彼女は望む、SNS炎上のない平穏な世界を

アーカーシャチャンネル

21度目の挑戦へ挑む

 何度挑戦し、何度玉砕したのだろう。一次選考以前に読者選考で落選するというお決まりの様式美。


 気づいてみると、それは20回目となり、これが同じく読者選考で落ちれば21回目となる。


「世の中は異世界ブーム、それもいつかは終わるというのに」


 あるWEB小説家はノートパソコンに向かい、ふとつぶやいた。私服のセンスも疑われるような彼女が書いているのは現代題材の作品であり、前回の読者選考でも落選した経緯がある。


「それでも、どうしてこの題材で書いているのだろう……」


 そうした選考に通過しそうな題材で書くモチベーションがなかった彼女は、現代物を書いていた。


 しかし、それも万人受けするような題材ではない。その内容はSNS炎上である。

様々なタイムリー案件を目にしていく内に、どうして彼らは無意味な争いを続けるのだろうか……と考えていた。


 次第に彼女は、この現象に関して興味を持ち始めていき、遂には小説にしてしまったのである。


 それでも特定人物に対する誹謗中傷を含む作品を投稿することはできない。そういった表現はガイドライン違反になるからだ。



 数分ほどネットサーフィンを行い、なんとなくテーマとなりうるようなネタを集め始める。


 さすがに特定芸能事務所絡みの話題はスルーすべきだろう……ガイドライン違反という意味でも。


 その中で発見した話題は、そこまで大きく炎上している物ではなく、特定人物に対する誹謗中傷などには当たらない。


(しかし、同じような切り口でも読者選考で落ちるのは目に見えている。それでも異世界を題材にするわけには……)


 下手に題材を異世界にしても、現実味がないという事で読者選考とは別の意味で炎上する可能性がある。


 異世界題材の場合は一種のレッテル張りでSNS炎上している傾向があったためだ。その為、どちらにしても現代物しか選択肢がない。


 下手に知識の浅い異世界を題材にしても、エア創作などと炎上するのが目に見えている。その為に現代物しか選択肢は……。



 集めたテーマは使えそうなものをセレクトしていくという事で、短編を書き始めた。


 使えるテーマとモチベ、書く時間がそろえばこちらの物である。他の小説家がうらやむほどのスキルを彼女は持っていたからだ。


 そのスキルとは速筆、ネタさえそろえば現代物で作品を作るのは容易……その速度は、3Dプリンターで立体物をスキャンして作成する位には。


「題材はSNS炎上を全体的にして、特定テーマは極力扱わない方向で……」


 筆の乗り始めた彼女を止めるのは、もはや至難の業。誰にも止める事はできないだろう。しかし、それを止められるものは……唯一あった。


「この時間は……?」


 ノートパソコンの時計を見ると、もうすぐ夕飯時という位の時間になっている。


 夕飯を食べに部屋を出るわけではなく、彼女はパソコンデスクの後ろにあるテレビのチャンネルを切り替えた。どうやら、アニメの時間になったらしい。



 アニメを視聴し終わり、それから再び彼女はノートパソコンに向かって作品を書く。


 文字数にして二千と短めなのだが、テーマが短編なのでそのあたりだろう。短編を募集しているのに、十万文字のような長編を出すのは場違いと言える。その辺りに関しては分かっていた。


 それでも、彼女の作品は今までと同じように読者選考で落ちるだろう。落ちた理由を知ることもなく。


 落ちた理由を『陰謀論』などには結びつけることをしないのは、そのような考え方をしてもSNS炎上はなくならないことを知っているからだ。


 彼女のSNS炎上をなくすための活動は続くのである。

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