のお題は「 」
20XX年のKACアニバーサリー・チャンピオンシップは熾烈を極めていた。
参加に必要な文字数は最低1万2000字からとなり、投稿までの締切はお題発表から6時間。お題も難解で数多くなり、殆どの人が皆勤を諦めてしまうほどだ。そんな中に、皆勤賞をねらう男がひとり。
「よし!KAC20XX20、お題『最後の審判』を投稿したぜ!」
投稿し終えた男は、最後、21回目のお題の発表に備えPCの前につきっきりになる。そして運営からお題が発表された時、男は目を疑った。
21回目のお題は「 」です
「お、お題が『 』!?どういうことだ!?」
男は「 」の意味について考え始める。
「これは空白という意味なのか?ならば書く内容はコンピュータのヌルを元にして……」
そう考えて執筆し始めた男だったが、不安に駆られてSNSで他の作家の意見を見始める。
「お題がなしってどう言うことだよ!?」
「これは空白とか何もないという意味なのか?」
「お題がないのがお題……?なら題材は自由ということか?」
このようにさまざまな意見が入り乱れていた。男は「 」を空白という意味か、自由枠の意味のどちらかに決めつけて執筆を再開しようとしていた。
その時、
「もしかして、隠されたお題を推測しろとかじゃないよな?」
男はその意見を見て動きを止めた。
「おいおい、どうやってあてろってんだよ。ヒントなんて何もないじゃないか」
「ははは、そうだよな」
だが男は一人、何か確信を得たかのように独り言を話し始める。
「いや……ヒントはある。それはKAC20XXのこれまでのお題だ!」
そして男は、KAC20XXのこれまでのお題を書き連ね始めた。
KAC20XX1「賢者」
KAC20XX2「女司祭」
KAC20XX3「ビーナス」
KAC20XX4「ジプシーの王」
KAC20XX5「法の審判」
KAC20XX6「エロス」
KAC20XX7「戦車」
KAC20XX8「ヘラクレス」
KAC20XX9「老人」
KAC20XX10「運命」
KAC20XX11「バランス」
KAC20XX12「死刑囚」
KAC20XX13「死神」
KAC20XX14「節約」
KAC20XX15「サタン」
KAC20XX16「バベルの塔」
KAC20XX17「シリウス」
KAC20XX18「ヘカテー」
KAC20XX19「太陽」
KAC20XX20「最後の審判」
KAC20XX21「 」
「うーんこうしてみると書きにくいお題が殆どだったな。だがしかし、並べてみてもお題同士に関係なんて見られないぞ」
男は思い悩み、ただ時間だけが過ぎていく。
「くそ!せっかくここまで皆勤してきたのに!21回目で終わってしまうのかよ!」
その時、男の脳裏にある考えが思い浮かぶ。
なぜ今回、21回目があるんだ?
「普通ならキリのいい20回で止めるはず。今回のKACが25回か30回までだとしても、お題を隠すというユーザーを試すようなことは、ヒントが出揃う25回目か30回目にするはず。21回目に『 』にした理由は……?」
男は再びこれまでのお題を見返す。そしてこれらのお題から小説を書くために調べていたことと、男の考えがリンクし始めた。
「──タロットカードか!」
タロットカードの大アルカナ、その番号は21番まである。
「間違いない!タロットカードの番号と、お題はリンクしているんだ!7番の戦車だとか、13番の死神とかなんてドンピシャだ!そしてここから21番目のお題も類推出来る!」
男はネットで大アルカナの21番目を検索し、答えを見つけた。
「KAC20XX21の『 』だったお題の中身、それは……大アルカナの21番目!『世界』だ!」
そして男はPCに向かって座り、ポキポキと指を鳴らす。
「さあ!あとは執筆するだけだ!いくぞおおおおおおおおおお!!!!」
だが、男の指は全く動かない。
「……『世界』をお題に、どう書こう」
男の脳みそは謎の解明にリソースを注ぎ、話を書く気力は全く残っていなかった。
*
「せかい」
せかいはひろくておおきいなとおもいました
だってせかいはひろくておおきいからです
(39文字)
*
大アルカナの番号は21番までだが、大アルカナの数は0から21で22枚存在する。
0番目のカードに振り分けられているのは……
愚者である。
KAC20XX21 ヒトデマン @Gazermen
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