雨空tears*
凪水 なも
『夢の中』
♪♪♪~
聞いたことがないメロディーが聞こえ、導かれるようにはっと私は目を覚ます。
見上げると、そこには何かを言いた気だけど、黙々と佇む闇色の空があった。
ちなみに足元を見ると、私は裸足で砂浜に立っていた。なんだこれ。
とりあえず足を進めようとすると、無数の砂が張り付く上、足取りも重かった。
そういえば、ここは何処なんだ。
考えてみたけど、夢としか思えん。それに気づいてしまうとつまらんものである。
……まあ、いいや。
再び空を見上げてみると、突如吐き気を覚えたので咄嗟に目を逸らした。
常に雲に覆われているようで、降りそうで降らない曇り空。
その空はずっとぐずついて、絶対に晴れることはない。
陽の光は、垣間見えることはない。
叫びのような、雷鳴も轟かない。
あの空はそんな印象があった。
それにどこか私に似ているような、そんな気もした。
俯いた空は変わることはない。
〔___変わりたく……ない……。〕
『ほんとうに?』
誰かの声が聞こえた。
優しくて、でもちょっと冷たいようで……温かくて、なぜか愛おしい、そんな声が。
顔を上げると、目の前には人間の少女の姿をした緋色の瞳を持つ猫が此方を真っ直ぐと見つめていた。
『ほんとうに?』とは、どういう意味だろう。胸にすごく刺さる。
吸い込まれそうなその瞳を見ていると、そいつに手を繋がれていることに気付く。
祈るように繋がれた指に目を落とすと、きゅーっと目頭が熱くなって、空にわずかにヒカリが差し込む。
きらきらして、魔法みたいに心が軽くなった。
そして、一筋の雨が頬に零れた。
するとどこからか強い風が私たちの間を吹き抜けた。
思わず目を瞑ってしまう私。
瞬間、手が解かれる。その感覚に焦燥感を覚える。
風がやみ、すぐ目を開こうとするも、開かれないまま、
私の“夢”は、そこでフェードアウトしたのだった。
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