オマケ

プリンの威力



 自宅に青蘭を迎えた夜。


「ああ、青蘭さん。ほんっとに、ぶじに帰ってきてよかったですねぇ。今夜はごちそうプリンもありますよぉ」

「いやいや、清美さん。ごちそうプリンってなんなんですか?」

「えーと、生クリームとかフルーツで飾ったプリン」

「それ、プリンアラモードじゃないですか?」

「そうでしたっけ? ほら、でも青蘭さん、喜んでますよぉ」


 目をキラキラさせて、清美特製ごちそうプリンをほおばる青蘭。


「ええ、まあ。そうですね」

「龍郎さんも、もっと喜ばないと。せっかく今夜から、青蘭さんとおうちイチャイチャできるじゃないですかぁ」

「…………」


 青蘭以上に目をキラキラさせる清美。


「……清美さん。まさか、まだ青蘭を男だと思ってるわけじゃないですよね?」

「それが何か?」

「いや、清美さん。見てたじゃないですか。ザクロの木のとこで、青蘭が服ぬいだとき、ちゃんと胸がありましたよね?」

「イケメンが美青年とイチャイチャ」

「いやいや、見てましたよね?」

「イケメンが美青年とイチャイチャ……」

「見てましたよね?」

「イケメンが美青年と……」

「見てましたよね!」


「…………」

「…………」


 にらみあう龍郎と清美。


「いいんです! もう一つの世界では、青蘭さんは男だったんです! キヨミンは夢で見ました! そっちの世界ではBLファンタジーだったんですよぉ!」

「そんなの、ただの夢ですよ」

「違います! ただの夢じゃありません。あれは平行世界なんです。もう一つの世界線。むしろ、あっちのほうが最初にあった世界なんですぅー!」

「でも、違う世界なんですよね?」

「だって、いいじゃないですか! 夢を見たって!」

「おれたちのこと妄想のオカズにするんでしょ? 迷惑ですよ!」

「それくらい我慢してください!」

「なんで清美さんの妄想のために、おれたちが我慢しなきゃいけないんですか!」


 いつにない激しい言いあい。

 しかし、ここで清美の必殺技が炸裂する。


「そんなこと言ったら、もうプリン作りませんよぉー!」


 すると、キラキラしていた青蘭の目が、とたんに、うるうるになる。


「龍郎さん。プリン……」

「せ、青蘭。プリンに惑わされるな」

「プリンのためなら、ボク、男でいい」

「…………」


 龍郎はプリンに負けた。


「わかりました。じゃあ、そういうことで……」

「ヤッター! 妄想しほうだい!」

「…………」


 こうして、清美のプリン最強伝説は始まった。

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