7670days
私池
第1話
私、櫻木春香は怒ってます!
えーと、長くなりますけど、順番に話します。
それからキレると口が悪くなるのは先に謝っておきますね。
私には付き合ってた彼がいました。
名前は大野翔、なんと誕生日が私と一緒の四月一日、エイプリルフールなんです!
おかげで小学生の頃から嘘誕生日とか色々
翔の外見はまあイケメンですかね、でも昔から人の事考えずにいきなり何かするヤツなんです。
初めて翔と会ったのは病院の新生児室らしいんですけど、全く覚えてません!
逆に覚えてたら怖いです。
家もお隣りではありませんがご近所で、保育園も一緒でした。
保育園と言う事は二人とも両親が働いていて、なのでお互いの家に預けられたりしてたみたいです。 アルバム見ると確かに写真が......
いや、別に嫌じゃないんですけどね。
そんな私達は小学校も中学校もずっと一緒。
五年生くらいから周りには夫婦認定されてたんですが、当時は気の合う友達だと思ってました。(多分あっちもそうだったハズ)
初めてデートしたのは中学二年の時で、映画館デートだったんですが......
当日の朝、いきなり家に来て「映画見に行こう」ですよ?
普通遅くても前の晩にこっちの予定聞きませんか?
仕方ないのでお友達との約束をキャンセルして付き合ったんですけどね。
もちろんお友達には次の日に謝って、埋め合わせもしましたけど。
それからはボーイフレンド、ガールフレンドの関係で手を繋いだりしてたんですが、私、告白されてないんです!
やっぱり思春期の女の子としては「ないわ〜」でした。
でもまあ嫌いじゃないから付き合って(?)たんですが、中三の時、いきなりキスされたんです!
しかもデートの帰りとかそういうんじゃなくて、彼の家で宿題して帰る時にいきなりですよ⁈
思わず突き飛ばして、グーパンを顔面に入れちゃいました。
「いきなり何すんのよ!」
「いきなりって、付き合って一年以上たつんだからいいじゃん」
「は⁈ 私告白してないし、されてもいないんですけど?」
「え?」
「え?じゃないわよ! ファーストキスだったんだからちゃんとムード作ってよ!」
「ごめんなさい」
謝ってくれたし、今更だけどちゃんと「好きです」って言ってくれたんで許しちゃいましたけど。
そして高校も同じ高校でした。 彼の成績ならもっと上の高校に行けたはずなのに。 もしかして私に合わせてくれたんでしょうか。 そうなら嬉しいんですけど何も言われてません......
私も一応顔とスタイルは良いみたいなので、はじめのうちはラブレターを貰ったりしたんですが、同中ルートで付き合っている事が拡散して、すぐ来なくなっちゃいました。
もちろんくれた人にはちゃんとお断りしました。
貰ったラブレター見せると平静を装いながらキョドるの翔が可愛いくて、ついつい揶揄ってしまったんですが、それがいけなかったみたいです。
また彼の部屋で、今度はいきなり押し倒されました。
今度は引き離せなかったので、耳の後ろに右フックを叩き込んでやりました。
「夫婦でさえ無理矢理は犯罪なんだからね! ふざけんな!」
「今は大丈夫でも誰かに取られちゃうかもしれないだろ」
「そこまで信用出来ないのか! 私は昔からあんたしか見てないだろ! それに私はモノじゃないし、エッチしたから自分の女って昭和の人間かよ!」
「ごめんなさい」
ちゃんと謝ってくれて、今度は私も悪かったからまた許しちゃいました。
とはいえ二回目なのでイエローカードです。
「これでファーストキスと合わせてツーアウトだから。 今度私の気持ちも考えずにこういう事やったら別れるからね!」
と釘は刺しておきました。
それから色々話して、その年のクリスマスにあげちゃいました。
ちょっと痛かったけど、彼の想いを直接感じられて幸せでした。
その後はまあ若い二人ですからお猿さんになってしまいましたが、二年生の夏休み後半からは受験勉強もしなきゃいけないので週一くらいには落ち着きました。
そして大学。 また翔は私と同じ大学に。 でも今度はちゃんと言ってくれました。
「春香と一緒にいたいし、変なのが寄って来たら嫌だから」
いつもそんな事一言も言わない人から言われると破壊力が凄いですね。
その日は帰りに恋人が行く宿泊施設に誘って私から襲っちゃいました。
三回生の時、ゼミの飲み会で四回生の男の先輩と知り合ったんですが、しつこく口説いてくるんです。
彼氏がいるって言ってもお構いなし。
だから翔に相談して二人で先輩に抗議して、それでも信じてくれなかったので先輩の目の前で思い切り大人のキスを見せつけてあげました。
その時はそれでうまくいったんですが、皆さんの想像通り、翔がまたやらかしました。
次の日、あのバカ、行為の途中で近藤さんを取って続行したんです!
まだ学生ですよ? それまでも二人で、「就職したら少しして結婚して、二十七歳くらいまでに赤さん欲しいね」って言ってたのに!
ここで冒頭の一文に戻ります。
「はい、これでスリーアウト。 あんたとは別れるから。 さすがにもうついていけないわ」
そう言って別れを切り出しました。
「だけど「だけどじゃない。 あんたが不安になるのも分かるけど、いつだって私を信じてないし、私の気持ちなんて考えてないよね? そんな人と一緒に居られる? そんなに自分の気持ちが大事なら一人で一生山でも孤島でも籠ってろ!」」
私も言いながら泣いてました。
これさえなきゃ私には勿体ないくらいの人なのに。
でもこれがあるからダメなんですよね。
それからは顔を合わせても話しませんでした。 話したらまた絆されちゃうから。
好きだけど一緒にいたらまた繰り返すから。
別れてから一年近く経ちました。
あれからずっと一人です。
そしてもうすぐ翔のいない初めての誕生日です。
「あの時別れてなかったら」とか考えることもあるけど、そうしたら私はもっと傷ついて、きっと別れてたと思います。
そして二十一回目の誕生日、女友達が集まって誕生日パーティーをしてくれました。 久々にエイプリルフールで揶揄われましたけど楽しい時間でした。
家に帰ると誰かが門扉の前に立っています。
懐かしい顔でした。 別れた後もずっと好きな人でした。
そして私が近づくと翔は土下座してきました。
「忘れようとした。 一緒にいちゃいけないんだってずっと諦めようとしてた。 でもやっぱり俺には春香しかいないんだ。 他の誰より春香が好きなんだ。 あと一度、一度だけでいいからチャンスをください」
そう言って土下座したまま、私に通帳、印鑑、キャッシュカードとラッピングされた小さな箱を差し出しました。
私だってずっと忘れられなかった。 今でも誰よりも好き。
とりあえず立たせてからもらった箱を開けました。
「これ......」
箱の中にはダイヤの指輪。
「うん、誕生日兼プロポーズ」
「ばか......」
バカなの?
別れて一年もたって、捻を戻してもいない相手に婚約指輪を贈る?
でもそれを嬉しいと思ってしまう私もバカだ。
「で、この通帳は?」
「うん、今の俺に出来る最大限のお詫び」
「じゃあこれ、結婚式の費用にまわすね」
「それって......」
「ずっと待ってたんだからもっと早く来なさいよ」
こうして私の二十一回目の誕生日は、今までで最高の誕生日になりました。
〜了〜
7670days 私池 @Takeshi_Iwa1104
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