やさしさにふれたら

Magical

第1話 目立ちたくは無いのだが……

 高校に入学して一ヶ月ほど経った五月、クラスの中ではもうそれぞれが所属しているコミニティーのような人のかたまりが完成している今この時期にクラスの端っこの席で俺はたった一人机に突っ伏していた。


 


 皆はどうせ中学まで陰キャだったやつが高校デビューに失敗して友達も出来ず一人寂しくいると思っているのだろう。


 まあ、そう思ってくれていた方が都合がいい。

 こっちもあまりこれからは人付き合いをしていきたいとも、思わない。


 他人の事情には一切、口を挟まない。余計なことをしない。これを徹底するんだ。


 俺の名前は結月水郷《ゆづきみさと》

 入学して間もない高校1年生、成績は中の上、部活は無所属、趣味も今は特になく、ただ時間があるときに絵を描いているぐらいだ。

 委員会は保健委員、係は雑務係


 この雑務係というのは名前の通り色々な雑用をこなす係だ。人数は俺を含めて三人、ただいつも自分一人でほとんどのことをやり終えてしまうのでほぼ俺一人といっても差し支えない係だ。当の本人たちもめんどくさい仕事をやらずに済むのでなにも言っては来ない。


 こんなことをしていて楽しいかと聞かれたら絶対に楽しくはないと答える。



 元々、自分はこういうタイプのキャラではなかった、中学の前半までは……

 そのせいか慣れるまで少し時間がかかったが今ではなんとかこういう立ち位置に慣れてきた


 でも、こういう行動をしていると教師にも目がつくようでこの前の二者面談では、


「君、ちゃんと友達いるの?何か困っているなら何か言ってみな!相談にのるからさ!!」

 うちのクラスの担任の女性教師がこんなことを言ってきた。表情から察するに、なんの悪びれもないことがよくわかった。


「友達を作るつもりはありません。別に成績を確保できているなら何も問題ないと思いますが……」

 当然人と関わりたくない俺はそう答えた。

 それに自分は知っている、教師なんて生徒が本気で悩んでいても平気で知らん顔をするクズばかりだって……



 こんな自分が友達を作る資格なんかない……

 この言葉がずっと俺の脳裏に存在している

 決して許されない、取り返しのつかないことをした罰だと自分では思っている。



 日が落ち始め、辺りが完全に夕方になった頃、自分は雑務の仕事を一人でクラスに残り片付けていたそれが終わりやっとの思いで帰ろうと廊下を歩いていた時、


「あ、あの!結月水郷君ですか……?」

 後ろから一人の女子生徒の声が聞こえた


 話しかけてきたのは違うクラスの女子

 木雀火帆《きすずめかほ》最近クラスの中でもこの子の話題がよく出ていて知っていた。


 容姿も普通に可愛く、基本的には静からしいが色んなところに気配りがきくらしく好む人は男女問わず多い。


そんな人がなぜ俺に……?疑問が尽きなかった正直、話したこともないと思うのだが。


「は、はいそうですけど……なにか?」

自分がそう答えると

彼女はハッとしたように表情が変わり自分の口を抑え何故か嬉しそうな表情を浮かべた。


そして彼女は誰もが耳を疑う発言をする

「わ、私とお付き合いしていただけませんか?」

誰もいない静かな廊下に彼女の言葉が響いた。


「は?」

どういう状況かわからず思考が完全に停止した。

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