とある男の無意味な独白
天野静流
第1話 無名という名の自由
俺は自殺をしようとしていた。
だが、やめた。
俺は持っていた輪っかになったロープを衣服や物が散乱した部屋へと放り投げる。
煌々と部屋を照らすテレビの前にあるソファーに腰かける。
映っているのはとある有名人が自殺したという話題で持ちきりのニュース番組だ。数多くの人が悲しみ、嘆き、何故なのかと問いかけるそんなインタビューが映し出される。
それを見て俺は思った。
あの人は有名という名の鎖で首を吊ったのかと。
正直俺はそれが羨ましかった。だって、その鎖で首を吊れれば多くの人が悲しんでくれる。多くの人が嘆いてくれる。多くの人が俺という人間に死後も価値を与えてくれる。
だが、俺の手元にあるのは無名という名の自由と何の変哲もないロープだけ。
だから、俺は自殺をやめたのだ。
俺には死ぬ価値すらないのだから。
とある男の無意味な独白 天野静流 @amanoshizuru
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。とある男の無意味な独白の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます