第10話 さ~て、今回の魔王様は?「魔王様、舐められる」の一本です

~~勇子と魔王が出会う前まで、時間は遡る~~




「おしっこ漏れちゃう~!!」




 俺の膀胱は既に限界を超えていた。


 限界を超えた先にある勝利へと向かって、俺は内股でトイレに駆け込もうとしているのだ。




「魔王様っ!?」




~~あ、遡りすぎたのである。ここまで遡る必要は無いのである。


 ちなみに、先程はアフタヌーンティーの最中の出来事である。


 気を取り直して勇子と魔王が出会う前まで、時間は遡るのである~~




 アフタヌーンティーを終えた俺たちは、今後の作戦会議をすることにした。




「各地の魔人に集結を呼びかけるのである。今は戦力の増強が急務である」




「流石は魔王様ね」




「魔王様すっげー」




「確かに、魔王様の仰る通りです。ですが、一つ問題がございます」




「……問題? それは何か。余に教えてくれ」




「かくかくしかじか」




「ふむ、なるほど。よく分かった」




 こいつが俺のことを馬鹿にしているのがなぁっ!


 俺は白目を剥きながらクロナに中指をおったててやった。




「うふふ、冗談ですわ、魔王様」




 おっぱいの谷間を俺に見せつけるようにしながら、クロナは言った。




「良い、良いのだ。して、もう一度問うが。どういった問題があるのか余に教えてくれ」




 俺は彼女のおっぱいに免じて赦すことにした。




「その問題なのですが。私たち[三姫臣]とウホイと田中以外の戦闘要員である魔人は全て戦死しました」




「田中?」




「あ、間違った。加藤です。加藤を含めてつまりは戦闘員は5人のみというわけですね」




「そマ?」




「マジです。そして、非戦闘員は一人残らず人間に奴隷として捕まっております」




「そマ?」




「マ」




 マじゃねぇよこいつ俺のこと馬鹿にしてんのか?




「マ」




「だからマじゃねぇよ! えちょっと待って。お前俺の事マジで馬鹿にしてんの?」




「魔王様、おこですか?」




「いいや、激おこだよ。魔王様いまお前に激おこだから」




「そマ?」




「だから「そマ?」じゃねぇよ殺すぞ」




「流石は魔王様です」




「魔王様、すっげー!」




「いや、魔王様激おこだから。すっげーおこだから」




 俺は三人娘に中指をおったてた。


 三人娘はそれを見て微笑んだ。……魔王様完全に舐められてますわ、これ。




「良い、良いのだ」




 とりあえず赦した。


 話しが進まないからだ。




「ならば余たちがするのは、一つしかなかろう」




「「「いよっ!」」」




 三人娘が愉快な合いの手を打った。


 なるほど、全くやれやれ。


 盛り上げ上手というわけだ、いよっ!




「余たちが囚われた魔人を……救い出すっ!」




 俺の言葉を聞いた[地獄の三姫臣]は、穏やかな笑みを湛えながら、同時に口を開いた。




「「「ないわー、魔王氏それないわー」」」




 クソ三人衆は俺に対して首を掻っ切るようなジェスチャーをしてきた。




「ないの!? ええー……。ちょ、仲間だろ!? おい、余たち魔人の……大切な仲間がっ! 人間どもに囚われているわけだ! 救わなければならないと、お主らもそう思うだろうがっ!?」




「「「めんどくさくなーい? それめんどくさくなーい???」」」




 めんどくさいらしい。




「い、良いもん! それなら、魔王一人だけでみんな助けるもん。バーカ! バーカ!!! 死ね!」




「「「っうぐ……し、死ぬぅ――」」」




「あ、やべ。生きろ」




 【最上位命令】が発動してる!? えへへ、ドジちゃったぜ☆




「「「生きる!!!」」」




「やば、生きる!!! だって、じわるわー。魔王、今じわってるわー笑」




~~~というわけで人間の領土に単身乗り込み、エンターテイナーとしての才覚を発揮した魔王。


 その過程で勇子に惚れられた。流石は魔王様。中々できることではない。


 それは確実に言えることである。その上、だ。魔人たちを救う事も忘れていない。


 やっぱりなかなかできることじゃないんだからねっ、勘違いしないでよねっ!


 ピースピース、イェーイェー!!~~~


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