ブラックホール発電って最強じゃない?

ちびまるフォイ

ブラックホールの有効活用

「博士、これではエネルギーが足りません!」


「なんだと? せっかく悪人改心装置を作ったというのに!」


博士のいる研究所では悪い人間の心をきれいにする改心装置を作っていた。

ついに完成へとこぎつけたのは良かったが、装置を動かすには1.21テラワッドのエネルギーが必要となる。


原子力発電所からエネルギーを直接もらったとしても、

とても装置を動かせるには足りない量だった。


「博士、どうしましょう。研究を諦めますか?」


「バカ言え。せっかくここまで来たのに諦められるか。

 なんとかエネルギーを確保する方法を考えるんだ」


博士と助手は膨大なエネルギーを使う悪人改心装置を動かすための、

半永久的で巨大なエネルギー発生装置を作る必要があった。


アイデアに詰まった博士が空を見上げたときにふと思いついた。


「そうだ……ブラックホールを使おう!

 ブラックホールなら巨大なエネルギーをずっと得られる!」


博士は米粒ほどの小さなブラックホールを人工的に作り出した。

ブラックホールから得られる巨大なエネルギーが装置に送られる。


「博士! ブラックホール発電で悪人改心装置が動きました!」


「作戦は成功だな!」


博士と助手は大喜びした。

感動が落ち着いた頃に助手は博士へ切り出した。


「しかし、意外と悪人改心装置の使うタイミングってないんですね」


「本当に悪い人は、いい人に擬態しているからなぁ」


「博士。これはひとつアイデアなんですが、使いみちのない悪人装置よりも

 このブラックホール発電を有効活用しませんか?」


「ふむ、それはどういうことかね?」


「みんなにここで作った電力を届けるんです」


助手のアイデアに賛同した博士は新たに電気を売り出すようになった。

無尽蔵のブラックホール発電であれば大量の電力をいくらでも回収できる。


電気料金は無料となり、地球のあらゆる電気は博士たちのブラックホール発電ひとつだけでまかなえてしまった。


あらゆるエネルギー問題から解放された人類はますます文明を発展させてゆく。

求められるエネルギー量は増えていくがブラックホールであれば問題ない。


もはやブラックホール発電でなければ成り立たなくなるほど、

文明維持に必要となるエネルギー量は増えていった。


そんなときに事件が起きた。


「博士、大変です! ブラックホールが……大きくなっています!」


「そんなバカな!?」


最初は米粒ほどしかなかったブラックホールが今では琵琶湖ほどのサイズまで巨大化していた。


「まずいですよ! このままじゃこの星はブラックホールに飲み込まれる!」


「エネルギーを回収しすぎたか……!」


「博士、どうしましょう!」


「ブラックホールにものをたくさんいれるんだ!

 たくさんのものを吸収すればブラックホールの巨大化は止められる!」


博士と助手は研究で使っていた試作品などをブラックホールへ投げ込んだ。

巨大な渦に飲まれるも、渦のサイズは少しも変わらない。


「博士! まるで効果ありません!」


「吸収量が小さすぎるんだ! もっと大量のエネルギーを入れるんだ!」


助手は世界に対して地球の危機であることを呼びかけた。

すると、たくさんの人がやってきてブラックホールへ物を投げ込んでいった。


「捨てるものならたくさんあるぜ!!」


大量の産業廃棄物をブラックホールへ捨てられた。


「地球を救うため協力させてくれ!」


山から降りてきたトラックは大量の廃家電をブラックホールに投げ込む。


「偉大なる閣下が地球存亡のために尽力してくださるぞ!」


各国は核ミサイルをブラックホールの内部へと大量に打ち込んだ。


消費が追いつかなくなるほど巨大化するブラックホールのエネルギーも、

大量の物を投入されたことでエネルギーを相殺されておとなしくなった。


みるみる小さくなって、元の米粒サイズへと戻った。


「博士! やりましたね!」

「ああ、世界は救われたんだ」


地球の危機が救われ博士と助手はひと安心した。

今回の大騒動を反省した助手は博士にある提案をし持ちかけた。


「博士、新しい発明を作りたいのですが」


「これは……ホワイトホール発生装置?」


「今回のようにブラックホール発電が暴走したときに備えて、

 安全策としてホワイトホールを作っておくんです。

 ブラックホールにぶつければ一瞬でおとなしくなりますよ」


「アイデアはいいが……これは使えないな」


「そんな! 博士、どうしてですか!?」


博士は悪人改心装置を手にとってから答えた。



「せっかく不法投棄したり、核爆弾を隠し持つ悪い奴らをあぶり出して改心させる方法がなくなるだろう?」



助手は悪人改心装置をまず博士に取り付けてスイッチを入れた。

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